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エリートの親ほど「子どものスマホ使用」に厳しい テクノロジーとの理想的な距離感とは

2026年05月15日 公開

河原千賀(アメリカ在住ジャーナリスト)

スマホ断ち

見た瞬間にドキっとさせる、スマホの赤い通知。実はそれは、テクノロジー企業が仕組んだ巧妙な罠であるかもしれない...。あの世界的CEOたちが、なぜ自分の子どもにテクノロジーを使わせなかったのか? 理由を知れば、きっとスマホとの付き合い方を見直したくなるはずだ。書籍『グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか』より解説する。

※本稿は『グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか』(PHPビジネス新書)より抜粋・編集を加えたものです。

 

着信を示す「!」のアイコンはなぜ赤なのか

テクノロジー企業の開発者は、ユーザーに商品やサービスを使い続けてもらえるように、最新の心理学を研究している。そのことは、米国上院商業委員会での証言でも明らかにされている。

スマホの画面を見てほしい。

メッセージが入っていることを知らせるアイコンに赤色が使われているのは、赤が身体的に興奮を促す色だからだ。着信告知の赤いアイコンにドキッと反応する人は、多いだろう。

「いいね」やフォロアー数が表示されるのも、「人から受け入れられたい」という人間の基本欲求を満たすためだ。

あらゆるSNSが、もっとフォロワー数を増やしたい、「いいね」の数を増やしたい、という「目標達成をしたい欲求」も満たすように設計されている。

ユーチューブは、知らない間に何時間も動画を見続けられるように、「あなたにおすすめの動画」が自動再生される。ソーシャルフィードをスクロールしてなかなか底にたどり着かないのも、注がれ続けるビールを飲み続けるのと同じメカニズムだ。終わりがないのだ。

パブロフの犬の実験を知っている人は多いだろう。犬に餌を与えるときにベルを鳴らす。その行為を続けると、餌がなくてもベルが鳴れば、犬はよだれをたらす、という実験だ。

スマホの着信音にも同じ効果が使われている。あなたは、着信音が鳴ると同時にスマホを確認していないだろうか?

もうひとつ有名なネズミを使った実験がある。確実に餌が出てくる装置では、餌が出なくなると、ネズミはすぐに諦めてレバーを押さなくなる。一方、たまにしか餌が出ない装置では、餌が出なくてもレバーを押し続けた。

毎回報酬があると飽きやすくなるが、たまにしか報酬が得られないと、その報酬を得るまで諦めずに、頑張る効果が見られたのだ。

この心理学的効果を利用して、テック企業は「せずにはいられない」衝動的な行動を促す。スロットマシーンも当たらないことがほとんどなのだが、たまに当たるからやめられなくなる。

不規則な確率で報酬が与えられる環境下では、「幸せホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質のドーパミンが発生する。SNSをついついチェックしてしまうのも、不定期な情報のアップデートを見つけることでドーパミンが放出されるからではないだろうか。

 

開発者ですら、子どもにテクノロジーを使わせない

このようなテクノロジー企業の目論見を、知り尽くしているはずのビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズが、わが子のテクノロジー使用を厳しく監理していたのも納得できる。

ツイッター(現X)の創設者のひとりエヴァン・ウィリアムズも、子どもに本は与えても、iPadは与えなかったことが知られている。

シリコンバレーにある企業のエグゼクティブたちは、自分の子どもをシュタイナー学校やモンテッソーリ学校に入れたがるのも興味深い。

シュタイナー教育は子どもにテクノロジーを与えず、テレビも見せない。手を使い、体験から学ぶ教育を重視している。

モンテッソーリ教育も、子どもの創造性を育む教育として知られている。コンピュータが創造性を阻害し、身体の動きや人との交わり、そして注意力を長く保つことに悪影響を及ぼすと懸念しているからだ。

テクノロジーは間違いなく、私たちの生活を豊かにしてくれる。仕事の効率も確実に向上した。しかし、テクノロジーに翻弄され、依存してしまっては、生活を豊かにするどころか、大切な人生を台無しにしてしまう。

おそらく、5年後も10年後も、テクノロジーの弊害に関する文献が発表されるだろう。文明の利器に身をゆだね続けるのか、勇気をもって距離を置くか。一日でも早く後者を選択するべきではないか。

 

「スマホ断捨離」7つの習慣

これから習得するのは、テクノロジーと上手に付き合い、冷静な判断が可能になる「自分軸」を鍛えていく習慣だ。私はこれを「デジタルマインドフルネス」と定義したい。

心配しなくていい。二度とスマホが見られなくなるようなことはない。

スマホを手放すのではなく、「インテンション(意図)」を持って「アテンション(注意)」を払いながらスマホを使う。スマホで暇を埋めてしまう主体性の欠けた生活から、「やりたいこと」「本当に大切なこと」を優先させる生活へ変えていく。

暇になるとついスマホを手にして、無駄な時間を過ごしてしまうなら、そうならないような「仕組み」をつくればいい。ダイエットをしようと思えば厳選した食品だけを冷蔵庫に入れ、身近にジャンクフードを置かず、つい食べてしまう誘惑を断ち切るのが手っ取り早い。同じような工夫が必要だ。

たとえば、次のようなことを実践してみてほしい。

 

1. アプリを使って、使用時間を監理する
毎日、スマホを見ている時間を把握しよう。あなたが思っている以上に、スマホを使っているかもしれない。

2. 着信音をオフにする
着信音が鳴るとスマホをチェックする悪習慣を断ち切ろう。「昼休みと夕方だけ」など一日のうちでチェックする時間を数回に絞る。

3. ソーシャルメディアをログインしたままにしない
SNSを使わないときはログアウトしよう。閲覧時にひと手間かけることで、暇なときについチェックする悪習慣を断ち切ることができる。アプリを使うたびに、ダウンロードすればさらに手間になる。

4. 必要のない時間に、スマホを持ち歩かない
玄関に鍵を置いておくように、スマホを触れないときは所定の場所に保管する。

5. スマホを時計として使わない
時間をチェックするつもりが、アプリ通知に気づいてメッセージを読んでいた......なんて経験はないだろうか? 腕時計や目覚まし時計を使う習慣があれば解決するはずだ。

6. アプリの通知設定をカスタマイズする
アプリごとに、通知の有無、バイブレシーション、音をカスタマイズしておこう(私は電話の着信音を"コオロギの鳴き声"に設定している)。

7. 必要ないメールマガジンの配信を解除する
メールの削除は時間がかかるので、配信解除でOk。

 

このように些細なことでも「スマホ断捨離」をすれば、時間もエネルギーも節約でき、その時間を本当に大切なことだけに使えるようになる。いまある時間を「意識的」に過ごすことで、リフレッシュして、仕事と私生活の充実につながるはずだ。

 

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