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労働者はピンハネされる運命... 搾取構造から逃れるための「転身先」とは?

榊原正幸(青山学院大学大学院元教授)

労働者はピンハネされる運命... 搾取構造から逃れるための「転身先」とは?

会社員は「労働者」で終わるべきではない――。給与・配当・内部留保の仕組みから、資産を増やす考え方を解説してもらった。

※本稿は、榊原正幸 著『60歳までに億り人になる思考法 なぜ富裕層は好んで借金をするのか?』(PHPビジネス新書)の内容を一部抜粋・編集したものです。

※本稿は2026年7月時点の情報に基づき、投資に対する著者の考え方を示したものであり、個別の金融商品を推奨するものではありません。金融商品の価値は状況によって変動しますので、購入を含む投資の判断はご自身の責任で行なうようお願いいたします。

 

労働者にとって会社はピンハネ・システム

損益計算書は、会計学では「企業の利益を計算するための財務諸表である」と説明されますが、本書ではその中身に焦点を当てます。会社で働く人やその家族にとって、とても関心があるのは、何といっても、「給与の額」です。これは多ければ多いほどいいですね。

たとえば、とある会社の損益計算書の近似値を例にして見ていきましょう。

1.売上高21兆7000億円
2.税引き後当期利益9000億円
3.従業員の平均年収900万円
4.従業員数20万名
5.従業員給与総額1兆8000億円(3×4)

データがいろいろ出てきました。これらはデータベース、すなわち、次で述べることの基礎となるデータだとお考え下さい。

まずは、これらの数値から、簡単な損益計算書を作ってみます。単位は「億円」です。

【図解】とある会社の損益計算書の例

このようにして見てみると、次のことが浮き彫りになります。

1.従業員全員で「21兆7000億円」の売上を達成した。
2.会社の取り分は、(2)の税引き後当期利益の9000億円で、従業員全員の取り分は、(5)の従業員給与総額の1兆8000億円である(給与の平均額は900万円)。

そうなのです。もうお気づきですね。従業員さんは全員で、「9000億円を会社に上納した」のです(従業員1人当たりの平均で450万円です)。このことについては、次の②で、もう少し深掘りします。

ここでは、この会社の利益である9000億円の「行き先」について解説します。

この節ではこの9000億円を「会社に上納した」と書きましたが、より正確には、その行き先は、次の2つで、いずれも「人」です。「会社さん」という生き物はいませんから。

その2つとは、
1.株主への配当
2.会社の内部留保
です。このように利益を分配することを「利益処分」と言います。

それぞれについて、大事な点を指摘します。

 

1.株主への配当

会社に上納したお金の行き先の1つ目は、「配当」です。

そして、「配当」は、やり方次第でいくらでも増やせます。「やり方次第で」というのは、要は「資本力次第で」ということです。

この「資本力」は、長い時間を利用して、複利のチカラで増殖するのです。ここで下の表をご覧ください。

【図解】福利の力

これは開始資金を100万円として、毎月5万円を貯めておき、毎年の年末に投資資金に60万円を投入する30年間の表です。

キャピタルゲイン(売却益)とインカムゲイン(受取配当)を合わせた税込みの利回りを年率で「15%」として、税率はキャピタルゲインもインカムゲインも20%とします。

26年後の「税引後手取額」をご覧ください。「1億864万円」となっていますね。1億円を超えます。この26年間に投入した金額の合計は、「1600万円」です。1600万円が26年で1億864万円になるのです。

また、30年後の「税引後手取額」は、「1億7416万円」です。このように、最後の4年間は、たった4年で、税引後の(手取りの)利益が6552万円にもなります。これが「複利のチカラ」の威力です(なお、この30年間に投入した金額の合計は、「1840万円」です。「1840万円」が30年で「1億7416万円」になるのです)。

そして、30年後に「1億7416万円」になった時に、手取りの配当利回りが3.0%の株を買っておけば、(手取りの)配当だけで522万円になります。配当だけで、普通の人の手取り年収を超えるくらいの所得を得られるようになるのです。

「『やり方次第で』というのは、要は『資本力次第で』ということです」と述べました。この「資本力」というのは、長い時間を利用して、複利のチカラで増殖することで得られるものなのです。

なお、この満30年の時点で、キャピタルゲインが手取りで9%あるとすれば、配当以外にもキャピタルゲインが手取りで1567万円あることになります。

20世紀では「老後は悠々自適」というのは、「退職金と年金収入」のことを意味していました。21世紀にも、「老後は悠々自適」というのは生き残っています。

それは、「30年かけて株式運用をして、配当だけでも暮らしていけるくらいの資本力と収益力を身に付けること」です(なお、人生の残り時間が30年もない方は、この考え方を是非、次の世代に継承してください)。

