2025年12月18日 公開
天空の森
一般には公表されず、富裕層だけに提供されるサービスがある。ハイエンドクラスのクレジットカードを所有する富裕層限定のイベントとはどのような内容なのか。美食と贅沢を知り尽くし、鑑識眼を備えた富裕層の心をつかむサービスとは。株式会社クレディセゾンで富裕層ビジネスを担当し、1000人以上の富裕層と交流してきた岸田氏が、鹿児島県のリゾート「天空の森」を舞台として開催し、好評を得たイベントの事例を紹介する。
※本稿は、岸田大輔著『「新」富裕層ビジネスの教科書1000人の富裕層から学んだ秘密の営業術とマーケティング術』(集英社インターナショナル)より一部抜粋・編集したものです。
私は2002年に株式会社クレディセゾンに入社し、クレジットカードの商品開発や海外事業部門を経て、2019年10月から富裕層ビジネスを立ち上げました。さまざまな苦労と失敗を繰り返しながら、2022年9月にブラックランクのカードである「セゾンダイヤモンド・アメリカン・エキスプレス(R)・カード」をリリースし、なんとか富裕層ビジネスの形を作ることができました。
ここでは、実際に私たちがお客様にどのようなサービスを提供しているのか、参考事例としてご紹介します。
チーム全員で考え、関係者に想いを伝え、不可能を可能にしながら進めてきたプロジェクトです。可能な限り、開発当時のことを思い出しながら「誰に」「何を」提供してきたのか、思考プロセスをご紹介します。

これは鹿児島県霧島市のリゾート「天空の森」を舞台に開催したイベントです。
東京ドーム13個分の広大な敷地に5棟だけの客室という非日常的な空間で、伊勢志摩の英虞湾に浮かぶ鮨オーベルジュ「MOKU ISESHIMA」の親方、堀勇一さんによるシェフズテーブルと、ヴァイオリニスト寺下真理子さんによるプライベートコンサートを行うというもの。
さらに、天空の森のオーナーである田島健夫さんが提唱している「3D観光」を実現し、空港からヘリコプターでの遊覧体験も組み込みました。
そのまま空からチェックインすることで、霧島の風土をまるごと堪能できる新しい旅の提案です。
この企画の起点になったのは二人の富裕層との会話です。ある方と旅や食の話で盛り上がっていたところ「「天空の森」というリゾートを知っていますか?行ってみたい場所なのです」という話になりました。
「あらゆるリゾートを体験し尽くしている方が行きたい場所ってどんなところだろう」と気になり、いろいろと調べてみたら凄いスケールのリゾートでした。
私は天空の森に非常に興味を持ち、オンラインミーティングの機会を設けていただきました。そこで、私の富裕層ビジネスへの想いを伝えたところオーナーの田島さんと意気投合し、現地を視察させてもらうことになったのです。
対面で会う田島さんは、とても魅力的な方で「リゾートとは人間性回復産業である」という言葉はいまでも印象に残っています。
これまでの経緯などをお互いにいろいろと話していたら、「その土地を一番実感できるのがヘリコプターからの視点です。ですから、ヘリポートも完備しました」など、ともかく話のスケールが凄かったことを覚えています。
また別の方とお話をしていたとき、最初は「美味しいお鮨を食べたい」という話で、もう日本中の名店を食べ尽くしているような方に何を提案したら喜んでいただけるか考えていました。
その流れで、趣味の話からその方がヘリコプターを持っていることがわかりました。しかも、ご自身で操縦されるというから驚きです。ただ、飛行場へ飛ぶことが多いという話を聞いたとき、「天空の森に着陸できたら喜ぶかな?」と、発想が繋がったのです。

そこでまず、田島さんに「天空の森に自家用ヘリを自ら操縦してチェックインすることは可能ですか?」と聞いてみたところ「それこそ私の夢です!」と大興奮。そこで、ヘリコプターのオーナーにこのプランを話すと「ぜひ!家族で行きたいです」となりました。
さらに、同じようにヘリコプターで着陸できるリゾートで思いついたのが伊勢志摩の国立公園にあるオーベルジュ「MOKU ISESHIMA」。
親方の堀さんが握る鮨は一級品ですし、考え方や価値観も近いと思って相談したところ「面白そうですね!」と快諾していただけました。
ある程度パッケージがまとまったタイミングで、「天空の森」を教えてくださった方にお礼かたがたご報告をすると、「あそこで堀さんのお鮨が食べられるなんて凄い!私も行きたいです!」と言っていただけたのです。
その方は著名なワイナリー「ケンゾーエステート」のサービスもご利用いただいていたので、お酒のラインアップに日本酒だけでなくワインもお楽しみいただこうというアイデアが生まれます。
詳細を打ち合わせるために改めて天空の森を訪れると、圧倒的な大自然と静寂に感動します。しかし滞在と料理、お酒だけでは何か物足りないと感じました。せっかくのイベントですから、何かハイライトになるような体験をお届けしたい。
そこで思いついたのが、ヴァイオリンの演奏です。たった数組のために、大自然の中でストラディバリウスが鳴り響く。想像しただけで鳥肌が立ったのです。
そこで、ヴァイオリニストの寺下真理子氏とヴァイオリン職人のカポラリ真亮氏に依頼し、プライベートコンサートが実現しました。1687年製の「ストラディバリウス」はもちろん、新作からモダンイタリアン、オールドイタリアンの聴き比べという贅沢な体験に、ゲストも私たちも思い出に残るイベントとなりました。
更新:12月21日 00:05