
元男子卓球日本代表監督の倉嶋洋介氏は、試合を“発表会”と捉え、緊張さえも味方につける思考法を持つという。自信の持ち方や試合への向き合い方を解説してもらった。
※本稿は、倉嶋洋介著『神コーチが教える卓球「最強」メソッド』(日東書院本社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
「本番で実力が発揮できない」というのは、よくある悩みのひとつです。その原因はいくつか考えられますが、まず第一に考えるべきはメンタル。大切なのは自信を持って試合に臨めているかどうかです。
私自身も中学生までは全国大会に出場してもなかなか勝てない時期が続きました。自信がなく、強豪選手と当たると勝てる気がしませんでした。
しかし、ある全国大会で初のランク入りを果たしたところ、「全国でも勝てるんだ」と自信を持ち始めて、その後の大会は自分でも不思議なくらいに勝つことができたのです。
もしかしたら「勝てない」と自分で蓋をしていただけなのかもしれません。そのような経験を通して、やはりメンタルは重要なのだと、改めて感じました。
とはいえ、”殻を破って自信をつかむ”経験を全員が体験できるわけではありません。試合で結果を出すまでは、練習の中で自信を高めていくしかありません。毎日ひとつでもいいので目標をクリアして、自分の中に自信を溜め込んでください。そうすれば、試合でも理想のプレーができるようになり、いつか殻を破って、大きな結果を残す時が来るはずです。
実力を発揮するために、「自分の卓球をする」ことに集中するというのも非常に大切なポイントです。試合は“発表会”のようなもの。シンプルに「練習してきたことを出そう」という気持ちがあれば十分です。結果は気にせず、無理に背伸びもせず、いつもの自分のプレーと向き合いながら試合に臨んでみましょう。
メンタル以外の改善点として、日々の練習が試合に活きる内容になっているか見直す必要もあります。よくあるのが、試合で一番多く使うサービス、レシーブではなく、フットワークや切り替えなどのラリー系の練習にたくさんの時間を割いてしまうケース。もちろん基礎練習も大切ですが、実戦的な練習もしっかり取り入れないと、当然ながら試合で勝てる選手にはなりません。
また自分の武器を徹底的に磨くことも重要です。苦手克服の練習ばかりしていると、全体的なバランスは整っても自分の強みが伸びません。特に初・中級者のうちは、できないことに注目しすぎず、「今できる技術でどう戦うか」を考えて、技術を伸ばすことが大切です。
「緊張」も選手にとっては悩ましい問題のひとつです。多くの人は「いかに緊張をなくすか」「どうすれば落ち着けるか」を考えがちですが、無理に打ち消そうとする必要はありません。むしろ、緊張することは良いことだと前向きにとらえたほう良いと私は考えています。
実のところ、緊張は誰もが経験できるものでもありません。本番まで真面目に練習を積み重ね、「絶対に勝ちたい」という強い気持ちを持っているからこそ感じることができるものです。
また、トーナメントの序盤や相手が格下で余裕がある時もあまり緊張しないはずです。本気で勝ちにいく勝負どころ、自分と同じレベル、もしくはそれ以上の相手と対峙した時に緊張感が出てきます。それらを踏まえて考えると、緊張は「本気で卓球をしている証」であり、「努力を重ねて成長してきた証」でもあり、「目標に近づいている証」なのです。
緊張して当然ですし、だからこそ緊張を悪いものと考えず、「こんな緊張を感じられるのは強くなってきた証拠だな」とプラスに考えてください。このような気持ちで緊張と向き合いつつ、あとは「自分の卓球をする」ことに専念すれば、大舞台でも自分らしいプレーができるはずです。
私自身、選手としても監督としても、数多くの大会を経験してきましたが、結局のところ、一番大切なのは「どれだけ入念に準備をしてきたか」。この一点に尽きると思っています。ここで言う「準備」とは、単に練習を重ねることだけではありません。試合の1球目から最高の集中力と気合いを持って戦うには、細部にまで注意を払い、あらゆる面で準備を整えておく必要があります。
たとえば、対戦相手の研究や戦術の確認。大会の数週間前からのケガ・病気の予防。体調管理や前日の睡眠も気を配らなければなりません。忘れ物がないようにチェックすることも立派な準備の一部です。試合直前のウォーミングアップも非常に重要ですが、これを軽視している選手は少なくありません。
寒い会場で試合直前に選手と握手をした際、手が冷たく「しっかりアップできてない」と感じることがよくあります。実際コートに立っても動きが固く、これはまさに準備不足の典型です。
本気でアップをしていれば、体や手は温まり、手のひらには軽く汗がにじむはずです。同様に心の準備も大切です。試合をイメージし、「戦うモード」を作ってコートに入ることで、スタートから良いパフォーマンスを発揮できます。
「心・技・体」すべての準備を整え、ベストコンディションで試合に臨めてこそ、これまで積み重ねてきた力(もの)が報われます。どれだけ練習を積んでも、準備が不十分では本来の力を発揮できません。だからこそ“準備力”が勝敗を分ける最大のポイントなのです。
更新:04月23日 00:05