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昭和の手法は人格否定? 令和でも通じる叱り方の基本

田島ヒロミ(組織開発・人財育成コンサルタント)

「昭和型マネジメントは~」

昭和は人前で叱ることも珍しくなかった。一方、令和ではハラスメントへの配慮から、叱ること自体をためらう管理職が増えている。部下を萎縮させず、成長につなげる叱り方のポイントを、人財育成コンサルタントの田島ヒロミ氏に解説してもらった。

※本稿は、田島ヒロミ 著『昭和型のマネジメントは本当にもう通用しないのか』(すばる舎)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

昭和の課長と令和のマネジャーの叱り方

昭和時代の課長は直接ほめてくれませんでした。その反面、部下を叱ることにはあまり抵抗がなかったように思います。

私が勤めていた会社でも、課員が課長の席の横に立たされ、長時間叱責を受けるという光景が社内のあちこちで見られました。ひどいケースでは、提出した資料に赤ペンでバツをつけられて投げ返されたり、目の前で資料をビリビリに破られたりするような話も耳にしました。

また、私自身の経験として印象に残っているのは、“年度始めの組織の引き締め”という名目で、普段なら注意されないような些細なミスでも、なぜかその時期だけは厳しく叱られるという理不尽な対応でした。

私自身、叱られた経験は数多いですが、その中でも特に苦い思い出があります。

あるとき、私が記入した書類を受け取った隣の係のベテランの女性から、オフィス中に響き渡る声で「田島さん、5の書き方を練習しなさい!」と言われました。

金融機関に勤めている社員がわかりにくい数字を書くこと自体がそもそも間違っているのですが、ほかの社員も大勢いる前で小学生に指導するような言い方で叱られたことは、恥ずかしくて忘れられません。

令和時代において、大勢の前で叱ること、そして部下のプライドを折るような言い方で叱ることはNGです。そのような状況もあってか、令和のマネジャーは叱ることに対してかなり抵抗があるようです。

私が実施しているマネジメント研修の中でも、ハラスメントを意識しすぎたり、部下のメンタル不調を懸念したり、部下との距離感がわからないからどこまで踏み込んで叱ればいいのか悩む、などの相談がよく出てきます。

反対に、今の入社3年目未満の方たちに話を聞くと、「叱るよりも寄り添ってほめる指導をしてほしい」という意見がよく出ます。

改善してほしいことやミスをしても叱れない上司と、叱るのではなく寄り添ってほしい部下。多くのマネジャーが悩む理由もとてもよくわかります。

私自身の考えをお伝えすると、ほめているだけでは部下の大きな成長は期待できない、ということです。

少なくとも間違ったやり方をしているのであれば、しっかりと叱ることで、意識の変化や行動変容のきっかけになり、本人の飛躍的な成長につながります。

 

理想的な叱り方も「5W1H」

では、実際にどのように叱るべきか。ここで意識してほしいのは、5W1Hの考えです。

叱る目的(WHY)、叱る相手(WHO)、叱る内容(WHAT)、叱るタイミング(WHEN)、叱る場所(WHERE)、叱り方(HOW)です。

①叱る目的(WHY)

最初に意識してほしいことは、叱る目的(WHY)です。何のために部下を叱るのか?ということです。

前提として、「怒る」と「叱る」は別のものです。怒るのは、自分の感情の発散のためですので絶対にNGです。感情に任せて叱ると、とめどなく言葉が溢れてきて、思ってもみなかったことまで発することになり、部下との関係性が悪化します。

叱るのは、あくまで部下のためです。

・部下の取り組み姿勢や行動を改善して、成長してもらうため
・挽回の機会にチャレンジしてもらうため

叱ることで本来の目的が本当に達成できるのか、をひと呼吸おいて考えてみる必要があります。

②叱る相手(WHO)

叱る相手(WHO)はほとんどの場合、行動を改善してほしい部下です。

ただ、ケースによっては行動を改善してほしい部下を直接叱るのではなく、あえて他の人を叱ることによって、間接的に当人に気づかせるという昭和のテクニックも有効です。

例として、私の20代後半で仕事に慣れてきた頃、先輩たちがよく遅刻して出社していました。それを見ていた私は、自分もいいやと思ってマネをしました。

普段は遅刻しなかった私が遅刻した日に、すぐに課長に呼ばれて「先輩のよくないところをマネするな」と叱られました。そして「次の課内会議で、お前のことをあえてみんなの前で叱ることにする。これは先輩たちに向けて、後輩の悪い見本になるなというメッセージだから、そこは考慮しておいてくれ」と言われました。その会議で私が叱られた後は、課内で遅刻する人はいなくなりました。

