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三流は「最後まで読めない」、二流は「メモを残す」、一流の読書は?

2025年12月23日 公開

あつみゆりか

読書のイメージ

どんなに忙しくても本を読むべき、読書をすれば賢くなれる、できる上司は読書家——。でも自分はどうだろうと考えたときに胸を張って読書について語れる人は少ないでしょう。事実、日本人の読書量は年々減るばかり。海外と比べても読書に割く時間が短いというデータもあります。しかし「そんな人にこそ、一流の読書術を身に付けることは可能です」そう言い切るのは 『1冊まるごと「完コピ」読書術』(PHP研究所)の著者・あつみゆりか氏。本稿は、忙しいビジネスパーソンや子育て中の人でも身に付けられる一流の読書術をお伝えします。

 

最後まで読めない人の共通点は"動機の曖昧さ"

本を買った瞬間だけは「読むぞ!」とテンションが高いのに、いざページを開くと睡魔に襲われる、携帯ゲームの方が魅力に感じてしまう。——そんな経験は誰にもあるはずです。

「本を読む」という行為を継続できないというのは、多くの人の悩み。やる気が続かない、でも読んで今の不足感は解消したい。そんな狭間で、いつも自己嫌悪がつのってしまう人も多いのではないでしょうか。

でも本が読めないのは、あなたの意思が弱いからではありません。

読む理由が曖昧だからです。

「なんとなく面白そう」「流行っているから」

そんな風に、なんとなく読む本があっても良いです。

あなたが読書好きなら、むしろそうした「なんとなく」に名著との出会いがあることもあるでしょう。しかし、この"なんとなく読書"は、もともと読書が習慣になっていない人とはきわめて相性が悪いと言えます。

では、そんな人はどうするべきか?

それは、今の自分に直球で効きそうな本を読むことです。

朝起きられない? → 時間術
職場の人間関係がしんどい? → 話し方や自己啓発
資産運用始めたい? → マネー本

まず、課題とジャンルが合っているのか?を確認しましょう。それが最後まで読むための最初の条件なのです。

 

メモして満足している人が、実は、いちばん伸び悩む「深い理由」

読んで忘れないために「読書メモ」を残している人たちもいます。

それはそれで素晴らしい習慣です。

アウトプットすることで記憶にも定着するし、あとから振り返ることもできる。月に3冊以上、コンスタントに読む習慣がある人にとっては大切なログとなるでしょう。

一方そんな人でも「読書メモ」を残すことが、成長につながっているかと聞かれて自信をもってイエスと答えられる人は少ないのではないでしょうか?

では、なぜ記録したのに実行できないのか?

それは忘れなければ日常生活で実行できるようになる、忘れなければできるようになる確率が上がる!と安易に考えているからではないでしょうか。私から言えば、あまりに楽観的。忘れないだけで本に書かれていることができるようになるなんて、まるで『ドラえもん』の四次元ポケットから出てくる道具のような世界線です。

そもそも1冊の本には7万文字、300ページ近くのノウハウが書かれています。それらをぜんぶ覚えていることはもちろん無理ですから、多くの人は、その中の1つ2つをメモして日常の中で少し実践してみる。しかしそれで上手くいくなら、そんな簡単なことはありません。つまりほとんどの人が「メモ」では、できるようにならないのです。

 

一流がやっている、ただ1つの当たり前すぎる方法

多くの一流の人は自らの「人生を変えた1冊」というのを持っています。

例えば、ユニクロなどを展開するファーストリテーリングの柳井正氏の愛読書は『プロフェッショナルマネジャー』(ハロルド・ジェニーン著/プレジデント社)、楽天の三木谷氏は『葉隠』(田代陣基/講談社)、星野リゾートの星野氏は『社員の力で最高のチームを作る―1分間エンパワーメント』(ケン・ブランチャードほか著/ダイヤモンド社)など。何かを成し遂げた著名人には必ずと言っていいほど、人生で大切にしている1冊があります。

では彼らはその本をどう読んだのか?そこには共通点があります。

・何度も読む
・何度も解釈する
・何度も実践する
・繰り返し持ち歩く

一流と呼ばれる人ほど、こんな努力を積み重ねています。じゃあ私たちは一度、読んでメモしただけで良いのでしょうか?それでは"入口"にも立っていない状態だと気づくはずです。1つ2つを実践しただけで、簡単に成長できるはずもないのです。

 

「凡人」でも「一流」の読み方になる、3つのコツ

「いやいや、そんなの無理」と思った人もいるでしょう。

でも意外にも、一流の読書は難しいことではありません。多くの人にとって最大の問題は、"インプット過多"になっていること。読む量だけ増やして、肝心の実践をしていないから、全く身につかないのです。

ではどうするか。

1. 半年で身につけたいテーマを1つに絞る

話し方でも時間術でもマネジメントでもいい。まずは分野を一点集中することです。たくさん読むことは「安心感」にはなるけれど、忙しい中で読書にかけられる時間は限られています。テーマが分散しては、がんばらなくてはいけないことが多すぎて、意識も行動も薄まってしまいます。

2. その分野の本は1冊に絞る勇気を持つ

一般的な読書術は、「複数読んで共通項を探す」ですが、多読はこれまた「読む」行為に時間が割かれる原因になります。本が好きな人ほど現実にはインプットが9割/アウトプット1割くらいになってしまう。一冊"だけ"に賭けることが、実践を濃くする第一歩です。

3. 読んだら抜き書き→実践リスト化→10日間検証

・Excelに抜き書き
・似た内容をまとめる
・10日間の実践のToDoリストを作る
・自己チェックして達成率を計測する

人は驚くほど意識とは裏腹に、実際はやってません。実践したかどうかを可視化する。これこそ、実践頻度を上げる第一歩です。また書き出す場所はノートでもいいですが、Excelだと実践リストにして検証するのが楽になるのでオススメです。

この3つだけを意識すれば、半年後にはあなたにも"人生を変えた一冊"が確実に誕生します。

最後にひとこと。読書は量の問題ではなく、「その1冊とどれだけ深く付き合えるか」 で決まります。"忙しくて読めない"ではなく、"1冊を深く読めばいい"。その発想を手に入れた瞬間、あなたの読書の格は上がり始めるのです。

プロフィール

あつみゆりか(あつみ・ゆりか)

大人の学びプロデューサー

1976年、米国ボストン生まれ。3児の母。人の学びを科学するSoZo(ソウゾウ)(株)代表取締役/マイナビウエディング元編集長。子育てとキャリアアップの両立で悩んだ自身の経験から、起業後は社会人の学びの機会を提供する事業を手がける。ブライダル業界ではWEBマーケティング第一人者として各業界紙の連載や講演を行なうなど、指導した経営層と担当者はのべ7,000人を超える。

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