2015年04月17日 公開
2023年01月30日 更新
人事評価が高かったとは思えない人が、突然、出世したのを見て、驚いたことがある人は少なくないだろう。『出世する人は人事評価を気にしない』という本も売れているそうだ。なぜ、そのようなことが起きるのか。 次世代リーダーの育成や人事制度コンサルティングを手がけ、経営者としても実績を挙げてきた柴田励司氏にうかがった。
<取材・構成西澤まどか、写真撮影:永井 浩>
大失敗をした人。飛ばされていた人。極端に部下からの評判や上司の受けが悪い人。そんな人が出世することが、会社ではしばしばある。そして、往々にして、出世してからも成功している。多くの人が実感し、『出世する人は人事評価を気にしない』にも書かれているこのことは、柴田氏の実感としても、本当のことなのだろうか?
「賛同します。この本で語られている内容は、経営の目線からすると常識的とも言えます。
この本にあるように、課長になる手前までは、結果を出した人や上司の受けの良い人が出世します。つまり、人事評価表で高く評価された人が昇進するわけです。しかし、管理職からは違ってきます。とくに経営に携わるポストでは、この本の言葉を使えば、『人に使われる』のではなく『人を使う』立場になります。そこで要求される力は、人事評価表で評価される内容ではありません。
人事評価表は、大勢の人を一定の基準で査定するために作られているものです。社長や役員が個別に幹部候補を選ぶときには、別の次元で議論するものです。
役員が見ているのは『器の大きさ』と『人間性』です。人事評価表は、誰をポストに就かせるかを決めてから、その理由を説明するために使う。あるいは、候補者が複数いるときに参考にする、といった、限定的な使い方がされるだけです」
「人間性」とはわかりにくい言葉だが、役員が見ている「人間性」とは、具体的にはどういうものなのだろうか?
「私は『好感度×高感度』だとよく言っています。好感度とは、一緒に働きたい人か。育てたいと思う人か。高感度とは、どこへ行っても好奇心のアンテナを立てている人か。こうした、人事評価表に書いていないところに注目しています。
たとえば、会議室を出るときにきちんとあと片づけをしているか。ホワイトボードのペンのインクが切れたままにしていないか。こうしたささいなことを、役員は人事部長よりもよほどよく見ています。 仕事は共同作業です。信頼関係がなければ成立しません。この人に仕事を任せて大丈夫か?そこを判断しているのです」
多くの経営者は、一瞬で相手の人間性を把握できると柴田氏は言う。
「私は、多くの人と向き合ってきた経験から、面談開始から1分で、その人がどのような人物かわかります。早いときは話し始めて10秒というときもあります。仕草を含め、少しの会話で人間性が見えてくるのです。某企業のオーナーは、『俺は足音だけでわかる』とおっしゃっていました(笑)。
確かに、人間性の判断は直感に依るところも大きい。けれども、それだけではありません。言語化できる評価ポイントとしては、『大局観による割り切り』と『自分の型を持っていること』が挙げられます。
大局観による割り切りとは、執念を持ちながら、執着心は持たないこと。管理職は未経験の仕事に取り組まなければなりません。そのとき、『どんなことをしてでも達成しよう』と思う執念は欠かせませんが、同時に、自分の考え方ややり方に執着してもいけません。
自分の型を持っているとは、仕事を抽象化できるということです。これまでに経験した仕事を抽象化して型を作っておけば、初めて向き合う仕事にも対応でき、短期間で結果が出せます」
更新:11月22日 00:05