「思考術」に関する本は、読む人に様々な気づきを授け、ビジネスパーソンとして成長させてくれるもの。しかし、あまりに関連書籍の数が多すぎてどれをどう読んだら、と悩む方も多いだろう。
『思考法図鑑』を著した小野義直氏によれば、思考本にはその内容を吸収するための「読み方」がしっかりあるという。詳しく話をうかがった。
※本稿は、『THE21』2022年1月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。
世の中に出回る様々な思考法は、正しく使えばどれもとても便利なもの。しかし当然、それが自動的に問題を解決してくれるわけではありません。解決するのは常に「自分」であって、思考法はそのためのヒント。
あくまで自分が問題を解決するという主体性がなければ、思考法は機能してくれません。よく耳にする「思考法の本を読んではみたけど、結局どう使えばいいのかわからなかった」という声も、ただ漠然と読んでしまったことが原因にあることが多いものです。
ではどうするかと言えば、ぜひ読む前に「問い」を明確にしてみてください。思考法を知りたいとき、そこには何か解決したい課題があるはずです。頭の中に漠然とあるそれを、しっかり言葉にしてみましょう。
その過程を経ずにただ「ビビッとくる部分」を探しても、何に、どうやって応用すればいいかがはっきりしない訳ですから、そうそう見つけることはできません。
逆にこの「問い」さえはっきりしていれば、少々流し読みをしても「お、ここは役に立ちそうだな」と目につくようになるものです。
それと、もう一つよく陥りがちなミスが、「思考本を読み込んでしまう」というもの。
確かに私たちは、昔から「しっかり読み解く」ことの大切さを教えられてきましたが、それはあくまで小説や論説文などの話です。思考法はあくまでヒントなのですから、細部を読み込むより、目の前の課題に必要な要素を着実に拾っていくほうがずっと有意義でしょう。そのためにも、先ほど出た「問いの設定」が欠かせません。
「じっくり読む」と言うと聞こえはいいですが、その本を通じて解決すべきことがはっきりしていないから、そうせざるを得ないのではないでしょうか。これでは本末転倒になってしまいます。「問い」という読む前提をはっきりさせるだけで、格段に読書の効果がアップするのです。
では、具体的にどんな問いを設定すればいいのか。それはズバリ、「何を、なぜ、どうやって」=What・Why・Howの3点です。その本を通じて何を知りたいのか(What)、なぜ知りたいのか(Why①)、具体的にどうすればいいのか(How)。
ここに、なぜそうするのか(Why②)まで加えた4点が、最も基本的な「問い」になります。これさえ言語化・明文化することができれば、残りの枝葉の部分は、必要に応じて自力で付け足すことも容易でしょう。
本は紙幅が限られていますから、個々の事情を一々場合分けできるはずがありません。そこに書かれた手法は、最も端的な形に抽象化されていることがほとんど。だからこそ、これらの質問がカギになるのです。
これらがはっきりして初めて、本に書かれた抽象的な方法論を、脳内で自分のリアルな立ち位置に重ね合わせ、相性の良いやり方か判別することができるようになります。
例えば、よく「色々読んでみたけど、どれも言っていることが違う」と困惑する方がいます。
ですが、直面している課題の性質や本人の性格から、合うやり方、合わないやり方があるのは当たり前。むしろ、まったく違うことを言っている本を何冊も読んで自分に合うやり方をピックアップできる主体性こそ、思考本を読む際に必要なことなのです。
それに、こうした課題意識がはっきりしていれば、最初から「自分の抱える課題にフィットしそう」な本を選ぶこともできるはず。「問い」を明確にした途端に何でも読み漁るのではなく、先に「大全」系の本に触れてみるのがお勧めです。
問いさえ言葉にできていれば、それをパラパラするうちに「この思考法はよさそうだな」とアタリがつくはず。そうなれば、それに類する本をまとめ買いして、より自分の課題に合うように微調整・カスタマイズすることもできますね。
手前味噌ですが、私の書いた『思考法図鑑60』などは、まさにそのために作った本。ぜひご活用いただければと思います。最近ではYouTubeにも有名思考本の解説動画がいくつもありますから、それを視聴して概形をつかんでから読むのも良いでしょう。
更新:11月22日 00:05