自宅以外の不動産を購入し、家賃や売却益などから利益を得ることを目的とする「不動産投資」。最近、その不動産投資がブームとなっている。現役世代のサラリーマンの中には、「忙しいから」「マンションを買えるほどの現金がないから」と、なかなか手を出せない人も多いだろう。しかし、そんな人にこそ、不動産投資はお勧めだという。個人投資家としても多くの物件を所有する午堂登紀雄氏に、失敗しない投資のコツをうかがった。
今、注目を集めている不動産投資ですが、私はかねてより「サラリーマンこそ、不動産投資に向いている」とお伝えしています。
主な理由は3つあります。
1つ目は、サラリーマンは銀行でローンを組みやすいこと。投資にはローンが不可欠ですが、「毎月給料が入る」というだけで、銀行は信用してお金を貸してくれるのです。
2つ目は、副業禁止規定に違反しないこと。なので、副業禁止の会社に勤めていても、あまり大規模でなければ誰でも可能です。
そして3つ目は、老後対策にもなりうること。定年退職後の収入は基本的に年金のみ。しかも将来は、その年金すら当てにならないかもしれません。家賃として毎月少しずつでも収入があると安心だし、生活設計も立てやすいはずです。
しかも現役のうちにローンを完済すれば、老後の家賃収入はすべて自分の手元に残ります。物件も自分の資産になるので、値段は下がったとしても、売却すればやはりキャッシュを得られます。
さらに言うと、団体信用生命保険に加入すれば生命保険代わりにもなるし、節税手段としても活用できます。
銀行からの融資で家賃収入という不労所得が得られるうえに、資産形成ができる。1回の投資で2度3度とおいしい思いができるのが、不動産投資なのです。
それでも「本当にこれから不動産投資を始めても大丈夫なのか」と迷う人は多いようです。
よく質問されるのが、「これから日本は人口が減少して、賃貸住宅の需要も低下するのでは?」ということ。確かに「空き家が増えている」という話はよく耳にしますが、この問題が発生しているのは主に地方です。むしろ都市部は人口が増加しています。
それに人口が減っているとはいえ、たとえば首都圏は3500万人が暮らす世界有数の人口集積地です。また、東京都は都心や臨海地域を「アジアヘッドクォーター特区」に定めるなど、積極的に外国企業の誘致を行なっています。ビジネス拠点、生活拠点としての東京の魅力は、今後もますます高まるはずです。
つまり、今後も人口が増える、もしくは減らないであろうと予想されるエリアを選べば、一定の賃貸需要はあるということです。もちろん景気の変動はあるでしょう。しかし、「不況だから住居は不要です」という人はいないはず。
都市部ならどんな物件でも大丈夫ということではありませんが、「借り手に選ばれる物件」を選ぶことで、空室のリスクは最小限に抑えられます。
賃貸の需要を決める大きな要素は、「場所」と「家賃」です。「駅近」「人気のエリア」などの条件を備え、適正な賃料を設定すれば、少なくとも長期に渡って空室が続くリスクは小さいでしょう。
もし不安な点があるなら、どう備えるかを考えればいい。賃貸仲介会社に広告費を多めに払う、礼金をゼロにする、初月度はフリーレントにするなど……リスクを想定し、それを乗り越える手段をあらかじめ用意しておけばいいのです。
さらに、今年2月から導入されたマイナス金利が不動産投資に与える影響も見逃せません。
マイナス金利にかぎらず、金融緩和が不動産投資に与える影響は、プラスとマイナスの両面が考えられます。
プラス面としては、ローンがさらに組みやすくなることと、低金利でお金が借りられること。とくにマイナス金利政策は、銀行が企業や個人へ積極的に融資するよう促す狙いがあります。しかし現在は、大きな資金調達ニーズがある企業はあまり多くありません。よって、個人への住宅ローンや不動産投資ローンが、銀行にとって手堅い融資先となるのです。
ローンの金利が下がることも大きなメリットです。私も最近、所有する3つの物件でローンを借り換えましたが、支払う金利分をトータルで1000万円以上減らすことができました。
半面、マイナス面もあります。不動産の需要が増えて価格が上昇し、物件の利回りが低下することです。実際にアベノミクス以来、都心では地価が上昇しています。ただし、マンションやアパートなどの投資用物件については、価格の上昇は鈍化傾向にあります。
更新:10月14日 00:05