たとえば、本人にではなくその上にいる先輩を叱るなど、直接的よりも間接的に叱るほうが効果てきめんの場合もあります。もちろん、その際は叱る人には事前に伝えておく配慮が必要です。

③叱る内容(WHAT)

叱る内容(WHAT)は、行動した/行動しなかった事実にフォーカスして叱るということです。その際に大事になるのは、部下の人格には絶対に触れないことです。「〇〇さんはそんな性格だからダメなんだ」などは絶対に言ってはいけません。

また、原因を追及するときに「なぜミスをしたのか?」と繰り返すと、部下を問い詰めることになります。そうではなく、「なぜミスが起きたのだろうね?」という事実に寄り添って深掘りするようにしましょう。

④叱るタイミング(WHEN)

叱るタイミング(WHEN)については、状況を踏まえて的確に行う必要があります。

理想的なのは、事実発覚後にタイミングを見計らって、なるべく早く叱ることです。あまり時間が経過しすぎてしまうと、どうして過去のことを今になって持ち出して叱るのかと、警戒感や不信感を持たれてしまいます。

ただし、顧客対応などの緊急時には、叱るよりも前に早急に対応すべきなので、ある程度その対応が完了した後のタイミングが理想的です。

⑤叱る場所(WHERE)

叱る場所(WHERE)は、ほめるときとは反対に、会議室など周りに人がいない場所がよいでしょう。私の昭和時代の忘れられない失敗例のように、大勢の前で叱責するのは絶対NGです。

⑥叱り方(HOW)

最後に叱り方(HOW)です。

まず、マネジャー側は冷静な状態でいることです。そして、日頃の取り組み姿勢についての承認の言葉を伝えてから、事実についてははっきりと改善してほしいポイントを伝えることが重要です。

その際に大事なことは、改善ポイントが複数あってもひとつに絞ってください。

一気にあれもこれも伝えても、部下の耳には入ってきません。また、前にもこんなことがあったなど過去の事例は、その叱る場では持ち出さないことです。自分の失敗した過去を自分以外の人に掘り返されるほどつらいことはありません。

内容は行動改善ポイントを部下と共有して、今後の成長への期待を必ず伝えてください。会話の入口と出口はポジティブなアプローチで、ネガティブなフィードバックは間に包むようにして、できるだけ短時間で終わらせるようにしましょう。

 

叱る前には一呼吸置いて

ミスやトラブルなどのバッドニュースは、意識していないと報告と同時にすぐ叱ってしまいがちになります。そうではなく、部下がすぐに報告したことはまずほめたうえで、その後にしっかり叱ることが大切です。

報告時に叱責から入ると、部下は次にミスをしたときに発覚を恐れて、自分たちだけで解決しようと報告を躊躇してしまい、さらに大きなトラブルにつながる可能性があるからです。

ただ叱るのではなく、部下の成長のために相手を想って、言葉を選んで叱ることがとても大事です。

部下がみなさんと同じ立場になったとき、きっとあのときに叱った意味をわかってもらえると信じて、相手の立場になって考えながら叱ってください。

プロフィール

田島ヒロミ(たじま・ひろみ)

組織開発・人財育成コンサルタント

早稲田大学法学部を卒業後、生命保険会社に入社。営業・経理・事務システム企画・資産運用・コールセンター設立など、多様な業務に携わり、昭和流のマネジメントを部下としても管理職としても経験する。40代半ばには外資系生命保険会社へマネジャーとして転職。新商品開発や企業合併プロジェクトに参画し、ジョブ型人事制度のもとでマネジメントを実践する。50代で、長年のキャリアビジョンとして描いていた組織開発・人財育成の経営コンサルティング会社へ転職。現在は大手から中小企業まで幅広い企業を対象に、マネジメント・リーダーシップ・問題解決などのテーマで研修やコンサルティングを行っている。

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