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対立は成長の証 チームが成熟する4つのフェーズ「タックマンモデル」とは

堀田創(AI×認知科学研究者)、水野貴明(Nexus Frontier Tech共同創業者兼CTO)

「まとまらないチームのまとめ方」

単彩チーム以上に複雑で、調整が必要とされる多彩チーム。そんなチームを成長させるうえで、たどるべきプロセスを確認しておくことが重要だろう。堀田創、水野貴明両氏の著書『まとまらないチームのまとめ方』(翔泳社)より解説する。

※本稿は、堀田創、水野貴明著『まとまらないチームのまとめ方』(翔泳社)より内容を一部抜粋・編集したものです。

 

チームが成長する4つのフェーズ

筆者の経験上、多彩チームは本当に大きな成果を出す可能性がある一方で、比較的似たような価値観や能力をもつメンバーからなる単彩チーム以上に成長時のストレスが生じやすく、メンバー間の調整に時間がかかります。しかし、チームの成長には学術的に確かなプロセスが存在します。

チームが形成されてから成熟し、高い成果を出すようになるまでのプロセスを示す理論として有名なのがタックマンモデルです(図表4-1)。

チームビルディングの進行段階を整理したフレームワークで、フォーミング、ストーミング、ノーミング、パフォーミングという4つのフェーズでチームが成熟するとされています。1965年にアメリカの心理学者ブルース・タックマンが提唱し、現代のチームづくりでも根強く指示されている考え方です。

図4-2で示すようにタックマンモデルのフェーズは必ず進捗するわけではありません。新メンバーが入ったりメンバーの心理状態の遷移など、さまざまな理由で振り出しに戻ります。そのたびにその状況を謙虚に受け止めるアンラーニングが重要になります。

なお、タックマンモデルは第5のフェーズとして「アジャーニング(Adjourning)」や「モーニング(Mourning)」とよばれる散会期を経て一連のライフサイクルが集結するという考え方なのですが、本書ではビジネス現場での活用を考慮して上述の4つのステージを中心に解説します。

「まとまらないチームのまとめ方」

 

フェーズ1・フォーミング

チームメンバーがはじめて集まるとき、お互いの期待や役割を探りあうことが多いのではないかと思います。この段階をフォーミング(Forming:形成期)とよびます。多様なバックグラウンドをもつメンバーが集まることで、まだチームとしての一体感がなく、混乱や不安が生じやすい段階です。

AIプロダクト開発を例に考えてみましょう。チームでキックオフミーティングを実施しました。

プロジェクトマネージャーの佐々木は、大企業で培ったPM経験から「細かな計画を練ってから進めることが重要」と考え、詳細なスケジュールを提案したいと思っていました。一方、シニアエンジニアの山本は過去のスタートアップでの経験から慎重なアプローチを好まず、「まずは行動してから、計画を修正すればいい」と考えていました。ところが、ジュニアエンジニアであるマイケルは、「考えすぎては手が止まる。状況に応じて即座に対応すればいいのでは」となんとなく感じていました。それぞれの考えや思いはありつつも、あまり積極的な意見交換には至りませんでした。

このように、それぞれの意見を引き出して妥協案を探りつつ、プロジェクトは進めていくような状態、各メンバーの働き方や価値観の違いはぼんやり表明されつつも、ディスカッションはあまり深まることなく各自が小さな妥協をしながらチームが形成されようとしている状態がフォーミングです。

 

フェーズ2・ストーミング

ストーミング(Storming:混乱期)は、メンバーがそれぞれの視点や考え方を積極的に表明しはじめ、対立が生まれやすくなる段階です。

異なる文化や個性をもつメンバー同士の意見の食い違いが明確になり、チーム内で摩擦が生じます。チームが成長するための試練の時期でもあります。

先に紹介したAIプロダクト開発のキックオフミーティングから2週間後の定例会議でのことでした。

シニアエンジニアの山本は「なぜこんなに計画にこだわるのか?もっとスピーディーに進めるべきだ」といい出しました。それに対してプロジェクトマネージャーの佐々木は「計画を守らなければ、信頼を失ってしまう」と主張し、意見が対立しました。

