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なぜ50代から「すごい人」より「いい人」を目指べき? 年代で変わる生き方戦略

藤井孝一(経営コンサルタント ・株式会社アンテレクト取締役会長)

藤井孝一氏「THE21」

定年前後で、生活は一変する。それに合わせて人生像を考え直すうえで、何を指針にすればよいだろうか。学びの目的を見つけるコツを、経営コンサルタントの藤井孝一氏に語ってもらった。(取材・構成:辻 由美子)

※本稿は、『THE21』2026年3月号特集[圧倒的な差がつく「学び直し」]より、内容を一部抜粋・再編集したものです。
※前後編の前編です

 

50代は「すごい人」から「感謝される人」へ

40代と50代では状況が大きく変わります。40代までは組織の中で上を目指してアグレッシブに働いていた人も、50代になるとそろそろ会社人生の終わりが見えてきます。

定年になったあとも続く長い人生を考えれば、50代からは生き方を変える必要があるでしょう。50代では何を学び、どう生き直したらいいのか。人生100年時代を豊かに過ごすために50代にやっておくべき戦略について考えてみます。

40代と50代では働き方が変わります。40代で求められていたのは実績や成果、数字でした。しかし50代は徐々に役職定年を迎え、そうしたものから遠ざかる人も出てきます。

50代は、いずれ会社から離れることを前提に働いているわけですから、もう40代のときのように、組織の中で競争したり、成果をあげて他者から承認してもらう発想から頭を切り換えなければなりません。

これからあなたを評価するのは会社ではありません。他者からどう見えるかという他人軸の生き方ではなく、自分で自分を満足させる生き方にシフトチェンジしなければ、人生は充実した方向には向かいません。

私がコンサルティングやセミナーを通して、50代の方によく言うのは、これからは「すごい人」より「いい人」を目指しましょう、ということです。

50代になれば、若い頃と比べて気力、体力、知力の低下はまぬがれません。成果や業績といった土俵で若い人たちと戦っても、思うような成果は得られないでしょう。だったら「すごい人」ではなく、一緒にいて気持ちがいい人、人から感謝される人、人から喜ばれる「いい人」を目指したほうが生きやすいのではないでしょうか。

人は「ありがとう」と感謝されたとき、自分の存在価値を見出すといわれます。1円の成果にもならなくても、「ありがとう」「いてくれて助かった」と言われたら嬉しい。そのポジションを目指せばいいのです。

見方によっては究極の自己満足かもしれませんが、その生き方こそが定年後の人生の豊かさにもつながります。「競争」「承認」「成果」主義といった働き方から、「感謝される働き方」にシフトチェンジする。働き方の価値観を変えることが50代でやっておくべきことだと思います。

藤井孝一氏「THE21」

 

学びの目的を見つけるには自己啓発書がお勧め

働き方が変われば、学びの目的も変わってきます。40代では資格を取ったり、ITやマネジメントのスキルを磨くなど、実学をがっつり学んできたことでしょう。

しかし50代になれば、定年後の人生に合わせて、学びの目的も変えていかなければなりません。退職して悠々自適で過ごすのか、雇用延長して働くのか、あるいは自分で起業してビジネスを始めるのか、それぞれの選択に耐えうるような学びをしていく必要があります。

付け加えれば、「人生100年の残り半分をいかに豊かに過ごすか」という視点からの学びも忘れてはいけません。

現在59歳の私自身を例にとれば、経営コンサルタントとしてこれからも仕事を続けていきますので、最新のビジネス事情に関する勉強は欠かせません。同時にワインのソムリエ資格を取ったり、料理教室やヨガに通い、人生を楽しむための学びも始めています。将来、自分はどう生きたいのか、どんな人生を送りたいのか、その選択に合わせて、学びの目的を見直すのが50代なのです。

例えば、50代のうちにソムリエの資格を取り、飲食店でアルバイト経験を積んでおけば、10年後の定年時には即戦力として働けます。60歳になってからあわてて資格を取るより、活躍の幅は広がるでしょう。50代で会社にいるうちに、給料をもらいながら、将来に備えた学び直しをするのが一番効率的ともいえます。

何を学べばいいかわからないという人には自己啓発書がお勧めです。『LIFE SHIFT』(リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著)や『新版 いくつになっても、「ずっとやりたかったこと」をやりなさい。』(ジュリア・キャメロン/エマ・ライブリー著)、『DIE WITH ZERO』(ビル・パーキンス著)は、私自身の50代からのシフトチェンジに役立った本です。

 

「流動性知能」ではなく「結晶性知能」を活かせ!

40代と50代では知力にも差がついてきます。そもそも人間の知的生産性のピークは40代といわれています。

もちろん50代になっても第一線でバリバリ働いている方もいますが、私自身を振り返っても、34歳で大手金融会社を辞めて独立。40歳で起業して経営者として働いていたときがピークでした。51歳になったとき、会社経営を後進に譲りましたが、それは「経営者として勝負できるリミットは50歳くらいまでではないか。だったら戦うフィールドを変えよう」と思ったからです。

40代は斬新なアイデアや柔軟な思考力、新しい問題解決力など実務で発揮する知力がマックスに達します。これらの知能は「流動性知能」と呼びます。

一方、50歳を過ぎると、加齢により「流動性知能」が低下してきます。若いときのようには新しいアイデアが浮かばない、臨機応変に対応できなくなったと感じる方も多いのではないでしょうか。

しかし、落ち込む必要はありません。50代で伸びてくる知力もあるからです。それが「結晶性知能」と呼ばれるものです。これは過去に学んだスキルや経験を活かして問題を解決する能力のことです。50代は積み重ねた「結晶性知能」を活かして、40代とは違う場所で勝負すれば、十分戦えるのではないでしょうか。

私が50代で会社経営者からフリーの経営コンサルタントに転身したのも、「流動性知能」ではなく「結晶性知能」を活かすためでした。会社に勤めている人なら、自分の経験やスキルを人に還元する、すなわち部下に教えるといった仕事はまさに「結晶性知能」を活かしたものにほかなりません。

「部下は自分の知識など必要としていない」とか「人に教えるほどの知識はありません」と自分の能力を過小評価する人が多いのですが、はたしてそうでしょうか。

50代まで会社員を続けてきたということは、組織の中で人をまとめ、成果をあげるスキルに長けている証拠です。そのキャリアやスキルは必ず誰かの役に立ちます。

もし、今の職場で必要とされていないと感じたとしたら、それは魚がいないところで釣りをしているから。場所を移動して、魚がいるところに行けば、あなたの知能を必要とする人が必ずいるはずです。社内の他の部署の人を教えたり、オンラインで外部の人も入れた勉強会を立ち上げてもいいでしょう。

私のコンサルティングを受けた人の中にも、長年培った営業スキルを活かして、今は営業コンサルタントとして全国を飛び回っている方もいます。自分を信じて、強みを活かす場を探すのも、50代でやっておくべきことです。

プロフィール

藤井孝一(ふじいこういち)

アンテレクト代表取締役/経営コンサルタント

1966年生まれ。大手金融会社でマーケティングを担当した後、経営コンサルタントとして独立。これまで2万人超のビジネスパーソンを指導し、今も起業を志す多くのビジネスパーソンたちに影響を与え続けている。メールマガジン『ビジネス選書&サマリー』は5万人以上のビジネスパーソンに読まれている。著書に『週末起業』(ちくま新書)、『50代がうまくいく人の戦略書』(三笠書房)など。

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