2025年02月05日 公開
あなたはこれまでに、読書をどれだけ人生に活かせてきただろう? 読み終えて「良かった」「勉強になった」レベルでとどめていなかっただろうか? それではせっかくの読書も、成長や進歩につながらない。ここでは、「なりたい自分」になるための最短ルートを導き出す、奇跡の読書法を紹介する。
※本稿は、『THE21』2025年1月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。
あなたは最近、本を読みましたか? 2024年に読んだ本の数は? それらはあなたの役に立ちましたか? あなたの血肉となりましたか?
これからお教えするのは、これまでのあなたの常識を覆す読書法です。その名も「1冊まるごと『完コピ』読書術」。これは、あなたが自ら自分の師匠とすべき書籍を厳選し、その書籍から得られるエッセンスをすべて人生で体現(完コピ)しようというもの。確実に人生を変える読書術。早速、その方法をお教えしましょう。
私は完コピするべき本を「師匠本」と呼んでいます。まさに「師匠」のように一定期間、教えを請い続ける存在であり、ずっと一緒にやっていくパートナーのような存在です。
それだけに、その選び方も大変重要となります。では、どう選べばよいか。ここで多くの人が、ランキング上位で評判の良い、いわゆるベストセラーの本を選ぶかもしれません。それ自体、本を選ぶ基準として完全に否定するわけではありません。
しかし読み手の一人ひとりは、置かれている状況も、性格も、課題も違うもの。人々にとっての「良い本」と、あなたにとっての「良い本」は違うはずです。
本選びの最初の心得は、「この人なんか好き」という感覚に従うことです。読んだときに「なんか好き」「憧れる」「面白い」「カッコいい!」など何でも良いのでポジティブな感情が湧き出てくる本は、それだけで「師匠本」候補と言えます。
そして、その「運命の1冊」は、すでにあなたの本棚(あるいは電子書籍のアプリの画面)に埋もれている可能性が高いのです。
今すぐ自分の本棚を眺めてください。そこには自分が知りたかったこと、成し遂げたかったこと、なりたい自分を象徴しているタイトルが並んでいるはずです。
「ついつい、同じジャンルの本を買っているなぁ」。そう気づけたなら、あなたは心(潜在意識)から、そのジャンルのノウハウを欲しているということになります。
また、それらの本の中で「この本めちゃくちゃ参考になるな!」と思ったのに、1回しか読んでいない。そんな本はありませんか? それらも立派な「師匠本」候補となります。完コピ読書術を習得すれば、そうした本とより深くつきあえるようになるでしょう。
ただ、ここで注意点。師匠本は、背伸びせず、気軽に読める1冊を「パートナー」に選ぶようにしましょう。
本を読むときに、難しい本を好んで選ぶ人がいます。もちろん、そうした読書のチャレンジを私は否定しません。でもそれが「師匠本」となると話は別です。
「師匠本」での背伸びは絶対やめてください。「師匠本」は毎日を共にする「パートナー」なのですから、途中でつまずくことがまったくない難易度の本を選びましょう。
上に「『師匠本』選び5つの心得」を挙げておきましたので、参考にしてみてください。
それではいよいよ、「師匠本」を探す具体的な手順をお話ししていきます。この「師匠本探しのワーク」は一気に短期に行なわなくてはいけません。ダラダラ数日間かけても効果が下がるだけなので、1時間しっかり時間が取れる休日などに行なうようにしましょう。
【手順1】本棚から本を取り出し、 ジャンルごとの山を作る
「ビジネス・経営」「健康・ダイエット」「小説」など、それぞれのジャンルごとに山を作るように本を積んでいきます。ジャンルをまたぐような本もありますが、だいたいでOKです。
【手順2】それぞれの積んだ山のてっぺんには、参考になった本を置く
本を積むときには、その本を読んだときのことを思い出して、そのジャンルで最も参考になった本が1番上になるように積みましょう。順位を決めかねるときには、「上から2冊目までは最上位」というふうに自分で認識できれば大丈夫です。
【手順3】積んだ量とてっぺんの本を眺めて共通点を探る
各ジャンルの山を眺めてみると、自分の思考のクセがよくわかると思います。1番高い山のてっぺんにある本と、他の山のてっぺんの本を見比べてください。何か共通点はありませんか?
