
㈱アップルシード・エージェンシーの代表取締役であり、新刊『会社は大きくするな!』が発売された鬼塚忠氏。社員採用や事業継承についてのこだわりを語ってもらった。
ーー社員数は10名前後で増やされない方針とのことですが、新たに採用はされていないということでしょうか?
【鬼塚】いえ、現在も年に1人程度のペースで採用は行っています。人の出入りによって人数をキープしている感じですね。
ただし、就活サイトに求人を掲載するような採用活動は行っておりません。給料や待遇を求めて来た人は、もっと良い条件をよそから提示されたら離れていきますから。
今いる社員は皆、採用を謳っていないなかでも門戸をたたいてくれた人たちです。
作家エージェント業というのは誰にでも務まるものではなく、子どものころからたくさんの本に触れ、読書が習慣としてあり、情熱や好奇心のある人でなくてはいけません。だからこそ、広告を打たなくてもたどり着いてくれるような方でないとダメなんです。
ーーそうして御社に応募された就活生に対して、どのような審査をされていますか?
【鬼塚】一般的な就職活動で用いられるような、エントリーシートやWEBテストは行いません。
その分、食事も兼ねて面談を重ねます。そこで確認するのは、本に限らずコンテンツに対する情熱やコミュニケーション能力、あとは作家さんとうまくやっていけそうか、などです。
少数精鋭でやっている以上、一人分の穴があるだけでもいけません。なので、そこの審査には慎重を期しています。
ーー『会社は大きくするな!』の「私がいなくなっても続く会社」という章が心に残りました。どういった意図があるのでしょうか?
【鬼塚】そもそもの考え方として、組織のトップが、雑用を含め多くの仕事を抱えるべきではないと思っています。むしろ、周囲に対して「私はいつも暇ですよ」とアピールしなければならない。
それはなぜか。新しい情報や面白そうなアイデアというのは、周囲の人が教えてくれたり、些細な会話の中から生まれることが多いんです。それなのに「鬼塚さんはいつも忙しそうだし、食事に誘うのはなんだか悪いな...」と思われてしまっては、そういった機会を喪失してしまいます。
そんな事態を避けるためにも、社長は本当に大事な判断だけして、あとの仕事をどんどん社員に回すべきなんです。
ーーご自身のリタイアを想定したいわゆる「事業継承」の観点から見るとどうでしょうか。どのタイミングで、どのように事業を継承していこう、というビジョンはありますか?
【鬼塚】大切なのは、次期社長にとって適切なタイミングで事業継承をすることです。相手が60歳になるまでに社長にするとして、その10年前から少しずつ社長の権限を与えていく、といった感じです。
私の立場、つまり事業継承する側の都合でタイミングを決めてはいけません。「70までバリバリ働いて、それから事業継承考えようか~」という態度でいたら、会社にとってベストなタイミングを逃しかねませんから。
特に創業社長は事業に対して思い入れが強く、自分が元気なうちに事業継承を始めるのは本意ではないかもしれません。ですが、会社の未来を思えばこそ、後継者本位の継承を行うべきでしょう。
私自身、約2~3年前、58歳のときから事業継承を始め、現在は社長の座を後進に譲り、私は代表取締役となっています。
ーー鬼塚さんご自身が、60歳というバリバリの年齢での事業継承を実践されているんですね。
【鬼塚】この会社での一線は退いても、私個人はまだまだ現役のつもりでいます。来年はおそらく5、6冊は著書が出ることになると思います。
執筆活動をはじめ、70歳くらいまでは全力で頑張っていくつもりです。
更新:10月21日 00:05