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最初に知っておきたい不動産投資10の疑問

2016年05月28日 公開
2023年05月16日 更新

長谷川 高(不動産コンサルタント)

 

Q6
区分所有と1棟物件のメリット・デメリットは?

 不動産投資で多いのは、マンションなどの共同住宅の1部屋を購入する「区分所有投資(区分)」と、マンションやアパートの土地建物1棟に投資をする「1棟物件投資(1棟)」です。また、鉄筋コンクリートと木造でも違いがあります。区分所有と1棟物件のどちらが適しているかは投資家や予算次第。それぞれのメリット・デメリットは以下のとおりです。

【区分のメリット】
不動産投資の中では比較的少ない資金から始められ、過度な借り入れを起こさずにローンを組んで投資ができます。また、複数の物件(建物)に投資をすることで、地震や環境の大きな変化などにより物件の価値が想定外に下がったとしても、甚大な損害を被るリスクを避けられます。

【区分のデメリット】
異なる建物の部屋を同時に、または1つひとつ増やしながら複数投資をしようとした場合、個人の収入いかんでは金融機関がこれに応じず、2戸、3戸程度でしかローンを組めないケースが出てきます。また、管理費などにもよりますが、1棟物件に比べ、実質利回りが低くなる可能性もあります。

【1棟のメリット】
複数の部屋を所有する1棟物件は、それだけ月々の家賃収入も多くなります。また、鉄筋コンクリートのマンションは長期ローンを組めるので、月々の手取り収入を増やすことが可能。ただし、木造アパートは鉄筋マンションに比べ比較的廉価に購入でき、高い利回りを追求できる利点もあります。

【1棟のデメリット】
購入金額が高く、多額の借り入れが必要となります。大都市圏では、鉄筋コンクリートマンションの場合、総額1億円を優に超えることも。また、木造アパートは、耐用年数の短さから長期のローンを組めません。購入可能額を鑑みた場合、区分に比べ、大都市圏での所有は難しくなるでしょう。

 

Q7
希望の物件が見つかったらまず何をする?

 とにかく足を運ぶこと。間取りや日当たりなど、建物や設備の面だけではなく、昼と夜で、街の景観や治安、商店街の活気などをよく観察し、そもそも「自分が住みたい」と思う物件であるかを吟味することです。地元の人に、街の様子やそのエリアの歴史に関する話をリサーチするのもいいでしょう。今の賃貸市場は、物件ごとの勝ち負けが明確です。立地がいい、建物がきれいなど魅力ある物件は人気が高騰し、外観が見劣りする、不便など少しでも欠点のある物件は避けられます。

 また、住まい選びでは女性が主導権を握ることが多いもの。デザイン性や防犯面などを家族や友人など身近な女性に、女性目線で見てもらうことをお勧めします。

 

Q8
2
種類ある収益率。表面利回り・実質利回りとは?

 物件情報に掲載される「利回り」。これは正確には「表面利回り」といい、年間の家賃収入÷不動産購入金額で求められる収益率です。あくまで概算なので、これだけでは判断できません。

 管理費や修繕費などの経費などを考慮した「実質利回り」で考えなければなりません。適正な利回りは経済情勢などによって異なりますが、最低でも、表面利回り7~8%、実質利回りでは6%程度は期待したいものです。最近は不動産価格が高騰しているので、投資物件の利回りはかなり低くなっています。

【利回り計算】
表面利回り(%)=年間家賃収入÷物件価格×100
実質利回り(%)=(年間家賃収入-年間の運用経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100

 

Q9
失敗しないために心得ておくべきことは?

 投資の大原則ではありますが、「高いリターンを得るには、必然的に高いリスクが伴う」と肝に銘じましょう。たとえば、地方都市で利回り10%や15%とうたっている物件は、すぐに飛びつかないほうが賢明。多くの地方都市では人口の減少が深刻なので、将来的に空室率が上昇して家賃が低下するというリスクがあります。

 高い利回りと高いリスクは表裏一体です。高すぎるリターンを見たら、何かしらリスクを内包していると裏を考える。投資の世界では、ローリスク、ハイリターンは存在しないのです。

 

Q10
不動産投資をするにあたり、気をつけるべきポイントは?

「焦らない」「高いときに買わない」ことが大切です。決断力は必要ですが、それはリスクとリターンを把握できるようになってからです。「いい物件を安く買う」ことが「投資」の要諦です。最近は、不動産投資ブームもあり、価格が高く、利回りが低い物件が多くなっています。「ブーム」だけに踊らされ、勢いで購入しようとすると、投資不適格な物件に投資してしまうことになるかもしれません。

 不動産熱で熱く盛り上がっているときこそ、冷静さが必要です。最初にも言いましたが、まずはある程度の知識をつけること。そのために勉強を始めるいいタイミングではあるでしょう。

≪取材・構成:麻生泰子≫
≪『THE21』2016年5月号より≫

著者紹介

長谷川 高(はせがわ・たかし)

不動産コンサルタント 長谷川不動産経済社代表取締役

1963 年、東京都生まれ。立教大学経済学部卒業後、大手デベロッパーにて、ビル・マンション企画開発事業、都市開発事業に携わり、96 年に独立。個人・法人の不動産と不動産投資に関するコンサルティング、全国での講演活動、投資顧問業務を行なう。著書に、『はじめての不動産投資』(WAVE 出版)など多数。

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