
現役のトップジョッキーでありながら、YouTubeなどの活動にも注力している戸﨑圭太氏。昨年までSNSさえしていなかったという戸﨑氏は、なぜ活動の幅を広げたのか。3月発売の著書『やり抜く力 天才じゃなくてもトップになれた「ベリベリ」シンプルな理由』の内容も交え語ってもらった。
ーー昨年5月、YouTubeチャンネル「戸﨑圭太のベリベリチャンネル」を開設されました。現役のジョッキーとしては異例だと思いますが、どういった経緯で、チャンネル開始にいたったのでしょうか。
【戸﨑】きっかけは、ダービー馬・ダノンデサイルとともに参戦したGⅠレース、ドバイシーマクラシックです。このレースの1番人気は欧州最強馬と名高いカランダガンでしたが、いざ発走するとデサイルの状態が素晴らしくて......。
これまでのジョッキー人生で感じたことのないような手応えで、勝利を飾ることができました。
ーー会心のレースだったのですね!
【戸﨑】ただ、この直後に事件が発生しまして(笑)。勝利直後にインタビューがあるのですが、ドバイのレースなのでインタビュアーは当然英語。何を聞かれているかもわからないまま、興奮に身を任せてこう叫んでいました。
「ベリベリホース!ベリベリハッピー!」と。
本当は「ベリーベリー“グッド”ホース」と言いたかったのですが、それを忘れてしまった結果直訳で「とてもとてもウマ!」という意味不明な発言になってしまいました。
ーーあの名言は、大いにバズりましたね。
【戸﨑】会見が終わった後、顔見知りの記者の方に「日本ですごい反響だぞ」と教えていただきました。そして、そのムーブメントに半ば乗っかる様な形で、YouTubeチャンネルを開設しました。
ーー以前からこのような活動への興味はあったのでしょうか?
【戸﨑】いえ、まったくなかったです。YouTubeどころか、SNSもしていませんでした。
目の前に降ってきたチャンスに対して、いいなと思ったらすぐに実行に移せる柔軟性はある方だと思うので、そのおかげでこういった決断ができたのだと思います。もちろん、スタッフをはじめとする周囲の人々のサポートがあってのことです。
ーー活動を開始されてから、ファンとの距離感が近くなったという実感はありますか?
【戸﨑】自分を応援してくれる人がこんなにたくさんいるんだ、と改めて感じるようになりました。最近はグッズの販売もしているのですが、競馬場でそういったグッズを掲げたファンの方を見かけると、すごく嬉しいですし、力になります。
そういった人たちのためにも、少しでも多く馬券に絡みたいですし、綺麗な乗り方を心掛けたいです。
ーーファンの方についてのつながりで一つ。一部では、競馬場で最も叫ばれる名前は戸﨑さんだと言われているらしいのですが......。
【戸﨑】昔から、ヤジは一番多かったと感じていました。
ーー「戸﨑!」にしろ「圭太!」にしろ、呼びやすいというのがあるのでしょうか。
【戸﨑】それならありがたいですね。うちの両親も、「誰でも呼びやすいような名前を付けた」と言っていたので、そのように思っていただけているなら幸せです。ヤジといっても悲喜こもごも色々だと思いますが、どんどんお願いしたいですし、ジョッキーとして受け入れます。
ただ、周囲の迷惑などにならないよう、度を越えない程度に、お願いします(笑)。
ーー先述の通り、ドバイシーマクラシックを制覇した戸﨑さん。同年は、フォーエバーヤングに騎乗した坂井瑠星騎手が、同じく海外のトップレースであるBCクラシックを制覇し大きな話題を呼びました。
坂井騎手は戸﨑さんの17歳差の後輩にあたりますが、下の世代からの突き上げに対して、意識することはありますか。
【戸﨑】瑠星に限らず、若手のレベルがすごく高くなっているとは感じますね。競馬界にとって、とても良いことだと思います。
それでも、まだまだ負けてたまるかという思いです。私は今年46歳。ベテランと呼ばれる年齢ですが、リーディングジョッキー(最多勝利騎手)に返り咲きたいという思いもあれば、日本ダービーを勝利するという大目標もあります。
ただその一方で、「僕に負けているようじゃだめだよ」という思いもあり、複雑ですね。
ーー今年の2月に、藤岡佑介・和田竜二両騎手が引退、調教師に転身されました。比較的世代の近い両名の引退を受け、セカンドキャリアへの意識の変化などはありましたか?
【戸﨑】これが良いことなのか悪いことなのかわからないですが、あまり先のことは考えないタイプなんです。ですので、少なくとも現時点では、転身などは考えていません。
今は馬に乗っている時が一番幸せだと思えています。現役騎手として達成したい目標もありますから、まだまだ頑張っていきます。
更新:03月31日 00:05