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幸福に生きるための必須条件とは? 人生100年時代を乗り切るための3冊

2025年12月12日 公開

本の要約サービス「flier(フライヤー)」

大賀康史

ビジネス書を中心に、1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。これまで約4,100冊の書籍をご紹介してきました。

本記事ではフライヤー編集部が、特にワンランク上のビジネスパーソンに読んでほしい本をピックアップ。今回は「人生100年時代を幸せに生きる」をテーマに、選りすぐりの3冊をお届けします。

 

戦略的に「100年時代」を乗り切るには

LIFE SHIFT

超高齢化が進み、「人生100年」と言われるようになって久しくなりました。様々な人生論が飛び交うなか、いち早く「100年時代の人生戦略」を提示したのが『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット、池村千秋(訳)/東洋経済新報社)です。

かつては「教育→仕事→引退」という直線的な人生モデルが一般的でした。しかし今は、定年後に起業して新しいキャリアを築く人や、会社勤めをしながら大学院に通ったり、副業に挑戦したりする人も増えています。このような「マルチステージ」の生き方が当たり前になった今、自分がどう生きたいのかを早い段階から考え、計画的に動くことが求められています。

そのうえで、本書が注目するのが、目に見えない3つの資産です。

まずは「生産性資産」。スキルや知識といったキャリアの見通しを高めるための資産で、常にアップデートする必要があります。

次に「活力資産」。健康はもちろん、家族や友人との良好な関係など、幸福感や意欲を支える資産がこれに当たります。中年期以降はストレス管理や旧友との関係維持がいっそう大切になるでしょう。

最後は「変身資産」。人生の変化に柔軟に対応するためのレジリエンスであり、自己理解、多様なネットワーク、新しい経験への挑戦といった力を指します。

これら"見えない資産"への投資こそが、「生涯現役」を実現するカギになると本書は説きます。第二、第三の人生を充実させるためにも、読んでおきたい一冊です。

 

ミドル世代は「リスキリング」をどう進めるか

中高年リスキリング

2冊目は『中高年リスキリング』(後藤宗明/朝日新聞出版)。リスキリングとは「新しいことを学び、新たなスキルを身につけ、実践し、新しい業務や職業に就くこと」。ここ数年で広まった言葉ですが、本書はこの概念の提唱者である後藤氏が、ミドル世代以降に向けてまとめた実践書です。

著者は、中高年がリスキリングに取り組む目的を「失業なき成長産業への労働移動」と位置づけています。AIによる自動化でホワイトカラーの仕事も影響を受けつつある現在、今の業界が10〜20年後も安泰とは限りません。定年後を見据え、転職やキャリアチェンジを考えるなら、戦略的なリスキリングが不可欠です。

リスキリング成功のポイントは、「マインドセット」「スキルセット」「ツールセット」の3つ。特に"マインドセットの転換"が、ミドル・シニア世代に必要だと強調します。

具体的には、「まずやってみる」「コンフォートゾーンから出る」「6割理解で前に進む」「同じプロセスを繰り返す」「適宜軌道修正する」「すぐに成果を求めない」「成長途上の自分を肯定する」といった7つの姿勢。

ハードワークに勤しみ、豊富な経験を持つこの世代の人にとっては、「本当にこれでいいのか?」と心もとなく感じるかもしれません。しかし、新しい学びには"アンラーニング(過去の成功体験をいったん手放すこと)"も欠かせません。まずは無理なく始め、気負わず進めることで道は拓けていくでしょう。

 

「幸せに生きる」ための決定的な要素とは

グッド・ライフ

最後に紹介するのは『グッド・ライフ』(ロバート・ウォールディンガー、マーク・シュルツ、児島修(訳)/辰巳出版)。ハーバード大学で80年以上続く「ハーバード成人発達研究」をもとに、「幸せな人生とは何か」を明らかにした一冊です。

1938年に始まったこの研究でわかったのは、肉体的・精神的健康と長寿の背景には、ある"決定的な要因"があるということ。それは「良好な人間関係」です。運動習慣や食生活、仕事の成功ももちろん大切ですが、人間関係を大切にし続けることは、幸福で健康な人生のための"必須条件"だと言います。

本書が提唱するのは、人間関係の「ソーシャル・フィットネス(健全な状態)」を定期的に測り、メンテナンスすること。仕事や趣味が忙しくなると、家族との時間や友人との関係がおろそかになりがちですが、人生後半に向けて見直す価値は十分あります。

交流において重要なのは「頻度」と「質」です。他者と過ごす時間が多い日は幸福度が上がり、とくにパートナーのような親密な関係ではその効果がより大きいことも判明しています。加齢に伴う体の痛みなどがあっても、パートナーとの仲が良好であれば幸福度は下がらないという結果も興味深いポイントです。良いつながりがあれば、多少健康が揺らいでも心は守られるのです。

副題にある通り、「幸せになるのに、遅すぎることはない」。人生100年時代を前向きに生きるヒントが詰まった、ぜひ手に取ってほしい一冊です。

 

プロフィール

フライヤー(flier)

ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されているほか、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。(https://www.flierinc.com/)

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