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成功者はなぜ「ありがとう」を連呼するのか? 億万長者に学ぶ習慣の秘密

井添結琴(マインドセットコーチ)

立場や経験を問わず、収入もキャリアも人間関係も好転させる方法があるという。それは、マインドセットを変えること。マインドセットを切り替えれば、現実にも影響が出てくるのだ。では、その具体的な方法とは何か。日米両国で、マインドセットコーチとして活躍する井添結琴氏が、世界の一流が実践する「戦略的思考」とその効果について解説する。

※本稿は、井添結琴著『自分を変える戦略書 アメリカの億万長者に学んだ成功のマインドセット 』(KADOKAWA)より一部抜粋・編集したものです。

 

世界の一流たちが共通して使う「ある言葉」

アメリカに移住して、世界の一流と呼ばれる成功者たちと出会う中で、ある共通点に気づきました。それは、彼らが皆、驚くほど頻繁に「ありがとう」という言葉を使っているということです。

興味深いのは、私が彼らに何かをしたときだけでなく、彼らが私のために時間を割いてくれたときにも、逆にお礼を言われることでした。

例えば、忙しいスケジュールの中、「成功の秘訣を教えてください」とお願いして時間をいただいたときのことです。普通なら、お願いした私が一方的にお礼を言うべき場面です。ところが彼らは、こう言うのです。

「素晴らしい質問をしてくれてありがとう」
「僕の話にインスピレーションを見出してくれてありがとう」
「わざわざ会いに来てくれてありがとう」

最初は「これが英語圏の文化なのかな」程度に思っていました。しかし、日本への出張中に仕事をしていた際にも同じ体験をすることになります。

2024年11月、私は人生でとても光栄な機会をいただきました。私が心から尊敬する二人の偉大なメンター、稲盛和夫氏とともにKDDIを創業された千本倖生
先生、そして日本を代表するベストセラー作家で世界的講演家の本田健さんをお招きして、虐待を受けた子どもたちのためのチャリティセミナーを開催させていただいたのです。

私のような若輩者が、このような偉大なお二人に講演をお願いするなど、本来であれば恐れ多いことでした。しかも、1時間で数百万円の講演料でも不思議でない世界レベルの先生方が、子どもたちのためになればと無償で貴重なお時間を割いてくださったのです。

そのセミナー当日、私は再び同じ光景を目の当たりにしました。お二人とも、「ありがとう」という言葉を心から、そして自然に口にされるのです。私を含めセミナーの運営スタッフ一人ひとりに、温かい笑顔とともに「ありがとう」の言葉をかけてくださいました。

準備を手伝うスタッフたちに、会場設営をする人たちに、受付を担当する人たちに──すべての人に対して、心からの感謝を示されていました。

 

細やかな配慮と感謝が人の情熱に火をつける

セミナー終了後、何人ものスタッフがこう語ってくれました。
「私たちのほうがお世話になっているのに、なぜか励まされた気持ちになりました」
「不思議なことに、お二人から感謝されただけで、自分にもいい仕事ができる、もっと頑張りたいという気持ちが湧いてきました」

実際、その日のスタッフたちの働きぶりは目を見張るものがありました。一人ひとりが自発的に気を利かせ、いつも以上に丁寧で心のこもった対応をしていたのです。

会場の隅々まで気を配り、自分が持つ強みを活かして責任の範囲を超えた貢献を自然と行い、セミナー参加者への細やかな配慮を惜しまない姿がそこにありました。まるで「ありがとう」という言葉により内なる情熱に火がついたかのような、生き生きとした表情で働いていたのです。

その光景を見て、私は1つの真実に気づきました。感謝の言葉には、一瞬で人のステートを引き上げ、力強く肯定的なマインドセットを作り出す力があるということです。そして、心に眠る力を瞬時に呼び覚まし、その人本来の能力を引き出す「感謝の力」を実感したのです。

千本先生も本田健さんも、そしてアメリカで出会った成功者たちも、感謝の言葉を通じて周囲の人々のエネルギーを高め、その場にいる全員を前向きな気持ちにさせていたのです。

 

自己肯定感を高め、才能を引き出す「ありがとう」の力

実際に、ビジネスの現場でも感謝の力は明確な成果を生み出しています。ある企業では、組織内で「ありがとう」という言葉を意識的に交わす文化を徹底した結果、チームの協力体制や雰囲気が格段に改善し、売上や目標達成率が大きく伸びました。

