2016年08月31日 公開
2023年01月16日 更新
(4)内田和成著『仮説思考』東洋経済新報社
論理思考、戦略思考など、必要とされる思考力は状況によってさまざまですが、いずれの場合でも不可欠なのは、最初に仮説を立てる力です。仮説を持たないまま情報を一つひとつ調べ上げるとなると、膨大な時間がかかります。早い段階で「当たり」をつけ、それを根拠づけるために調べる、ということが、迅速な仕事の秘訣なのです。
ボストン コンサルティング グループの日本代表を務めた著者は、本書内でそうした「仮説思考」の習慣化を勧めるとともに、仮説の精度を高める方法を示しています。
大量の業務に追われている人にはとくにお勧め。ムダな思考をカットすることで、労力と時間を大幅に圧縮できるでしょう。
(5)E・B・ゼックミスタ+J・E・ジョンソン共著
宮元博章・道田泰司・谷口高士・菊池 聡共訳
『クリティカルシンキング《入門篇》』北大路書房
「クリティカルシンキング=物事を批判的に見ること」だと思い込んでいる人は少なくないでしょう。本書を読むと、それが誤解であることがわかるはずです。
本書におけるクリティカルシンキングの定義とは「良質な思考」のこと。心理学者である著者たちは、人の思考がともすれば思い込みや偏見によって歪められるものだということを示して、そのバイアスを取り除くことが良質な思考には不可欠だと説いています。
たとえば、性別や人種に優劣があるという捉え方は偏見の典型例。このような思い込みにとらわれていると、データ分析や人材登用の判断にも大幅な狂いが出てきます。著者たちはそうした誤謬の起こりやすいポイントを洗い出し、40項目以上にわたって解説しています。
必ずしも冒頭から読む必要はなく、思い当たる節のある章から読んでいくのも良いでしょう。自分の思考の「クセ」を矯正する助けとなるに違いありません。
(6)細谷 功著『地頭力を鍛える』東洋経済新報社
「地頭」という言葉は「持って生まれた頭の良さ」という意味で使われることも多いようですが、本書の著者の使い方は、それとは大きく異なります。本書で言う「地頭が良い」とは、「フェルミ推定=限られた情報をもとに、物事の近似値にたどりつく考え方」ができること。
たとえば、「日本全国に電柱は何本あるか?」。雲をつかむような問いですが、日本の面積と1平方キロメートルあたりの電柱の本数に見当がついていれば、その掛け算でおおよその答えが出せます。著者はこの類の例題と回答例を紹介しながら、そこで必要になる思考力の要素と、その鍛え方を解説しています。
この思考法を身につけると、ビジネスシーンで起こる問題への対応力が大幅に向上します。「どうすべきか」と問われたとき、「わかりません」だけでは何もできず、評価も下がるばかり。その時点で持っている知識、経験、情報をもとに、わかる範囲で考え、答えようとする姿勢が重要です。本書の最大のメッセ―ジは「考えることから逃げるな!」ということでしょう。
更新:11月23日 00:05