2016年06月24日 公開
2023年07月03日 更新
大手メーカーへの技術スタッフ派遣や業務請負を手がける人材派遣・請負会社・UTグループ。2003年にはJASDAQに上場。その後も成長を続け、現在、技術職社員は1万人を超え、全国500以上の工場等に人材を派遣している。
人材派遣業界は一時期、違法派遣などが相次いだことで多くの会社が危機に陥った。だがUTグループはその影響を受けることなく成長を続けている。成長の秘密は、「選択肢や周りとのつながりを感じられ、モチベーション高く働ける環境づくり」にあるという。
その経営ビジョンに強い感銘を受けた経営コンサルタントの神田昌典氏は、UTグループ社長の若山陽一氏と共著『未来から選ばれる働き方』を発刊。そんな二人に「人がストレスなく働き、モチベーションを高めることができる職場づくり」について、対談形式で語っていただいた。
神田 一般に雇用が不安定と言われる派遣社員をすべて正社員として雇い、彼らにキャリアビジョンを示す。必要なスキルが基礎から身につくような仕組みを用意し、チャレンジする機会を与えて、大きな成長を促す。UTさんが行なっている取り組みは、人材派遣会社としてはもちろん、すべての業界の働き方を考えるヒントになると思います。
若山 僕たちの人材育成の仕組みはまだまだ発展途上です。ただ、いきいき働く人を日本全土に一人でも多く育て上げていきたいという思いで、試行錯誤を繰り返してきました。それが、少しは実を結びつつあるのかな、と思います。
神田 UTさんのすごさはなんといっても、もともと上昇志向がそれほど高くない人、「仕事は最低限のお金を稼ぐ手段にすぎない」と考えている人が、上昇意欲を持ち始めることですよね。もともと上昇志向のある人を育てるのはそれほど難しいことではありません。でも、上昇志向のない人の心を変えるのは、そう簡単なことじゃない。
若山 当社に小野という執行役員がいますが、彼はもともと「スノーボードをやるために、休みの多い職場を選んだ」ということで、時給900円で入社した人物です。それが「エントリー制度」※を利用してキャリアアップし、今では執行役員になっています。
神田 小野さんは決して突然変異ではないと感じます。先日、UTさんのマネージャークラスの方々とお会いする機会があったのですが、その方々ももともとは工場に派遣されて働いていた人たちで、学歴を見ても、大卒は少数派。でも、みなさんとにかく仕事熱心で、やる気も非常に高い。
若山 派遣社員というと、一流大学を卒業し、一流企業に就職するレールから外れた「非エリート」というイメージを持つ人が多いかもしれませんが、レールから外れたからといって、能力がないというわけではありません。むしろ、能力を持てあましている原石のような人材がたくさんいます。きっかけと適切な教育さえあれば、潜在能力を開花させ、周囲も驚くような力を発揮するのです。
※エントリー制度
年齢や経験、入社年次にかかわらず、派遣されるチームのリーダーや、執行役員に立候補できる制度。2012年に始まり、入社してから最短2年で執行役員まで昇進できる可能性がある。大きな権限を与えるだけに当然、結果責任が問われるが、それだけに大きく伸びるチャンスとなる。派遣社員というとあまり出世意欲がないように思われがちだが、実際にはチャンスを与えることで上を目指したいという人はいる。そういう人にチャンスを与えることで、モチベーションを高める制度だ。
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更新:11月23日 00:05