
「起業にはまず1万円あればいい」と語るのは、新規事業構築を得意とする起業家の中村裕昭氏。身銭を切るのは誰だって怖い。でも、お金を使わなければお金は稼げない。では、リスクを最小限に抑えながら、確実にお金を増やしていくにはどうすればいいのか。かつては「商売下手だった」と振り返る中村氏が、臆病な人こそ知っておくべき「お金の使い方」を解説する。
※本稿は、中村裕昭著『臆病者のための起業法』(総合法令出版)より一部抜粋・編集したものです。
商売をする以上、お金は必ず先に動きます。まだ稼げていなくても払わなければいけない。これが原則です。
受注してから商品を作ったり仕入れたりする方法もありますが、初期投資含め、先に払って後から回収するという構造自体は崩すことができません。
でも、誰だって身銭を切るのはイヤですよね。僕もイヤです。
だったら、できる限りお金を使わない方法を考えましょう。
起業したくても、今お金がなくて、特に商売のイメージもないのであれば、まずは貯金しましょう。毎月3万円貯金すると決めたら、給料から最初に3万円を別口座に入れておく。その口座には手をつけずに、残ったお金で生活していく。10カ月貯めたら30万円になります。そうすれば、十分に事業スタートが可能です。
商売のアイデアがすでにあって、10カ月も待てないのであれば、毎月貯金する3万円を使って、売ってみるというのもありです。本当に小さなテスト販売であれば、1万円でもできてしまいます。
今はクラウドファンディングなどもあるので、そういった環境を活用すれば、ニーズもわかりますし、収益を得ることも可能です。
生活がカツカツで、それくらいのお金も用意できないというのであれば、本業の終業後や休日にアルバイトをしてタネ銭をつくってください。
日雇いバイトなど、スキマ時間をお金に変える環境も整っています。ほかにも、家にある不用品をフリマサイトで売るなどすれば、比較的スムーズにお金を生み出すことが可能です。
タネ銭づくりもしたくないとなると、「もう商売はやめておきなさい」という話です。
ちょっと厳しいことを言いますが、お金を稼ぎたいのに「1円も身銭は切りたくない」と言う人は、どんな商売をやっても結果を出すことはできません。
必要以上にお金を使うことをためらってはいけません。今の1万円を元手に、これから5万円、10万円、100万円にしていくのです。その最初の1万円を惜しんでしまうと、現状に不満があっても、何も変えようがありません。
お金を使わないとお金を稼げない。でもお金を使ったからといって、必ずリターンをもたらすかといったら、残念ながらそんなことはありません。「いける」と思ってお金を使ってみても、結果的に溶かして終わる場合もあります。
一つの施策に全部の予算を使い切ってしまうと、仮にうまくいかなかったとき、また一から始めなければいけません。そうならないために、最小限の金額で小さなテストを重ねると同時に、常に複数の施策を回し、リスクを分散するのです。
仮に10万円を広告費に使うとして、一度に10万円使う必要はありません。10種類のチラシを1万円ずつ試せば、10回テストすることができます。
9種類うまくいかなかったとしても一つ反応があるかもしれません。その一つを見つけたら、そこに次は3万円使ってみます。それでまた反応があったら、今度は5万円使ってみる。そうやってお金を回しながらお金を生み出していくのです。
そう聞けば理解できるはずなのに、多くの人が出ていったお金のことを気にしてしまいます。結果が出なかったことを、いつまでも気にしていてはいけません。結果が出なかったなら、次のテストをすればいいだけです。
そうかと思うと、まだ入ってきていないお金をアテにする人もいます。大きな契約が取れそうだ、というだけで「来月には100万円入るだろうから大丈夫」と、気持ちだけが大きくなってしまう人です。確実に入金されるまで、気を抜いてはいけません。
人は、お金の出入りに気持ちが引っ張られがちです。求めているものがなんであろうと、お金は単なる数字でしかありませんから、とらわれ過ぎてはいけないのです。
更新:11月19日 00:05