2015年09月14日 公開
2022年11月02日 更新
――投資をすることで理想の社会を作る貢献ができる。これはまさに、澤上氏が最も訴えたいことだという。
澤上 日本には、現在GDPの1.7倍に当たる約800兆円の個人資産が銀行に眠っています。これは世界の政府系ファンドを2倍強も上回る規模です。その2~3割が長期投資に回れば、すさまじい経済効果が期待できます。とくに私はこれからの時代を担う若い人にぜひ、長期投資に関心を向けてほしいと思っています。
――ただ、若い人は資金もなく、投資に関する知識もあまりない、という人も多い。まず、何から始めればいいのだろうか。
草刈 「将来、自分はどんな社会に暮らしたいのか」……まずはそれを具体的にイメージしてみてください。次に、その社会の実現に必要な企業はどこかを考えてみる。そうして、「心から応援したい」という企業を一つ決めたら、翌日から毎日その企業の株価をチェックするのです。いきなり買う必要はありません。ただ、年に2~4回は株式市場の暴落があるので、そこで思い切って買いを入れます。あとは、株価の上げ下げに一喜一憂することなく、その企業が成長するのをじっくり見守る。それだけです。
以後も、同じように応援企業を一つずつ増やしていくといいでしょう。いずれの企業にも自分の思いが込められているわけですから、マネーゲームとはまったく異なった、重みのある資産作りができるはずです。
澤上 注意したいのは、底値で買って天井で売ろうなどとは考えないこと。どこが底値でどこが天井かなんて、それこそ神様しかわかりません。私たちだってそれを100%当てることは不可能です。底値や天井を狙ってマーケットを追いかけると、逆に引きずり込まれて本来の投資ができなくなります。
――応援したいと思って株を買ったのに、気がついたらあまり魅力がない企業に変わっていた、ということはないのだろうか。
草刈 残念ながら、そういうこともあります。我々は決して、株価が下がったから株を手放すという「損切り」はしませんが、その企業が変わってしまったという理由から「縁切り」することはあります。
――忙しくて個別株を選ぶ暇がない、という人には、平均株価に連動して動く「インデックスファンド」を選ぶ人もいる。
澤上 インデックスファンドは平均株価が上がらないと儲かりませんが、この30数年の世界的な株高は年金資金の流入が続いたからであり、5年前から減少に転じています。それで、インデックスファンド万能の時代は終わりつつある、と考えられます。
それ以上にインデックスファンドは『お任せ』なので、自分の投資能力が上がらない、という問題があります。私はぜひ、考えることを面白がってほしいと思っています。私自身、この仕事で一番楽しいのは、『〇年前に予想したことが、最近になって現実になったよなぁ』と思う瞬間です。
草刈 たとえばインターネットショッピングはまだ不便ですが、そうした不便を見つけたら「どうやったら解消できるかな」と考える。あるいは「どこがボトルネックか」を考える。すると「トラックによる物流に問題があるかも」となり、「じゃあ、自動運転がこの問題を解決するかも」と、どんどん発想が広がっていきますよね。
澤上 こうして、考えることを面白がり、投資能力が高い人が日本に増えることで、日本を優良企業が集まる投資立国にするのが私の夢。他の国では評価されない優良企業が日本なら評価される。日本がそんな国になれれば、素晴らしいことじゃないですか。
(取材・構成:山口雅之 写真撮影:永井 浩)
(『THE21』2015年9月号より)
更新:11月25日 00:05