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「なりたい自分をイメージしなさい」が本当に有効な科学的根拠

井添結琴(マインドセットコーチ)

「イメージによって思考が現実化する」一見すると信じがたい話だが、科学的な裏付けが取れているという。一体、どういうことだろうか。日米両国でマインドセットコーチとして活躍する井添結琴氏が、イメージが心身に及ぼす影響と、その効果の高め方について解説する。

※本稿は、井添結琴著『自分を変える戦略書 アメリカの億万長者に学んだ成功のマインドセット 』(KADOKAWA)より一部抜粋・編集したものです。

 

イメージすると思考が現実化する

私が中学1年生のときの話です。母からある研究論文が掲載された記事を手渡されました。書いてあったのは、アイオワ大学のクアン・ユエ博士が行った筋力トレーニングに関する実験でした。
その実験の参加者は、3つのグループに分けられました。

・第1グループ:実際にジムで筋トレを行う
・第2グループ:頭の中で筋トレをイメージするだけ
・第3グループ:何もしない

数週間後の結果は衝撃的でした。
実際に身体を動かしたグループは筋力が30%向上しましたが、なんと、頭の中でイメージするだけのグループでも22%の筋力向上が見られたのです。

記事にはさらに、トップアスリートやビジネスの成功者たちが日常的に取り入れている、ビジュアライゼーションの効果や成功事例が紹介されていました。

ビジュアライゼーションとは、理想の未来を鮮明に描き、その瞬間の感情と臨場感を先に体感する精神トレーニング技法です。意図して自分のステートを切り替えることで、マインドセットの水準を高め、思考と行動を変化させて現実を創造する効果があると、多くの心理学や脳科学の研究で支持されています。

その記事を読み終えた瞬間、胸が高鳴りました。長く悩んでいた課題を解決する鍵を見つけたように感じたからです。当時の私は、入部したばかりの空手部で「1年生のうちに3年生を抜き、全国大会の県代表を勝ち取る」という切望に近い目標を掲げていました。

そこで、論文に書かれていた技法を徹底的に実践しました。寝る前も、授業の合間も、休日も、時間があれば空手の型を頭の中で繰り返し描き続けたのです。

すると、不思議なことが起きました。実際の練習で技の精度が上がり、失敗が激減していったのです。そして迎えた総合個人戦では、1年生から3年生まで全員が出場する中で県1位を獲得。さらに全国大会でベスト16という、年少選手ではトップレベルの結果を残すことができました。

この体験をきっかけに、私はビジュアライゼーションの力を確信し、人生のあらゆる分野にこの技法を応用するようになったのです。

 

なぜ従来のイメージングは効果が出にくいのか?

自己啓発の分野ではよく、「目標を達成した自分をイメージしましょう」「成功した未来を思い描きましょう」と言われます。

この方法には、科学的根拠があります。目標達成や成功体験をリアルに思い描くと、脳の神経回路が活性化し、行動力や自信、モチベーションの向上につながることが心理学や神経科学の研究によって実証されているのです。

ただし、一般的に広まっている「脳は現実と想像を区別できない」という説明には誤解があります。正確に言えば、脳は現実と想像を完全に混同するわけではありません。研究で示されているのは、「強くリアルにイメージされたことに対して、脳が現実に近い反応を示す」という点です。

ビジュアライゼーションに臨場感や感情が伴うほど、脳の中では実際の体験に近い神経活動が生じます。つまり、単に頭の中で未来の姿を思い描くだけではなく、思考と感情の両方を使って、より鮮明に「成功した自分」を想像の中で繰り返し感じ、擬似体験することで、神経可塑性が働き、神経回路が少しずつ強化され、未来の自分のマインドセットが潜在意識に刻まれていくのです。

そして、この新しく形成された世界観を土台に「思考→決断→行動」という流れを重ねていくことで、やがて目に見える現実のレベルで結果が変わっていきます。

つまり、ただ座ってなんとなく想像するだけで現実が魔法のように変わるのではありません。ビジュアライゼーションとは、未来の新しい自分の在り方を、心と身体の両方を使って、イメージの中で繰り返し練習する鍛錬なのです。

そうして脳を意図的に刺激し続けることで、マインドセットが書き換わり、新しい行動パターンが生まれ、そこから現実が変わり始める──これこそが、人生を変えるビジュアライゼーションの本質なのです。

 

「実践」と「イメージ」の組み合わせがさらなる効果を生む

さらに、近年の研究では、「ビジュアライゼーション」と「実践」を組み合わせることで、身体を動かす命令を出す脳の領域「運動野」や、喜びや達成感を感じさせる領域「報酬系」がより強く活性化することも明らかになっています。

ビジュアライゼーションと実践をセットで行うことで、脳は単なる空想ではなく「現実につながる経験」として情報を統合しやすくなるのです。その結果、集中力・モチベーション・自己効力感がいっそう高まります。

トップアスリートやビジネスの現場でも、加速的成果を生み出すトレーニング法の1つとして、「ビジュアライゼーションと実践の反復」が用いられています。

私が中学生の頃に取り組んでいた空手のイメージトレーニングも、まさにこの原理が働いていました。頭の中で「完璧な形」を何度も思い描き、そのうえで日々の稽古に励んだ結果、実際の動作に必要な神経回路が強化され、より効果的で安定的な技術の向上へとつながったのです。

