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孫正義はなぜ「未来」を予測できるのか?

2015年08月31日 公開
2015年09月11日 更新

三木雄信(ジャパン・フラッグシップ・プロジェクト社長)

元社長室長が語る「先読みの極意」

「日本を代表する経営者は?」という質問に、孫正義・ソフトバンク社長の名前を挙げる人は多いだろう。数々の新規事業を成功させ、国内外の有望な企業を発掘しいち早く提携するその眼力の秘密を、ぜひ知りたいと思っている人も多いはずだ。ではなぜ、孫正義氏は未来を見通すことができるのか。ソフトバンク元社長室長として、孫氏を間近で見てきた三木雄信氏。著書『ソフトバンクで孫社長に学んだ 夢を「10倍速」で実現する方法』を発刊した三木氏に、その「極意」をうかがった。

 

孫正義は「タイムマシーン」を持っている!?

孫正義社長の経営は「タイムマシーン経営」と言われることがよくあります。まるで未来を見てきたかのように、のちに大きく成長する事業や企業を見抜いて、早い段階で先物買いをしているからです。

たとえば、アメリカのYahoo!に200万ドル(当時の為替レートで2億円)の出資をしたのは1995年11月のこと。アメリカのYahoo!が会社として事業を開始したのは、1995年3月です。つまり設立から間もない段階で、孫社長はこの会社に価値を見出し、思い切った投資をしたことになります。

そして結果は、ご存知の通り。Yahoo! は世界最大級の検索エンジンに成長し、Yahoo! JAPANもポータルサイトとして日本で圧倒的なポジションを占めています。

最近では、中国のインターネット通販企業アリババ。ソフトバンクは、アリババが創業した翌年の2000年に20億円を出資し、その後、同社は急成長を遂げます。そして2014年にニューヨーク証券取引所に上場したことで、株主のソフトバンクは8兆円の含み益を得ました。投資から14年間で、4000倍のリターンを得たわけです。

これらの事例を見れば、タイムマシーン経営と言われる理由も納得がいくはずです。

 

「未来を読む」ことは誰にもできない

では果たして、孫社長は本当に「未来を読む達人」なのかというと、実は、そんなことはありません。

もちろん、私を含む一般の人たちよりは、はるかに先を見通す力を持っていることは確かです。しかし、長年そばで見ていてわかったのは、孫社長の予測も外れることがあるという事実です。考えてみれば、孫社長も人間なのだから、百発百中で未来を言い当てることなど不可能なのは当たり前です。

そもそも孫社長自身も、「未来は読むことができない」という前提で物事を考えています。とくにITの世界の不確実性は、他の業界に比べて非常に高いものです。

では、なぜ孫社長は、まるで未来を見てきたかのように、次々と成功を引き寄せているのか。その秘密こそが「くじ箱戦略」です。ソフトバンクがここまで成長を遂げた最大の理由は、ここにあると言っていいでしょう。

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ソフトバンクを成長させた「くじ箱戦略」とは? >

著者紹介

三木雄信(みき・たけのぶ)

トライオン〔株〕代表取締役社長

1972年、福岡県生まれ。東京大学経済学部卒業。三菱地所㈱を経て、ソフトバンク㈱に入社。27歳で同社社長室長に就任。孫正義氏の下で「Yahoo!BB事業」など担当する。 英会話は大の苦手だったが、ソフトバンク入社後に猛勉強。仕事に必要な英語だけを集中的に学習する独自のやり方で「通訳なしで交渉ができるレベル」の英語をわずか1年でマスター。2006年にはジャパン・フラッグシップ・プロジェクト㈱を設立し、同社代表取締役社長に就任。同年、子会社のトライオン㈱を設立し、2013年に英会話スクール事業に進出。2015年にはコーチング英会話『TORAIZ(トライズ)』を開始し、日本の英語教育を抜本的に変えていくことを目指している。2017年1月には、『海外経験ゼロでも仕事が忙しくでも 英語は1年でマスターできる』(PHPビジネス新書)を上梓。近著に『孫社長にたたきこまれた すごい「数値化」仕事術』(PHP研究所)がある。

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