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優勝の陰で苦しんでいた日本最終年...菊池雄星がたどり着いた他者評価との向き合い方

菊池雄星(プロ野球選手)

菊池雄星「THE21」

3月開幕のWBC日本代表メンバーであり、新刊『こうやって、僕は戦い続けてきた。 「理想の自分」に近づくための77の習慣』(PHP研究所)も話題を呼んでいる菊池雄星選手(ロサンゼルス・エンゼルス)。メジャーリーグでのこれまでのキャリアや、周囲の評価との向き合い方について話を聞いた。

 

日本とは大きく異なる メジャーリーグの文化

――2019年にシアトル・マリナーズに入団し、今期メジャー8年目を迎える菊池選手。日本時代と比較し、大きな違いを感じた点はありますか?

【菊池】アメリカにはルールがない、という点は大きな違いですね。メジャーリーグの事を別名で、「THE SHOW」と言うんです。この舞台はSHOWだから、ルールは何もない、何をしてもいいんだって。

――年齢による厳しい縦社会のようなものはないんでしょうか?

【菊池】年上の言うことは絶対、という縦社会ではありません。ですが、自由な「THE SHOW」だからこそ、若手はベテランの振る舞いを見ています。僕もチームの中では年長者の部類なので、どういう姿を見せるかは大事にしています。

――例えばどんな姿を見せようと意識されていますか?

【菊池】いい時も悪い時も感情に流されず、一定であることは意識しています。僕らベテランが感情的になってしまうと、ルールがない分、チームが一気に悪い方に流されてしまいますので。

あとは、チーム内で不平不満が出てきたら率先して止める。人間、怒りのエネルギーが一番強いので、それが一気に燃え広がる前にボヤ騒ぎくらいで収めると。

先ほど、年齢による縦社会はないと言いましたが、プレイングタイムと言ってどれだけ長くメジャーリーグにいるかは重視されます。例えばすでに4年間メジャーでプレーしている23歳と、メジャーに昇格したばかりの30歳なら、23歳のためにドーナツを買ってくるのは30歳の役割になります。

――そうなんですね(笑)。

【菊池】ルーキーの仕事はいくつかあって、デーゲームの日はドーナツを買って来たり、遠征の際にはビールを飛行機に持ち込んだりします。そういうルーキーならではの仕事を、23歳はやりません。実績へのリスペクトはありますけど、年齢ではありません。

 

周囲の評価に惑わされず 一歩ずつ成長する

――メジャー5年目で11勝を挙げ、7年目の昨季は初の開幕投手を務めるなど着実に実績を積み重ねていらっしゃいます。ですが、最初の数年間はなかなか苦しい時期も続いていたと思います(最初の3年間で計15勝、以降の4年間では計33勝)。当時の心境をうかがってもよろしいでしょうか?

【菊池】確かに結果の出ない時期はありましたが、その時も自分の可能性は疑ってはいませんでした。アウトプットができていない、自分の天井はまだ上だけど今はまだここにいる、という感覚でした。

初めてメジャーで貰った契約が3年契約だったのですが、野球界、特にメジャーリーグは契約年数がそのままチャンスの数なんです。だからこそ、3年間かけてひとつずつステップアップしていこうという意識は大切にしていました。

――現地のファンやメディアからも批判的な声が届いたりしたと思いますが。

【菊池】そういった反応は一切見聞きしないようにしています。いい記事も見ないし、悪い記事も当然見ない。SNSも同様です。

結果が出ないときに悔しい思いをするのは当然なのですが、他人の評価を気にするとそこに「恥ずかしい」とか「イライラする」といった余計な感情も入ってきてしまいますから。

――そういった姿勢は、西武ライオンズ時代から続けているものでしょうか?

【菊池】実は、他者からの評価を気にして、苦しんでいた時期がありました。西武時代の最終年、メジャーからの契約があるかを心配しながらプレーをしてしまっていたときです。

結果は出たんです。チームも優勝できましたし、僕個人もベストナインを受賞できました。ただ、全然楽しめないし、恐怖心しかなかった。他者が決めるはずの評価を、全部自分でコントロールしようとしてしまっていました。

好きでやっていた野球が、契約をもらうため――飯を食うための野球になってしまっていた。そんな1年でした。

――メジャーでの最初の数年間は、その年とは違い、成長の期間として非常に楽しまれていたということですね。

【菊池】振り返ればそう言えますね。当時はもちろん悔しい思いをしましたよ。俺はこんなもんじゃないって。

しかし、焦りはありませんでした。自分の投球を分析して、「この球速だと打たれるんだ」とか、「この変化球はもう少し改良が必要なのか」という学びを得ていましたから、いずれ結果が出るだろうという感覚でした。

――今後メジャーに挑戦する選手にとっては励みになるお話だと思います。

【菊池】アメリカという環境に慣れなかったり、頭でわかっていても体が適応できなかったりと、アジャストする時間が必要な選手がほとんどだと思います。

そこで感情的になってがむしゃらに練習するとかではなくて、焦らず論理的に分析して改善していけば、きっと結果もついてくると僕は思います。

プロフィール

菊池雄星(きくち・ゆうせい)

プロ野球選手

1991年、岩手県盛岡市生まれ。小学3年生で野球を始める。花巻東高等学校に進学後、春夏通算3度の甲子園出場。2009年にはエースとして岩手県勢初となる春の選抜甲子園(選抜高等学校野球大会)準優勝を牽引。2009年のドラフト会議で6球団から1巡目指名を受け、埼玉西武ライオンズに入団。2017年には最優秀防御率、最多勝。ベストナインに選出。2018年にもベストナインに選出され、同年オフにMLB挑戦を表明。2024年にはシーズン途中からヒューストン・アストロズに移籍し、自己最多となる206奪三振を記録。日本人左腕として史上最多奪三振数を更新した。同年、岩手県花巻市に、子どもたちの教育・育成を目的とした日本最大級の全天候型複合野球施設「King of the Hill」(K.O.H)を私費で建設。

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