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議論の末に「誤った判断」をしてしまったときに、リーダーがとるべき態度

2025年05月12日 公開

相原秀哉([株]ビジネスウォリアーズ 代表取締役)

意思決定

「メンバーが自分の言いたいことを言い合うだけで、結局何も決まらなかった......」。あなたのチームの会議は、そんな残念なことになっていないだろうか。参加者の時間・労力・人件費といった貴重なリソースを投じている会議。そこでしっかり意思決定し、結論を出すことはリーダーの重要な役割だ。

これまでに社内外合わせて3000を超える会議に出席した経験を持つ相原秀哉氏に、リーダーが意思決定の場で果たすべき役割について解説してもらった。(取材・構成:辻由美子)

※本稿は、『THE21』2025年5月号特集[ムダに迷わない「意思決定術」]より、内容を一部抜粋・再編集したものです。

 

腹をくくることがリーダーの最大の役割

結論を可視化する

議論がループしてしまう要因に、判断が必要なところでリーダーが判断できずに、延々と議論を続けてしまうことが挙げられます。

ここで一番避けたいのは、完璧な結論を出そうとして延々と議論することです。繰り返しますが、そもそも完璧な解はありませんし、そんなことをしていてはビジネスチャンスを逃す可能性も高くなります。会議の目的が意思決定にあるなら、その会議で「何らかの結論」が出せるようリーダーが方向性を導く必要があります。

ただ、意思決定のあとには理由の説明が求められることも多いもの。完璧なデータに基づいて論理的に説明できればいいのですが、そうしたケースは稀でしょう。また、仮に完璧なシミュレーションをつくり、完璧なデータを取ってきても、100%うまくいくことはあり得ません。なぜなら過去のデータは集められても、未来のデータは集められないからです。

ビジネス環境は常に変化しており、半年後、1年後のことでもその決定が正しいかどうかはわかりません。そのため、意思決定すべき場面でも決められずに、議論を堂々巡りさせてしまうリーダーが多いのです。

しかし、議論を尽くしても決められないとき、結論はリーダーに任せられます。どこで腹をくくるか、それはリーダーの覚悟の問題と言ってもいいでしょう。そもそも意思決定とは、リスクを受け入れて前に進むか、リスクを回避してとどまるか、すなわち「やるか」「やらないか」の二択しかありません。

「やる」のであれば、致命的なダメージを負わないようにプランB、プランCも考えておく必要があります。例えば新商品の販売などでは、期間や規模を抑えて小出しに市場投入し、検証を繰り返して次の段階に進めるなど、複数のプランを考えておきましょう。

また「やらない」のなら、やらない理由を、予測されるデータで提示する必要があります。それでも未来は予測不能ですから、これが100%ベストな解とは言えません。

どう決めるのか、最後の意思決定はリーダーが腹をくくって行ない、その責任は取るという姿勢を示すことです。

なお、会議で決定した内容は、会議の終盤の時間を使って、紙1枚にまとめて可視化しておくことをお勧めします。そうすることでメンバーの共通認識がつくられ、また、議事録をわざわざ作成して、あとで配るという手間もなくなります。

 

意思決定を誤った際のリーダーのあり方

議論を尽くして検討し、メンバーの納得感ある解を選び、最後はリーダーが腹をくくって行なった意思決定でも、結果として誤ることはあります。その決定は間違いでした、という結果が出た際に、リーダーはどんな態度を取るべきでしょうか。

大事なのは、自分の間違いを潔く認めることです。人間ですから、誰でも間違いはあります。言い訳はせず自分の判断ミスを認めたうえで、なぜそれが起きたかという検証をすることが重要です。

よくあるのは、失敗の検証をろくにせずに、すぐ次へと進んでしまうことです。ネガティブなミスや失敗をいつまでも引きずりたくないという気持ちはわかりますが、であればなおのこと、同じ過ちを繰り返さないためにも、なぜ失敗したのかという検証はしっかりやりましょう。

例えば新商品を出すうえで、「お客さんのニーズは考えた」「競合他社に勝てる戦略も考えた」「仕入れ先とのやりとりも成立していた」「社内のリソースも十分だった」のように、万全な体制で臨んだつもりでも、結果が出ないことはあります。

それはもしかしたら「他産業からの参入は考えていなかった」からかもしれません。いずれにしても、失敗の要因が検証できたら、次回の意思決定からは「他産業からの参入を想定して戦略を立てる」というところまで進めます。

ここまでして初めて、誤りを次に活かせます。どこを誤り、それを今後どう活かすかを整理して示すことが、意思決定を誤った際にリーダーがなすべきことでしょう。

以上、説明してきたように、リーダーには、会議のための準備、論点整理と可視化に加えて、最終的には腹をくくって意思決定する覚悟と、誤りを潔く認めて次に進む推進力まで様々な能力が要求されています。

それを苦難と取るかやりがいと取るかはあなた次第かもしれません。それでも会議の運用の仕方一つで、組織は今以上に力を発揮するようになります。皆さんの明日からの会議でぜひご活用ください。

 

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