例えば、「断定的な言い切り型が多い」「優しく寄り添ってくれるような雰囲気がある」など。そこにはあなたの潜在意識からのメッセージが詰まっています。
【手順4】一番高い山のてっぺんの本を 「師匠本」にできるか判断する
いよいよ最終工程です。1番高い山のてっぺんにある本を開いてください。ここで確認すべきは、「著者プロフィール」「目次」「はじめに」の3箇所です。
「プロフィール」にあなたとの共通項や、尊敬できるポイントはありましたか? 「目次」や「はじめに」を見て、自分に刺さる項目や「なるほど」は、たくさん見つかりますか? 「そうそう、これこれ」と思えるノウハウが並んでいましたか? これらに7割、8割くらい該当するなと思ったら、「師匠本」として合格です。
「師匠本」を選べたら、完コピ読書術の実践です。これは、次の5段階のステップで行なっていきます。
【STEP1】「なるほどリスト」の作成
師匠本を読んで「なるほど」と思った箇所をエクセルに書き出していきます。パソコンを開ける状態で読書しているなら、本と一緒にパソコンを置いて、該当する文章を、どんどんエクセル(スプレッドシートでもOK)に入力していきましょう。(図2)
その際には、必ず書かれたページ数も一緒に入力します。あとから、詳しく振り返ることができるようにするためです。
このとき、「こんなにたくさん『なるほど』って収集するの? これじゃ全部、書き写してるようなもんじゃないか!」と不安になるときもあると思いますが、まったく問題ありません。なにせ、師匠の脳を自分の脳に移植するのが、完コピ読書術です。遠慮はいりません。渋らず、全部収穫しきってください。
エクセルなら後からいつでも削除できますし、迷っている時間が、むしろもったいない。難しく考えずに、ビビっときたら、どんどん収穫していく。これで大丈夫です。
【STEP2】「なるほど」に ラベルを付けて仕分ける
続いて「ラベル」付けの作業に移ります。収穫した「なるほど」を眺めると、例えば「リーダーシップ」「会議法」「目標設定」など、共通項(分類できる「言葉」)が見えてくると思います。その言葉を「ラベル」として、エクセルの横軸に記載していくのです。
そして各「なるほど」に該当する「ラベル」があったら、フラグを立てます。フラグというのはエクセル用語で、数字の「1」を入力することです。 あとから、抽出(ソート)や集計したりするのに便利なので、必ず半角で「1」と入力してください。
これで、1冊の本から収穫された、あなたに必要なものだけが載っている「なるほどリスト」が出来上がります。
【STEP3】「奥義」の特定
次は、「なるほどリスト」のラベルの中で、それを完コピすることが、すべての師匠ノウハウの吸収につながるような、肝となる「奥義」を特定します。
奥義の特定法は、私の著書『1冊まるごと「完コピ」読書術』に詳述していますが、基本的な流れは、
①書籍の「はじめに」で「ノウハウ」に当たる箇所を(エクセルシートに)抽出する
②①を眺めて重要キーワードをイメージする
③「目次」を眺めて、重要キーワードについて書かれている可能性が高そうな章を特定する
④該当する章の中の「ノウハウ」を(エクセルシートに)抽出 というものになります。
「奥義」は、師匠本の本質に当たるもので、本によって1つの場合もあれば、3つくらいある場合もあります。複数の「奥義」を一気に取り組むのは難しいので、その場合は順番を付けて取り組むようにします。
【STEP4】「滝行」の実行
「奥義」の内容を徹底的になぞり、自分に当てはめて解釈することを私は「滝行」と呼んでいます。文字通り、滝に打たれながら自分を見つめ、雑念を取り払うようなイメージで、自らの思考や行動を矯正するステップです。
