2026年02月27日 公開

周囲の変化についていけず、成長を止めてしまった「LAD人材」。そこから抜け出し、ニュー・エリートになるための条件とは何か。布留川勝氏の著書『ニュー・エリート論 世界基準のビジネスパーソンが鍛える6つの知性』(PHP研究所)より解説する。
※本稿は、布留川勝著『ニュー・エリート論 世界基準のビジネスパーソンが鍛える6つの知性』(PHP研究所)より内容を一部抜粋・編集したものです。
よく誤解されるのだが、LAD人材か否かは年齢に関係ない。
映画『GODZILLA』(1998年にアメリカで公開)を観たことがあるだろうか。物語の最後、人々はゴジラを倒して安堵する。だが最後のシーンで、観客に一抹の恐怖を残す。炎のなかで一つだけ残っていたゴジラの卵が孵化して終わるのだ。
私は研修やワークショップの現場で、若手のなかにもゴジラの卵が存在していると感じることがある。一流大学や一流企業に入って安心してしまう人、タイムパフォーマンスばかりを重視して楽な仕事を求める人、理想を追って転職を繰り返す人など、残念ながら変化に向き合わず成長を止めてしまう若手は少なくない。
いま、新卒人材の獲得競争は激しさを増し、初任給30万円といった条件が提示されることも珍しくなくなった。高待遇は若手に過剰な期待や自信を与え、入社後の言動が現場に混乱をもたらすこともある。
この状況は、バブル期の採用熱を思い起こさせる。当時も企業は優秀な学生を囲い込むために、バスで温泉地の豪華ホテルに連れ出し、手厚く接待した。だが、そうして採用された人材の多くは、30代・40代に差し掛かるころに変化へ適応できず、キャリアの停滞や転落を経験した。
もはや、LAD人材のまま定年を迎えることは不可能だ。人口減少や新興国の台頭といった現実のなかで、いまの20代から40代が同じ選択をすれば、組織としても個人としても大きなリスクを抱えることになる。
20代でも30代でも変化に背を向ければ、「若い恐竜」になってしまう。逆に、50代でも60代でも変化に前向きであれば、キャリアは何度でも再構築できる。年齢ではない。肩書きでもない。変化に対する姿勢こそが未来を分ける。
では、LADを抜け出した人はどうなるのか。私はそれを「LAD+(ラッドプラス)」と呼んでいる。LAD+とは、ローカルに根ざしながらも自分の強みを認識し、魅力を磨き続け、強い意志で成長に挑み続ける人材のことだ。
• ローカル(Local:現場根着型)ーー現場や組織に根ざし、「この人に任せれば大丈夫」と信頼を勝ち取る。自社や地域の強みを武器に成果を上げる。
• アトラクティブ(Attractive:魅力的)ーー責任感と主体性を持ち、周囲の尊敬と共感を自然に集める。人を惹きつける力がある。
• ドリブン(Driven:意欲的)ーー明確な目的を掲げ、自身による強い動機付け(Self-Driven)のもとで行動する。困難に直面しても粘り強く挑戦し、推進力を発揮する。
LAD+の状態にある人はグローバルではないかもしれないが、自分の持つ魅力を理解し、成長への意欲を持っている。これは、先ほどのLAD状態よりも一歩進んだ姿だ。
私のワークショップの参加者のなかには(とくに40代以上に多いが)、自分をLADだと認め、「私はLAD+にはなれないのではないか」と絶望感に囚われる人もいる。だが、それはまったくの勘違いだ。
能力は生まれつき固定されたものではなく、努力・戦略・フィードバックによって伸ばすことができる。この「能力は変化しうる」という考え方を、心理学者キャロル・ドゥエック氏はグロースマインドセット(Growth Mindset)と呼んだ。
行動科学でもBJ・フォッグ氏は行動を生む鍵を「動機×能力×きっかけ」の設計に見出し、組織理論家のカール・ワイク氏は「小さな勝利(Small Wins)」が大きな変化をもたらすと論じた。能力を伸ばす設計が大事なのである。
LADからLAD+へは派手な跳躍ではなく、小さな一歩を重ねることで橋が架かる。「1ミリを、毎日」これで十分なのだ。たとえば、次のような一歩はどうだろう。
• 会議で30秒だけ自分の仮説を言語化する。
• 1日1通、日本本社のプロジェクト進行状況を海外拠点向けに英語の短い文章で共有する。
• 既存業務の1工程だけAIツールで置き換えてみる。
• 週1回、外部の良質な情報をAIツールで要約して社内向けに配信する。
デイヴィッド・ヒュームの考えによれば、人間は習慣の束でできている。だからこそ、小さく始めて、続ける。それだけで軌道は確実に変わる。LADとは現在地にすぎない。今日の1ミリが、明日のLAD+(自走する魅力度)をつくる。絶望する理由はどこにもない。
ただし、LAD+はゴールではない。私のワークショップに参加する人の多くは会社の期待を背負った選抜人材で、その約7割が自分をLAD+だと認識している。だが、変わり続けるビジネス環境で真に活躍するには、さらにその先を目指さなければならない。
LADやLAD+から脱却して、どんな人材を目指せばいいか。その目標地点として私が示すのが、GAD(ガッド)人材だ。GADはグローバル(Global)、アジャイル(Agile)、デジタル(Digital)の頭文字だ。GAD人材とは次のような人物のことを指す。
• グローバル(Global)ーー国籍や文化、働く場所の違いに囚われず、あらゆる人と円滑に協働できる力を持つ。国内外を問わず、対面でもオンラインでも相手との信頼関係を築き、共通の目標に向けて成果を出せる。単なる語学力ではなく、互いの強みを活かしながら多様な人と仕事を進めるための配慮やコミュニケーションスキルを備えている。
• アジャイル(Agile:俊敏さ)ーーアジャイルとは、単なる素早さではなく、学習能力・決断力・行動力を組み合わせて発揮される俊敏さの総称である。変化を柔軟に受け止め、状況に応じて最適な選択をおこない、すぐに行動へ移す。その繰り返しによって、正解が1つに定まらない環境でも成果を生み出していく。
• デジタル(Digital)ーーデジタル技術、とくにAI技術に対してオープンに向き合い、日常的に活用して業務や生活を効率化する。それだけでなく、秘書・コーチ・メンターのようなパートナーとして使いこなすことで、自身の思考を拡張してアウトプットの質を飛躍的に高める。
重要なのは、LADやLAD+は生まれ持った性質ではなく、誰でもいつからでもGAD人材に変化できるということだ。誰もが一時的にLADに陥る可能性があり、同時に誰もがそこから抜け出せる。変わるかどうかは個人の選択だ。図にLAD、LAD+、GADの特徴を整理した。まずは自分の現在地を素直に見つめてほしい。成長の余地を把握し、小さな一歩を踏み出そう。

更新:02月28日 00:05