会社員は、1日の労働時間を濃く働いても薄く働いても報酬は同じ。作業を薄めて働いてしまう「希釈グセ」がついている人も多くいる。時間と心の余裕を保ちながら、圧倒的なパフォーマンスを維持するにはどうしたら良いのか。
「メルマガ、毎日発行18年」「YouTube、毎日更新10年」と驚異的なアウトプットを継続している精神科医の樺沢紫苑氏が、仕事の効率を高めるための運動について紹介する。(取材・構成:林加愛)
※本稿は、『THE21』2023年7月号特集「『時間がない!』から抜け出せない本当の理由」より、内容を一部抜粋・編集したものです。
運動には、「攻めと守り」の2種類があります。このうち「守りの運動」は、病気を防ぐための運動。疲れが溜まっている方は、ここから始めましょう。
第一歩は、座りすぎをやめること。1時間座り続けると、余命が22分間縮むという研究があります。血液が鬱滞し、脳の血流も下がってパフォーマンスも下がります。ときどき立ち上がるか、立ってできる仕事は立って行ないましょう。
加えてお勧めなのが、「朝散歩」の習慣を持つことです。背筋を伸ばし、やや速足で5~15分。これを習慣づけるだけで、寿命が5年延びると言われています。
また、歩いているときは記憶力や発想力が高まります。散歩中、耳からインプットできる勉強をしたり、企画の構想を練ったりするのも良いですね。
朝散歩には、神経伝達物質「セロトニン」を活性化させる効果も。セロトニンは気持ちを落ち着かせる他、切り替え力の源になります。
セロトニンの分泌が十分な人は、仕事にすぐ着手できたり、ズルズル続けず切り上げられたり、こまめに休憩を入れたり、といったことが上手です。しかし脳が疲れると、セロトニンが不足し、切り替え下手に。「小さな失敗をいつまでも気にする」など、メンタル不調のリスクも上がります。
朝散歩で、そうした不具合を予防・改善しましょう。ただし、前かがみで歩くとセロトニンは活性化しません。気持ちが沈みがちな人こそうつむかず、背筋を伸ばして歩きましょう。
もう一方の「攻めの運動」は、ジョギングなど、発汗を伴う中強度の有酸素運動です。こちらの目的は、脳の活性化です。10~15分で、ドーパミンやノルアドレナリンなど、集中力を高める物質が出ます。45~60分行なえば、朝起きた直後と同じくらいの集中力が戻ってきます。
また、30分程度の「攻めの運動」を週に2~3回、数カ月継続すると、集中力の「基礎体力」が上がります。つまり、疲れづらい脳になるのです。
さらに嬉しいことに、「頭が良くなる」効果も。30分以上の有酸素運動は、BDNF(脳由来神経栄養因子)という物質の分泌を促します。BDNFには脳の神経回路を強化する作用があり、別名「脳の肥料」とも呼ばれます。健康になって頭脳も明晰になるのですから、運動しない手はありません。
他方、注意点もあります。一つは、運動するタイミング。夜に運動すると交感神経が優位になり、寝つきが悪くなります。遅くとも、就寝より2時間前に済ませましょう。
もう一つは運動の長さです。2時間以上運動すると、疲れすぎて集中力は逆に落ちます。集中力を高めるための運動は、長時間行なう必要はありません。
更新:11月21日 00:05