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「5割が管理職になれない時代」の出世術

2015年08月07日 公開
2023年05月16日 更新

海老原嗣生(雇用ジャーナリスト)

管理職

今までの「努力」では出世できない!

かつての「日本型企業」では、地道にコツコツ頑張っていれば、誰でも課長・部長くらいまでは昇進できた。だが、「今や、5割の人はずっと管理職になれない」……雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏はこう指摘する。今までと同様の「努力」だけでは、決して評価されない時代になっているのだ。
だが、いつまでもヒラ社員のままでは当然、給料も上がらない。昇進して管理職になるためには、具体的にどんな「努力」をすればいいのだろうか。

 

日本型雇用にもメリットはあったが……

昨今、企業活動のグローバル化がよく話題にのぼりますが、それに伴って日本の人事制度が欧米化するかといえば、そんなことはありません。日本型雇用から欧米型雇用に変えることには、デメリットも多々あるからです。

欧米型雇用は「ポスト制」です。個人は会社と「このポストで、この業務をする」という契約を結びます。ですから、会社は社員をそのポストから簡単には動かすことができません。別職務への異動や転勤はもちろん、同職同地域での異動も難しいのです。

これに対して日本型雇用では、「会社の一員となり、命じられた仕事をする」という契約をしますから、会社の都合に応じて、社員を自由に異動・転勤させられます。これは会社にとって大きな利点です。

一方、日本型雇用は社員にとってもメリットがあります。複数の部署を経験する中で自分の適性を見極められますし、上司や顧客とそりが合わなくても、異動でシャッフルが可能です。簡単な仕事からちょっとずつ難易度を上げて能力を伸ばし、昇進・昇給していくという良い面もあります。

 

もはや「名ばかりポスト」を維持できない日本企業

この原則を維持するために、従来の日本企業では、本当はポストがなくても「課長級」「部長級」などの等級を与えて相応の給与を支払ってきました。ところが、これは会社にとって大きな負担ですから、維持できない企業が増えてきた。かといって、欧米型雇用に乗り換えて、自由に異動させられるメリットを手放せるかというと、それも不可能。

そこで近年増えているのが、管理職以上についてだけポスト制を取り入れる会社です。つまり、それぞれのポスト数しか管理職にはさせず、それ以外は管理職になれないという、欧米的な制度になったのです。

これは当たり前のことではありますが、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」のサンプルから割り出すと、大企業に勤める大卒男子のうち、管理職になるのはおよそ5割強。半数の人が管理職になれない、という時代になっているのです。

 

評価が低い人ほど「このままで大丈夫」と思いがち

これは「評価が昔より厳しくなった」ということではありません。企業の評価基準はそれほど変わっていません。これまでは低評価でも年次で昇進させていたが、今後はそれをやめる、という当たり前に戻しただけです。

では、社員としては、この変化にどう対応すべきか。言うまでもなく、良い評価を得ること。これに尽きます。そうしなければ管理職に登用されません。それだけのことです。

ところが残念なことに、低評価な人ほど、この意識が薄いのです。日本型雇用自体は維持されていますから、管理職昇進以前の社員に関しては昔ながらの昇級・昇給システムが続いています。そのため、「このまま管理職になれる」と勘違いしている人が多いのです。

今後、その考えは通用しません。評価が平均よりも低い。周囲よりも昇級が遅い。そうしたシグナルは早くから出ているはずです。それに気がつかないフリをせず、一日も早く仕事のやり方を改善し、評価アップを図りましょう。

 

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会社・職種のタイプごとに異なる「努力ポイント」 >

著者紹介

海老原嗣生(えびはら・つぐお)

雇用ジャーナリスト

雇用ジャーナリスト、ニッチモ代表取締役、リクルートキャリア社フェロー(特別研究員)。

1964年、東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルート人材センター(リクルートエージェント→リクルートキャリアに社名変更)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計などに携わる。その後、リクルートワークス研究所にて人材マネジメント雑誌『Works』編集長に。2008年、人事コンサルティング会社「ニッチモ」を立ち上げる。『エンゼルバンク――ドラゴン桜外伝』の主人公、海老沢康生のモデル。
著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』(ちくま文庫)、『仕事をしたつもり』(星海社新書)、『経済ってこうなってるんだ教室』(プレジデント社)などがある。

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