2026年02月12日 公開

かつて日本の建設現場では、熟練職人の経験や勘が安全管理を支える側面が大きかった。しかし、人手不足や世代交代が進む中で、こうした属人的な安全管理には限界も指摘され始めている。
近年は、その補完手段としてAIやカメラ技術を活用した安全対策に注目が集まっている。宮崎県に拠点を置くアシストユウも、屋外環境での活用を想定したAI開発に取り組む企業の一つだ。
地方発の企業が、なぜ建設・インフラ分野に特化したAI開発に取り組むのか。その背景には、現場の課題や環境条件に即した技術開発の必要性があるとされる。
建設、物流、農業。日本のインフラを支える現場で起きているのは、単なる人手不足ではなく質の変化です。「2024年問題(時間外労働の上限規制)」以降、現場からは悲鳴に近い声が届いています。
「人がいればいいのではない。判断できる人材がいないのだ」と。熟練工が減り、現場の状況判断が難しくなる一方で、工期をずらすことはできません。管理すべき現場の数は変わらないのに、それを見る目が足りていないのです。小さな現場でもカメラを入れて管理しないと、数が多すぎて追いつかないといいます。
カメラ開発を始めた20年前、カメラ導入は「監視だ」「プライバシーの侵害だ」と猛反発を受けました。しかし、その潮目が変わったのは、あおり運転が社会問題化し、ドライブレコーダーが普及してからです。映像は自分を守ってくれるという認識が広まり、現場の職人たちもカメラを安全のパートナーとして受け入れるようになりました。
従来のセンサーや動体検知カメラには弱点がありました。動くもの全てに反応してしまい、風で揺れる草木でもアラートが鳴り止まないのです。センサーだけでは、実際にその場所で何が起きているかが分からない。私たちのAIの本質は、「人」を正確に識別すること。誤検知を極限まで減らし、本当に危険な時だけ知らせる。この当たり前の実現こそが、屋外では最も難しい挑戦でした。
屋外環境は過酷です。西日、豪雨、夜間の闇。光や影の変化はAIにとって「誤検知」の原因となります。形で捉えると似たものに反応し、動きで捉えると動くもの全てに反応する。開発において選んだのは、完璧を捨てて「共に育てる」道でした。
まずは60点の精度から始め、現場でデータを集めながら80点、90点へと精度を高めていく。「人ならこの動きはしない」「二足歩行なら重心はここだ」といった職人の知見をアルゴリズムに組み込み、除外すべき対象を一つずつ潰す。この泥臭いプロセスこそが、後の検知性能に大きく影響します。
当社ではカメラ側で処理を行う「エッジAI」方式を採用しています。建設や農業の現場は常に危険と隣り合わせであり、クラウド処理特有の遅延は命取りになります。「危ない!」と知らせるのが1秒遅れたら、取り返しがつかない事故が起きる。現場で瞬時に判断し発報するエッジ処理は、安全を守るためには重要とされています。
こうして鍛えたAIは、生産性向上にも寄与しています。ある港湾工事では、海上で杭に桟橋を差し込む危険な作業にAIカメラを導入しました。操縦席でリアルタイム映像を確認できるようにしたことで、海上で位置調整を行う作業員を減らし、かつスムーズな施工で工期短縮も実現しました。
また、ある法面(斜面)工事の現場では、二次災害予防のためにAI監視カメラを導入しました。夜間の暗闇でも状況を把握できるため、翌朝の作業指示が的確に出せるようになり、5年間にわたる長期工事を「無事故」で完工されました。安全のための技術が、結果として効率化と人手不足解消に繋がっているのです。
「なぜ宮崎なのか」とよく問われますが、現場の課題は現場にしかありません。第一次産業が盛んな宮崎だからこそ、AIカメラで労働の改善や効率化に繋げられることが多くあります。
農業分野では、鳥獣被害対策や、自治体が管理する用水路の水門を事務所から遠隔操作するシステムなどが実用化されています。現場まで車を走らせる手間をなくす。
これは一見小さな変化に見えますが、高齢化が進む地方の農家にとっては、労働環境の劇的な改善であり、効率化なのです。現場に近い地方企業だからこそ、大手にはない本質的な解決策を生み出せるのです。
AIによる自動化が進んでも、人の仕事はなくなりません。むしろ、AIがいるからこそ、人は人にしかできない仕事に集中できるのです。
スポーツのトレーニングが良い例です。かつてはうさぎ跳びのような、気合だけで科学的根拠のないトレーニングが行われていました。しかし今は、AIやデータ分析により無駄が省かれ、選手はより効率的にトップを目指せるようになりました。
現場も同じです。AIが監視や単純作業を担うことで、人は無駄を省き、成長することに集中できます。ただAIには感動を生み出せません。ピッチングマシンが170kmのボールを投げても感動しませんが、人がそれを成し遂げると心が動くように、人にしかできない価値は必ず残ります。
これから日本はどんどん少子化になっていきますが、現状でも場所によっては人手不足で常に人を探してる状態です。これが増えていくとなると、この先の未来はこれまでやってきたデータを使って、人ではなくロボットがモノづくりをして、管理を人がしていく時代になると思います。
また、すでになっている場所もありますが、危険や気象を予知しながら、現場に人が居なくて進めていけるようになると思います。今でも工期に迫られている現状もあるので、24時間働けるロボットがやることで、正確に安全に作ることが可能になりますが、ここには映像とAIは必須になります。
【小幡祐己(おばた・ゆうき)】
「株式会社アシストユウ」は、1994年宮崎を本拠地として始動。屋外の過酷な環境に強い移動式ネットワークカメラ「モニタリングミックス」や、高精度なAI検知技術を強みとしている。
これらの技術が、建設現場のDX化や防災対策で高く評価され、国土交通省のNETISランキングで7年連続1位を獲得。革新的なソリューションで、労働力不足などの社会課題解決に貢献している
株式会社アシストユウHP(https://assistyou-m.com/)
更新:02月12日 00:05