 

2.会社の内部留保

会社に上納したお金の行き先の2つ目は、「会社の内部留保」です。

「会社の内部留保」というのは、「会社に上納したお金で、自分の手には残らない」と思っている人がほとんどではないでしょうか。

でも、実はそうではないのです。いえ、正確に言えば、「そうではない」のではなくて、「そうではなくすることもできる」のです。

と言いますのも、これも会計学的には(または、ファイナンス理論の世界では)常識なのですが、本質的には、会社の内部留保は「株主のもの」だからです。

ですから、株主になれば、「そうではなくすることもできる」のです。つまり、「会社に上納したお金で、自分の手には残らない」と思っていたお金は、株主になることによって、「そうではなくすることもできる」のです。

もう少し説明を加えますね。

会社の内部留保というのは、会社の貸借対照表の「利益剰余金」という項目で会社の純資産として蓄積されるのです。そして、会社の純資産が増えるということは、その分だけ株価が上昇するということなのです。

ですから、自分の会社の株主になっておけば、このメカニズムのおかげで、「会社に上納したお金」を、自分の持ち分に比例した金額だけ、自分のものにすることになるのです。

株主になるということは、そういうことなのです。株主になることによって、会社の純資産が増えた分をキャピタルゲインとして、配当の分をインカムゲインとして手にすることができるのです。

株主にならない手はありますか⁉(Why don’t you be a shareholder!?)

 

「分け前」をもらうだけの発想から脱皮しよう

労働者にとっては、「会社」というのは、「上納金システム」であり、もっとゲスな表現をしてしまうと、「ピンハネ・システム」なので、株主にもなって、ピンハネされた分を少しでも回収しましょう。

ただし、ピンハネされていることを知っても、まだ会社に所属する意味はあります。

と言いますのも、会社にピンハネされた分は、「会社という看板や技術力や各種のベネフィット(恩恵)の利用料」だと思えばいいのです。

たとえば、一流の自動車メーカーの社員さんは、車を売る場合にも、「一流の自動車メーカーの社員さんだから」という信用をバックに仕事をすることができます。

また、新しい車を開発するのだって、自分個人では、ほぼ不可能です。

それから、社員としての福利厚生や有休手当などのベネフィット(恩恵)も受けられます。ですから、ピンハネされていることも、まんざら不条理なことではないのです。

なので、その庇護の下で、「会社を利用」して、自分に力を付けるのです。それが「賢いビジネスパーソン」のあり方だと思います。

自分の身に付いた力は誰にもピンハネされません。そして、それが将来的には、「自分のビジネス(スモール・ビジネスとしての副業)」として活きてくるのです。

 

「r<k<K」の法則の重要性

労働者(給与所得者)と経営者では、もらえる報酬が桁違いです。

さりとて、経営者というのは、所詮は「株主に雇われている人」なのです。これを経営学の専門用語では、「スチュワードシップ」と言います。

ですから、「r(労働者)<k(経営者)<K(株主)」なのです(なお、k(経営者)でもあり、K(株主)でもある経営者は最強です。「所有経営者」というやつです)。

さて、ということは、経営者ではない一個人としては、r(労働者)として働きつつも、常にk(経営者)的な発想をもっておくことが重要です。そうすることによって、k(経営者)そのものになってしまうことができれば、もちろんそれに越したことはありません。

そして、r(労働者)として働きつつも、K(株主)にもなって、ピンハネ分を取り返しながら、最終的には経営権を掌握できるようなところまで到達してしまえば、こっちのものです。ただし、その対象が大企業の場合、そんなことは個人では到底無理です。何千億円とかそれ以上の資金が必要だからです。

そういう意味では、大企業よりも中小企業やスタートアップ企業の方がいいでしょう。

個人の資金力の範囲でも、社内での地位を一気呵成に駆け上がることも可能になるからです。

大事なことは、「r<k<K」の法則を常に意識して働きながら、経営者的な発想を持ち、株主にもなっておくことです。

プロフィール

榊原正幸(さかきばら・まさゆき)

元青山学院大学大学院教授

1961年、名古屋市生まれ。名古屋大学経済学部、大学院経済学研究科を経て、同大学経済学部助手。その後、渡英して英国レディング大学に入学。帰国後の97年より東北大学経済学部助教授。2003年、東北大学大学院経済学研究科教授。04年、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授。21年3月に退任し、東京・青山を拠点にして、ファイナンシャル教育の普及活動を続けている。著書に『60歳までに「お金の自由」を手に入れる!』(PHPビジネス新書)がある。

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