「奥義」が今までの自分の価値観や習慣と遠いほど、自らのダメな部分に向き合うことになり、最初「滝行」はつらく、痛みを伴います。しかし現状と照らし合わせて師匠の言葉を解釈し、自分との対話を繰り返していくことで、今の閉塞感を切り開くポイントが徐々に見つけられるようになるのです。
【STEP5】「特訓プログラム」の 構築と実行
最後に「奥義」習得を仕組み化するためのオリジナルの「特訓プログラム」を作成します。師匠本の「奥義」を自分の日常にぴったりフィットさせた形でタスクに落とすためには、ある程度、カスタマイズが必要です。
「奥義」の習得を仕組み化する手法にはいくつかバリエーションがありますが、ここでは、実践しやすいものを2つ紹介します。
【特訓プログラム1】そのまんまトレーニング法
これは「師匠本」に書かれていることを、その通り実践する方法です。
中には、実行する手順を表にしてくれていたり、ワークシートのように書き込むフォーマットを準備してくれている本もあります。その場合は、オリジナルで作成する必要はないので、そのまま素直に実践すればOK。頻度や回数も指定されていれば、その通り実行してください。
最も楽な実践方法ではありますが、大切なことは到達度。しっかり「奥義」が身についているか確認して、「まだだな......」と感じたら、回数や頻度をさらに増やしてみましょう。
【特訓プログラム2】繰り返し数値化法
繰り返し鍛錬することで身に落とすタイプの「奥義」と相性が良いのが、この「繰り返し数値化法」という特訓プログラムです。
漫画『スラムダンク』の主人公の桜木花道は、2万本のシュート練習するときに、ビデオで自らのシュートフォームを確認しました。客観的に自分の特訓を振り返る仕組みを導入したのです。「繰り返し数値化法」もまさにそれ。自身の特訓を客観視するために、完コピ読書術ではエクセルを使用して仕組み化していきます。
「読書に数値化なんて意味あるの?」と思うなかれ。完コピ読書術では避けられないポイントになるので、ぜひマスターしてください。手順は以下の通りです。
①該当する「ラベル」をソートする
②ソートされた「なるほどリスト」をコピーして、別シートに貼り付ける
③実行する予定の日付を横軸に書き込む(何日実施するかは自由だが、いったん10日間と設定すると良い)
④実行した項目に「1」を記入する
⑤日別で実施した合計ノウハウ数と、実施率の数式を入れる
⑥ノウハウ別に10日間の実施数と、実施率の数式を入れる。
文章で説明すると、大変そうに思えるかもしれませんが、やってみたら5分程度で完成します。特に効果を実感できるのは⑤と⑥の作業です。
図5をご覧ください。私の「師匠本」の一つ『書くのがしんどい』(竹村俊助著/PHP研究所)から「なるほどリスト」を作成し、「ネタ探し」のラベルをピックアップした管理表です。
この「繰り返し数値化法」を成功させる秘訣は、期限を決めること。大量のToDoを永遠にこなそうとすると、必ず挫折するからです。例えば「まずは10日間! 1日1回必ず実践」などと、しっかり期間と頻度を決めて取り組みましょう。
他にも「奥義」の習得を仕組み化する手法はいくつかあります。ご興味のある方は、拙著『1冊まるごと「完コピ」読書術』をご覧ください。
* 完コピ読書術を実践しても、「なかなか奥義の習得が進まない」「結果が出ない」......。得たい結果をイメージしたときに、どう自分を観察しても、褒めようとしても、成長実感を持てないときもあるでしょう。
そんなときこそが正念場。踏ん張りどころです。1冊丸ごとを完コピする読書術をせっかく進めてきたのに、そこで投げ出しては元も子もありません。
もしも諦めてしまったら、きっとまた今までのようにたくさんの本を流浪するように多読し、都合の良いところだけを実践する読書に逆戻りしてしまいます。「なりたい自分」への最短ルートを行くために、ぜひご自身の人生に、この読書術をご活用ください。
更新:02月06日 00:05