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仕事ができる人はなぜ職場で対立しないのか? 感情的にならずに協力を得る伝え方

木暮太一(一般社団法人教育コミュニケーション協会代表理事)

「仕事ができる人の頭のなか」

一つの会社で仕事をしていれば、時に対立の火種も生まれるだろう。そんな時、「仕事ができる人」はどのように対処するのか?木暮太一氏の著書『仕事ができる人の頭のなか』(ダイヤモンド社)より解説する。

※本稿は、木暮太一著『仕事ができる人の頭のなか』(ダイヤモンド社)より内容を一部抜粋・編集したものです。

 

たしかに、仕事ができる人は「対立」しなそう

仕事ができる人は、周囲と協力しながらタスクを進めていきます。他のメンバーと協力するのは当たり前のことに見えて、じつは簡単ではありません。対立してしまうのです。本来であれば助け合わなければいけないチームメイトと対立してしまい、むしろ協力を拒んでいる人はとても多いです。

特に製造部門と営業部門が対立するのは「あるある」の事例で、ぼくがサポートに入っている企業でも「こっちは一生懸命にやっているのに、あっちがちゃんと仕事しないから売れない」という愚痴をよく耳にしています。かつてぼくが所属していた組織でもメンバー同士の対立が常態化していて、何かにつけてお互いに相手の悪口を言っていました。

でも対立しているだけでは仕事は進みませんし、お互いにストレスをためるだけです。仕事ができる人は、仮に相手に対して納得できない感情があってもそれをぶつけることなく、うまく処理をしています。

ぼくが新人のころ、「そんな状況なら絶対に怒ってしまうだろう」という場面でも落ち着いて、相手との協調関係を崩さずに仕事を進めている先輩がいました。どうしてそんなに落ち着いて接することができるのか、イライラしたりしないんだろうか、と半ば不思議に思い、そして自分も精神的に大人にならなければと反省もしていました。

ですが、仕事ができる人が対立を解消できるのは、その人たちが精神的に大人だからではありませんでした。嫌なことがあっても我慢する精神力があるから、対立を解消できるわけではなかったのです。

お互いの立場があり、お互いの事情が違うので意見が合わないことがあっても仕方がないです。しかし、仕事ができる人はそれでも対立せず、相手に頼ることができます。感情的に少し波立っていても、それを抑える方法を知っています。

 

自分の恐怖心を言葉にして伝える

そもそも対立するのは、お互いに考えていることが違うからです。これを「価値観が違う」と表現するケースが多いですが、それでは言葉としてあいまいです。

違うのは価値観ではなく「べき論」です。自分が「こうするべき」と思っていることを相手がやらないからイラつくんです。自分が「正義」だと思っているものも、相手はそう思っていないケースはよくあります。立場が変われば「正義」も変わりますので、どちらが正しいとも言えません。

こちらが相手に「こうするべきだ!」と強く主張しても、そもそも相手はそう思っていません。だからやりません。そもそも、もしかしたらこちらが間違っている可能性もあります。つまり、ぼくらは勝手に自分の考えを相手に押し付けて、勝手に怒っている可能性があるわけですね。

対立が生まれたとき、相手がこちらを理解しないと怒るのではなく、まずは自分が持っている「べき論」を整理したほうがいいです。何をする「べき」と思っているのか、この案件はどうする「べき」と思っているのか、それを書き出してみましょう。そうすることで、まずは感情的にならずに自分の考えを自分で確認できます。

そして、同時に考えてもらいたいことが「『べき論』の背景にある自分の恐怖」です。自分が何かに対して「べき」と感じるとき、その「べき」の背景には必ず「さもないとこうなってしまう」という恐怖があります。恐怖があるから「これはこうするべき」という発想になるわけです。

そして、その恐怖が強ければ強いほど、持っている「べき」も強くなり、譲れなくなります。譲れなくなれば、その「べき」を守らない人とは強く対立することになってしまいます。

でも、ここで少し考えてみます。その恐怖は本当に起きてしまうものなのでしょうか?もしかしたら自分が勝手にそう思い込んでいるだけで、単なる妄想かもしれません。恐れていることは起きないかもしれませんし、仮に起きたとしても大したことがないかもしれません。

仕事ができる人は、お互いの「べき論」を確認すると同時に、「さもないとこういうことが起きてしまうのではないか?」という自分が持っている恐怖を自覚しようとしています。そして、相手に対して「これをやらないと、こういう事態になってしまうと私は思っているんです」と冷静に伝えています。

相手に伝えることで、相手の認識が変わり、あなたが懸念している恐怖に賛同してくれる可能性もあります。となると、相手も同じように「べき論」を持つことになり、お互いの認識がそろいます。

もしくは相手と話し合うことで、自分の想定が妄想だったと気づけるかもしれません。相手が、あなたが知らなかった新情報を教えてくれ、あなたの恐怖がなくなるかもしれません。もしそれで恐怖がなくなれば、あなたが固持していた「べき論」もなくなり、相手に対して抱いていた対立心も和らいでいきます。

どちらにしても、自分が相手と対立しているのには理由があり、無意味に感情的になっているわけではないことを伝えることができます。

一番いけないのは、言わないことです。自分が考えていることを相手に伝えず、相手に漠然とした嫌悪感を抱くことです。

そうなってしまうと、やがては「あいつは人間的に嫌な奴。もう話もしたくない」と決裂してしまうでしょう。

仕事ができる人は、感情的に大人だから対立しないのではなく、対立をしないように相手に伝えられるから、対立しないのです。

プロフィール

木暮太一(こぐれ・たいち)

言語化コンサルタント・作家・一般社団法人教育コミュニケーション協会 代表理事

14歳から、わかりにくいことをわかりやすい言葉に変換することに異常な執着を持つ。学生時代には『資本論』を「言語化」し、解説書を作成。学内で爆発的なヒットを記録した。ビジネスでも「本人は伝えているつもりでも、何も伝わっていない状況」を多数目撃し、伝わらない言葉になってしまう真因と、どうすれば相手に伝わる言葉になるのかを研究し続けている。企業のリーダーに向けた言語化プログラム研修、経営者向けのビジネス言語化コンサルティング実績は、年間200件以上、累計3000件を超える。『リーダーの言語化』『すごい言語化』(ともにダイヤモンド社)ほか、著書68冊、累計195万部。

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