ジュニアエンジニアのマイケルは両者の議論を聞きながら、状況に応じた即座の対応を望んでいたため、計画の詳細に時間をかけることにフラストレーションを感じ、不機嫌な態度をあらわにしはじめました。

このように、ストーミングでは、メンバー同士が自分の意見を強く主張し、コミュニケーションの衝突が激化することが一般的です。

 

フェーズ3・ノーミング

ノーミング(Norming:統一期)はチームが対立を乗り越え、共通のルールや価値観を形成しはじめる段階です。ここで重要なのは、対立を避けるのではなく、摩擦を建設的に活かし、チームとしての共通のゴールに向けて協力しあうルールを自然に育むことです。メンバーが対立しながらも、それぞれの意見を尊重する対話がはじまるような状態といえます。

AIプロダクト開発のキックオフミーティングから6週間後の定例会議でのことです。

「行動してから、計画を修正すればよい」と主張していたシニアエンジニアの山本は「確かに計画は必要だが、柔軟性をもたせよう」と提案しました。計画を顧客に説明する立場でもあり、これを重んじざるをえないプロジェクトマネージャーの佐々木も「スピード重視の対応も取り入れてみよう、顧客にそのように説明してみる」と歩み寄りました。

「状況に応じて即座に対応することが重要」と考えていたジュニアエンジニアのマイケルも「即時対応を入れながら、全体の進行を確認していく」と柔軟な対応に同意しました。互いの価値観や働き方を理解しあい、チームメンバーが互いに協力できる体制が整いはじめてきました。

このように、ノーミングでは、フィードバックセッションや定期的なミーティングでお互いの意見を確認し、改善を重ねることでチームとしてのまとまりが生まれてきます。チームメンバーは、初期の対立を振り返り、いまではそれが役立ったことを実感しながら、共通のルールに基づいたコミュニケーションをとるようになります。

 

フェーズ4・パフォーミング

パフォーミング(Performing:機能期)は、チームが完全に成熟し、互いに頼れる仲間としてスムーズに協力できる状態となった段階です。

メンバー同士が信頼しあい、各自の強みを活かしながら、プロジェクトを進めていくことができるようになります。メンバー全員が役割を理解し、各自が自律的に働きつつも、チームとしての成果を常に意識して行動できるような状態です。

「細かな計画を練ってから進めることが重要」と考えていたプロジェクトマネージャーの佐々木は計画を立てることの重要性を認識しながらも、急な変更に柔軟に対応するスキルを身につけました。「まずは行動してから、計画を修正すればいい」と考えていたシニアエンジニアの山本も、スピードだけでなく計画的なアプローチへの対応も許容できるようになりました。

「考えすぎは面倒」と思っていたジュニアエンジニアのマイケルも、全体のバランスを取りながら即時対応と長期的な計画の調整に協力できるようになってきました。

このように、パフォーミングでは、各自が自らの役割を理解し、チームの成功に向けて協力しあうことができます。外から見ても「息がぴったりあっている」「スピード感がある」と評されるようになり、各自が自律的に動いていても、チームとしての方向性はズレにくくなります。多彩チームの強みはこの段階で最大化され、創造的なアイデアや大きなイノベーションも生まれやすくなります。

プロフィール

堀田創(ほった・はじめ)

AI×認知科学研究者

AI関連研究で博士号取得後、連続起業家として活躍。技術に立脚したビジネスをゼロから立ち上げ、成長・拡大・買収へと導いてきた実績を持つ。現在は、最先端のAI研究と認知科学の橋渡し役として、企業が「認知的AI」を通じてビジネス価値を最大化できるよう支援している。著書に『チームが自然に生まれ変わる』『ダブルハーベスト』(ともにダイヤモンド社)などがある。

水野貴明(みずの・たかあき)

Nexus Frontier Tech共同創業者兼CTO

東京大学大学院を終了後、はてな、百度(バイドゥ)、DeNAなどでソフトウェア開発、および開発チームマネジメントに従事。2014年からシンガポールに拠点を移し、日本、東南アジアにて企業の新規事業のサポートなどを行っている。代表作に『Web API: The Good Parts』(オライリー・ジャパン)など。

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