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“座りすぎ”が脳の動きを鈍らせる...テキパキ仕事をこなすための朝習慣

2023年06月05日 公開

樺沢紫苑(精神科医)

樺沢紫苑 ウォーキング

会社員は、1日の労働時間を濃く働いても薄く働いても報酬は同じ。作業を薄めて働いてしまう「希釈グセ」がついている人も多くいる。時間と心の余裕を保ちながら、圧倒的なパフォーマンスを維持するにはどうしたら良いのか。

「メルマガ、毎日発行18年」「YouTube、毎日更新10年」と驚異的なアウトプットを継続している精神科医の樺沢紫苑氏が、仕事の効率を高めるための運動について紹介する。(取材・構成:林加愛)

※本稿は、『THE21』2023年7月号特集「『時間がない!』から抜け出せない本当の理由」より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

「朝散歩」で発想力もメンタルもアップ

運動には、「攻めと守り」の2種類があります。このうち「守りの運動」は、病気を防ぐための運動。疲れが溜まっている方は、ここから始めましょう。

第一歩は、座りすぎをやめること。1時間座り続けると、余命が22分間縮むという研究があります。血液が鬱滞し、脳の血流も下がってパフォーマンスも下がります。ときどき立ち上がるか、立ってできる仕事は立って行ないましょう。

加えてお勧めなのが、「朝散歩」の習慣を持つことです。背筋を伸ばし、やや速足で5~15分。これを習慣づけるだけで、寿命が5年延びると言われています。

また、歩いているときは記憶力や発想力が高まります。散歩中、耳からインプットできる勉強をしたり、企画の構想を練ったりするのも良いですね。

朝散歩には、神経伝達物質「セロトニン」を活性化させる効果も。セロトニンは気持ちを落ち着かせる他、切り替え力の源になります。

セロトニンの分泌が十分な人は、仕事にすぐ着手できたり、ズルズル続けず切り上げられたり、こまめに休憩を入れたり、といったことが上手です。しかし脳が疲れると、セロトニンが不足し、切り替え下手に。「小さな失敗をいつまでも気にする」など、メンタル不調のリスクも上がります。

朝散歩で、そうした不具合を予防・改善しましょう。ただし、前かがみで歩くとセロトニンは活性化しません。気持ちが沈みがちな人こそうつむかず、背筋を伸ばして歩きましょう。

 

30分の有酸素運動で「疲れづらい脳」になる!

もう一方の「攻めの運動」は、ジョギングなど、発汗を伴う中強度の有酸素運動です。こちらの目的は、脳の活性化です。10~15分で、ドーパミンやノルアドレナリンなど、集中力を高める物質が出ます。45~60分行なえば、朝起きた直後と同じくらいの集中力が戻ってきます。

また、30分程度の「攻めの運動」を週に2~3回、数カ月継続すると、集中力の「基礎体力」が上がります。つまり、疲れづらい脳になるのです。

さらに嬉しいことに、「頭が良くなる」効果も。30分以上の有酸素運動は、BDNF(脳由来神経栄養因子)という物質の分泌を促します。BDNFには脳の神経回路を強化する作用があり、別名「脳の肥料」とも呼ばれます。健康になって頭脳も明晰になるのですから、運動しない手はありません。

他方、注意点もあります。一つは、運動するタイミング。夜に運動すると交感神経が優位になり、寝つきが悪くなります。遅くとも、就寝より2時間前に済ませましょう。

もう一つは運動の長さです。2時間以上運動すると、疲れすぎて集中力は逆に落ちます。集中力を高めるための運動は、長時間行なう必要はありません。

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著者紹介

樺沢紫苑(かばさわ・しおん)

精神科医

1965年札幌生まれ。91年札幌医科大学医学部卒。2004年から米イリノイ大学に3年間留学。帰国後、東京にて樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通じたメンタル疾患の予防」をビジョンとし、累計フォロワー80万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報を発信。シリーズ累計90万部を突破した『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)、近刊『マンガでわかる『神・時間術』』(KADOKAWA)など40冊以上、累計発行部数230万部超の著書がある。

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