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白湯では治らない冷え性...専門家が「温水よりも常温水」を推奨する科学的背景

2025年12月16日 公開

松本光平(治療家)、監修:清水智之(あいばクリニック院長)

免疫力アップの方法

先の新型コロナウイルスの世界的な大流行(パンデミック)を経て、私たちは免疫力の重要性を改めて認識しました。治療家である松本光平さんは、実は「良質な水と塩」を摂るだけで、免疫力は大きく向上すると解説します。

松本さんの著書『「水と塩」でできる究極の免疫セルフケア』から、免疫力向上に直結する冷え性やリンパの流れを改善する具体的な習慣をご紹介します。

※本稿は、松本光平(著), 清水智之(監修)『「水と塩」でできる究極の免疫セルフケア』(三笠書房)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

冷え性には温かい白湯よりも「常温水」を

「視床下部にアプローチすることで、冷え性の改善効果が期待できる」このような「常温のミネラル水」の効能について、詳しくお話しさせてください。

まず、科学的な裏付けをご紹介しておきましょう。ドイツの栄養研究の権威、M.ボッシュマン博士らの研究では「37℃の温水よりも常温水のほうがエネルギーの消費をより強く促す」という事実がわかっています。常温水のほうが温水より「体温を自分で上げる働き」を回復させることができるのです。

そもそも「常温」とは何度くらいかご存じでしょうか。「日本薬局方」(厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定めた医薬品の規格基準書)によると、10℃以下の水が「冷水」、15~25℃が「常温」とされています。冷たすぎることのない、ちょうどいい温度。ですので、ぜひ挑戦してみてほしいと思います。

実際、冷え性の患者さんたち10人に常温のミネラル水を継続的にとってもらったところ、10人中7人に冷え性の改善が見られました(平均4か月間継続)。さらに、施術と筋トレをしてもらい神経伝達を良くした結果、「ホルモンバランスの乱れを指摘されていたが、整った」「肌につやが出た」という報告も7人から受けました(平均3か月間継続)。長く続けた人ほど、冷え性改善の効果は顕著でした。

ここまで書いても......、「冷え性」について「深刻な病気ではない」ととらえている人がいるかもしれません。しかし、冷え性を軽く見すぎることは危険です。

冷え性の場合、手足の冷え以外に、肩コリや関節痛、便秘、下痢、膀胱炎、不眠などを発症しやすくなります。また冷え性を放置すると「低体温」(深部体温が35℃以下になる状態)に移行しがちです。

低体温になると免疫は急激に下がり、震えや意識障害、錯乱などが現れ、最終的には呼吸停止などへと至ります。

また、自律神経失調症の発症リスクも高まります(この病気も、視床下部にまつわる病気だからです)。常温のミネラル水で、視床下部が正常化するよう、働きかけていきましょう。

 

「肋骨体操」でリンパを巡らせる

リンパ液(リンパ)には、体内の老廃物などを回収して排出する役割があります。そうやってウイルスや病原菌などに抵抗してくれているのです。

そのリンパが流れているのが「リンパ管」。血管と同じく、流れをスムーズに保つことが理想的です。とはいえ、リンパの流れを改善するのはなかなか難しいこと。なぜなら、リンパの流れは血液の流れ(血流)とは、異なる経路だからです。

たとえば、運動によって心臓や筋肉を動かせば、血液の流れを良くする効果が見込めます。しかし、リンパの流れは血流とは「別物」。だから、別の手段でリンパの循環を良くするアプローチが必要なのです。そこでおすすめしたいのが、「肋骨体操」です。

「肋骨体操」ではリンパの流れを考えるうえで、非常に大事な「横隔膜」に効率よく働きかけることができます。

海外のオステオパシー(手技によって自然治癒力を導き、健康を回復する治療法)の治療家は、修業時に「困ったときには横隔膜を見なさい」と指導されます。なぜなら横隔膜は、リンパの排液、呼吸器の働き、腰の動きに密接に関わっているから。

そもそも横隔膜とは、胸部と腹部を分ける膜です。薄い筋肉の層が、まるで布を織るように広がっています。横隔膜で分けられた上部には、肺や心臓、下部には胃や腸があります。横隔膜そのものは筋肉でできているので、他の筋肉と同様、緊張したり、ゆるんだりします。

体を健やかに保つためには、緊張と弛緩をうまく繰り返すことが大切です。ところが、姿勢が悪かったりすると、横隔膜がゆるみにくくなってくることがあります。すると、胸が詰まった感じを覚えるようになります。そのような横隔膜の緊張を解くのが、この「肋骨体操」です。

横隔膜の筋肉のこわばりがゆるむと、筋肉に圧迫されていた周辺のリンパが開放され、流れが良くなります。リンパの排出も進みます(もちろん血管も開放されるので血流も改善、免疫機能も向上します)。

また、横隔膜は呼吸器や腰の動きにも密接に関わります。つまり横隔膜は、ほかの筋肉と同様「軽やかに動く状態」に保つことが理想的なのです。では具体的に、どうすればいいのでしょうか?

「肋骨のきわに沿って、両手の親指以外の4本の指を当て、自重(自分の重み)をかける」という方法が有効です。「お腹に指を食い込ませること」に抵抗がある人も、自重をかけるというスタイルならスムーズに行えることでしょう。また、この肋骨体操を習慣化することで、横隔膜の可動域が広がり、腰痛が予防・改善され、腕が上がりやすくなるなど、いいことずくめです。

 

【「肋骨体操」の行い方】

「肋骨体操」の行い方

◆前傾バージョン

①両手の親指以外の4本の指を、肋骨のきわに沿って当てる
②上体を前に少しずつ倒しながら、4本の指を肋骨のきわに押し込んでいく
③①~②を1セットとして、10~20セット行う

◆左右に倒すバージョン

①両手の親指以外の4本の指を、肋骨のきわに沿って当てる
② 4本の指を肋骨のきわに押し当てたまま、上体を右側に10秒間倒す。左側にも10秒間倒す
③①~②を1セットとして、10~20セット行う

※ 「前傾バージョン」「左右に倒すバージョン」、いずれか気持ち良くできるほうだけを行ってもかまいません。
※座位でも立位でも行えますが、椅子に座って行うと自重をかけやすくなります。
※肋骨を左右に広げたり、もみほぐす必要はありません。

プロフィール

松本光平(まつもと・こうへい)

治療家、柔道整復師、整体師、カイロプラクター、オステオパスD.O.

1980年島根県生まれ。京都産業大学外国語学部卒業。大学在学中にお笑い芸人を志して、吉本興業NSC25期生として5年間在籍。同期生は、ジャルジャル、銀シャリなど。しかし、舞台と過労のため椎間板ヘルニアを患い歩けなくなり、整体で改善したことで自らも治療家の道に入り、整体院ボディーケア松本を開院。独自の手法である、整体・癒楽心体療法を開発、セルフケアのアプローチが評判になる。特に、血液、リンパ液に次ぐ「第3の体液」と呼ばれる脳脊髄液に注目、免疫を高めるメソッドとして確立し、さまざまな体の不調に対し大きな治療効果を上げている。プロスポーツ選手、芸能人など、多数の著名人クライアントからの信頼も厚い。元関西医療大学準研究員、一般社団法人日本統合手技協会代表理事。

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