営業の現場でも、「売ること」よりも「顧客への感謝」を最優先に掲げ、「ありがとうございます」と伝え続けた担当者が、顧客との信頼関係を深め、リピート受注や紹介が急増、売上を飛躍的に伸ばした事例は数多く存在します。

また、教育の現場でも、感謝が生み出す肯定的な変化は広く報告されています。ある学校では、学級全員で「友だちの良かった行動にありがとうカードを贈り合う」活動を行ったところ、子どもたちがお互いの長所を積極的に見つけ合うようになり、助け合いやチームワークが自然に育まれました。

小学生への感謝介入(感謝日記やありがとうワーク)の効果については、複数の国内外研究で確認されており、自己肯定感の向上、学校適応力の改善、前向きな自己認知の高まりが報告されています。

このように、感謝の言葉は相手を喜ばせるだけでなく、発する本人の心を満たし、双方に肯定的な変化をもたらします。

感謝は、自分自身と周囲のマインドセットを同時に高める、最もシンプルで、最も強力な習慣なのです。

 

感謝を習慣にすれば 幸福感が長期的に上がる

さらに素晴らしいのは、感謝がもたらす変化には「瞬時性」と「長期性」があるということです。

ペンシルベニア大学のマーティン・セリグマン博士らは、被験者を複数のグループに分け、その中の1つに「自分がこれまで感謝している人へ感謝の手紙を書き、直接届ける」という課題を与えました。

すると驚くべきことに、この「感謝の手紙」グループの幸福度は、他のどの介入法よりも高く上昇したのです。しかもその効果は、なんと1か月以上も持続しました。

つまり、感謝とは、短期的に私たちのステートを切り替えて気分を良くするだけのものではなく、人の心の奥深くに働きかけ、幸福感を長期的に引き上げる強力な習慣であることが科学的に裏づけられたのです。

さらに、アメリカの心理学者ロバート・エモンズ博士をはじめとする科学者たちの間では、感謝の気持ちを抱くと、脳内でドーパミンやセロトニン、オキシトシンといった幸福や安心・活力に関わる神経伝達物質が分泌され、ストレスホルモンが軽減されることが確認されています。感謝は気分的な向上だけでなく、身体レベルでも変化を生み出す優れた習慣なのです。

実際、fMRIという脳画像検査技術を用いた実験では、感謝の手紙を書くワークを行うと、数分以内に脳の前頭前野や報酬系が活性化することが観察されました。意識的な感謝をきっかけに気分や意欲が素早く向上することは、科学的にも検証されているのです。

これらの実験結果からも、感謝は一瞬で自分の在り方を変えることができるマインドセット強化の習慣だと言えるでしょう。

また、さらに驚くべきことに、感謝の習慣には「続けやすさ」という大きな魅力があります。エモンズ博士らが行った研究では、参加者を「感謝できること」を記録するグループ、「面倒だった出来事」を記録するグループ、「中立的な出来事」を記録するグループの3つに分け、それぞれ週ごとに経験を書き留めてもらいました。

結果、感謝を記録したグループは、他のグループと比較して幸福感や楽観性が高まり、より前向きな行動を取る傾向が見られました。

 

感謝のパワーは"量"より"質"で発揮される

ここで注目すべき示唆があります。それは、感謝の効果は必ずしも"頻度が高いほど高まる"とは限らないということです。

一部の研究者は、頻度が高すぎると「義務感」や「慣れ」が生じ、感謝本来の〝新鮮さ〟や〝味わい深さ〟が薄れてしまう可能性も指摘しています。

つまり、感謝は "量より質"。たくさん書くことよりも、1つひとつの出来事に心を向けることが、幸福感を育てる鍵なのです。

マインドセットを強化する多くの習慣は、潜在意識に働きかけるために毎日の反復が必要とされます。しかし「感謝」に関しては、比較的低い頻度でも効果が期待できる点に特長があります。毎日の習慣作りに苦手意識がある人でも、まずは「週1回の感謝」から気軽に始められるのです。

プロフィール

井添結琴(いぞえ・ゆき)

マインドセットコーチ

17歳で単身渡米し、ロサンゼルスで最先端のマーケティングとマインドセット論を学ぶ。その後、現地で立ち上げたコンサルティング会社「NEXT LEVEL BIZZ」を27歳で年商億超えの事業へと成長させる。現在はマインドセットコーチングなど複数の事業を展開。日米両国で、ビジネスとマインドの両面から人生を変革するメソッドを指導している。

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