
部下の「やりたいこと」と「できること」の交差範囲を見つけたら、次にリーダーに必要なのは、その部下のクセ(行動傾向)を知る視点です。
※本稿は、五十嵐剛著『任せる勇気』(三笠書房)から一部抜粋・編集したものです。
「行動傾向」とは、簡単に言えば、個人や集団が特定の状況でどのように動くかのパターンやクセのこと。性格や価値観、経験、環境など、さまざまな要素によって形成されます。
リーダーがこの「行動のクセ」をしっかり把握しておくと、メンバーを不必要に混乱させたり、無用なストレスを与えたりせずに、仕事を割り振ることができるようになるのです。
例えば、コミュニケーション1つとっても、人には明確な「行動傾向」があります。
私はメールやチャットを受け取ったら、すぐに返信しないと気が済まないタイプです。すぐに答えられない内容でも、「受領しました。後ほど回答します」と、とりあえず返さずにはいられません。いわゆる「すぐ派」です。
一方で、内容をじっくり吟味してから返信をしたい「じっくり派」の人もいます。この「じっくり派」に対して「もっと早く返信しなさい」と指示してしまえば、当然ストレスになりますよね。
逆に「すぐ派」に「もっと慎重に考えてから返信するように」と言っても、同じくストレスを与えてしまうでしょう。
要するに、メンバーそれぞれの行動のクセに合わない仕事の割り振りは、やる気や効率を下げる原因になってしまうのです。
では、どうすればよいのか?
大前提として、メンバーの「行動のクセ」を矯正しようとしてはいけません。それは、左利きの子に「箸は右手で持て」と言っているようなもの。たとえ一時的に矯正できたとしても、そこには常にストレスが伴い、本来持っている能力を最大限に発揮できなくなってしまいます。
多くのリーダーが陥りやすいのは、メンバーの「ここを直してほしい」「もっとこうなってほしい」という改善点ばかりに目を向けてしまうことです。
もちろん、改善点を指摘すること自体は必要ですが、そればかりに意識が集中すると、メンバーの長所や強みを見逃してしまいます。
つまり、リーダーが持つべき思考とは、人をその仕事に合わせようとすることではありません。仕事をその人に合わせることです。
先ほどの例で言えば、スピードが求められる仕事は即座に行動できる「すぐ派」に、慎重な対応が求められる仕事は時間をかけて吟味する「じっくり派」に任せる。
たったこれだけで、メンバーの仕事のしやすさは格段に上がり、その成果も大きく変わってくるのです。
実際のところ、苦手を克服するよりも、長所を伸ばすほうが、圧倒的に効率的であることは、すでに多くの研究で証明されています。
同じ時間とエネルギーを使うのであれば、苦手を補う努力は消耗が激しく、どうしても結果が伴いにくいのです。
むしろ、得意分野に集中して力を発揮させるほうが、本人のモチベーションは高まり、創造性やオリジナリティも自然に引き出されます。
更新:08月27日 00:05