この訓練はマインドセット改革においても応用することが可能です。マインドセットも脳の視点から見れば「1つのスキル」です。

例えば、「人前で堂々と話す自分」をイメージした後に、実際に小さな場面で発言してみること。あるいは、すでに成功している自分の姿を思い描いた後、実際にその自分が選ぶであろう行動を、勇気を持って今この瞬間に選択していくこと。こうした「イメージ→実践→イメージ→実践」の繰り返しが、より効果的に新しい思考や感情、行動パターンを刻み込んでいきます。

結果として、挑戦を恐れず、自分を信じて行動できる肯定的なマインドセットが現実のものとなっていくのです。

しかし、多くの人がビジュアライゼーションを試しても、期待した変化を得られずに挫折してしまいます。それは、なぜでしょうか?

理由は明確です。理想の未来に対して疑念を抱き、ネガティブな感情を持ったままの状態で「想像」のプロセスに取り組んでいるからです。

「成功したい」と頭では思いながらも、心の奥底で「どうせ自分には無理だ」と感じている状態でビジュアライゼーションに取り組むと、脳に矛盾したメッセージが送られるため、効果は大幅に減少してしまいます。

 

現実創造を促す「アラインメントの法則」

ビジュアライゼーションを成功させるには、「アラインメントの法則」を理解する必要があります。
アラインメントとは「調和」や「一致」を意味する言葉です。車のタイヤのアラインメント調整を思い浮かべてください。4つのタイヤがすべて同じ方向を向いているからこそ、車はまっすぐ走れます。もしタイヤの方向がずれていれば、どれだけアクセルを踏んでも目的地にスムーズに到達できません。

人生でも同じことが起きます。マインドセット形成において、第2章で説明した精神を構成する「心」と「意識」の各要素──思考、感情、意志、行動などをタイヤと考え、自分の人生を車体と考えると理解しやすくなります。

私たちの内面のアラインメントが整っていなければ、どれだけ理想のビジョンがあっても、その方向に向かって一直線に現実を進めることができないのです。

「内面のアラインメントが整っている」とは、心と意識の両方を含めた、これらすべての「精神のタイヤ」が矛盾なく、進みたい未来と同じ方向に向かって働いている状態のことです。

例えば、「成功したい」と頭でイメージしていても、心の奥で「どうせ自分なんて無理だ」と感じている場合は、思考のタイヤと感情のタイヤが別々の方向を向いている状態です。このように自分の内面の世界を構成している各要素の方向性が食い違うと、どれだけ鮮明に未来をイメージできたとしても効果は大幅に減少してしまいます。

つまり、効果的なビジュアライゼーションには、まず自分の内面のアラインメントを整える作業が不可欠なのです。そのために必要なのが、自分の心がどのように感じ、意識がどこに向いているかを客観的に把握する「メタ認知能力」です。

 

人生の主導権を取り戻す力「メタ認知」

メタ認知とは、自分を主観的な立場からではなく、あたかも外側から眺めるように、内面で起こっている出来事を客観的に捉える能力のことです。

「今、自分は何を考えているのか」「どんな感情をもとに、発言や決断をしようとしているのか」といった問いを通じて自分を冷静に理解できるようになると、その瞬間の思考や感情に振り回されることなく、次にどんな思考を選び、どんな感情を持ち、どこに意識を向けるのかを、自らの意志で選び取ることが可能になります。

メタ認知能力が高まると、人生の舵取りを自分の意志で行う自己コントロール能力が向上し、思考や感情に流されずに生きる力が身につきます。その結果、習慣や行動、人間関係、さらには人生そのものにおける自己調整力までもが大きく高まるのです。

言い換えると、メタ認知とは「反射的に生きる」状態から、「選んで生きる」状態へと導く力だと言えるでしょう。人生を自分の望む未来へと確実に切り開くため、誰もが磨くべき極めて重要なスキルなのです。

このメタ認知能力はトレーニングすることで、誰でも向上させることができます。その際に活躍するのがビジュアライゼーションを活用したメソッドです。

ここでお教えするのは、従来の「理想の姿をただ思い描くだけ」という一方向的な手法とは異なります。自分の意識の現在地を正しく把握し、思考や感情を向ける先を意図的に選び直す。その繰り返しを通して、新しいマインドセットを潜在意識に刻み込む──これが私の提唱する進化型ビジュアライゼーション・メソッドです。

多くの人が従来の方法で挫折してきたのは、内面のアラインメントが整わないまま理想を描こうとしたためです。このアプローチはその弱点を補い、これまで到達できなかったレベルの変化を現実に引き起こすことを可能にします。

プロフィール

井添結琴(いぞえ・ゆき)

マインドセットコーチ

17歳で単身渡米し、ロサンゼルスで最先端のマーケティングとマインドセット論を学ぶ。その後、現地で立ち上げたコンサルティング会社「NEXT LEVEL BIZZ」を27歳で年商億超えの事業へと成長させる。現在はマインドセットコーチングなど複数の事業を展開。日米両国で、ビジネスとマインドの両面から人生を変革するメソッドを指導している。

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