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SNSでデマを見抜けず拡散...「自分で考えられない人」がハマる落とし穴

服部真和(行政書士)

搾取ビジネスの被害者にならないためには

SNSで拡散される情報を信用したり、「みんなやってるから」「〇〇さんが言ってたから」と安易に判断していいものでしょうか? 実は、それは危険信号かもしれません。搾取ビジネスの被害者にならないために注意すべきことについて、行政書士の服部真和氏による書籍『できる社長のお金の守り方』より解説します。

※本稿は、服部真和著『できる社長のお金の守り方』(秀和システム)より、内容を一部抜粋・編集したものです

 

数や肩書に騙されやすい「ネット弁慶」

知識、情報、数字に、たいした価値などありません。肩書や人脈などについても同様です。

しかし人間は、多くの場合「知らないこと」を恐れ、また「何もないこと」を恐れる傾向にあります。その結果、とにかくたくさんの知識や情報、人とのつながりを求め、そして自分が何者であるかを築きたくなるのです。

このような状態にあることを、認識しているうちはいいのですが、それが当たり前になり、意識から薄れると「わかったつもり、できるつもり」の状態に陥ります。つまり、膨大な情報を得られ、好きなだけ思い思いの肩書を持つことができ、多くの人とつながれるインターネットという場は、人を不必要に尊大にしてしまいます。

いわゆる「ネット弁慶」というやつです。

本来、世の中のことなんて「知れば知るほど、わからなくなる」のが当たり前で、知識や情報をたくさん得るほど謙虚さが増していくものです。肩書を得れば得るほど、自らの器量とのギャップに悩み、人とつながればつながるほど、限られた人との深いつながりの大切さを感じるものです。

それが、ことインターネット上では、厳しい現実から解放され、尊大にふるまうことが容易となります。

承認欲求というのは誰もが持つものですし、認められるためにがんばることができるのも事実です。しかし、インターネット上で簡単に得られる(かりそめの)承認の虜になると危険です。価値の判断基準が「外」に移り「周囲から自分がどう見られているか」「どう思われているか」を、過剰に意識することになるからです。

それが「知らないこと」や「何もないこと」を恐れる状態につながります。

こうなると、きちんと精査することもなく、やみくもに知識や情報を集め、フォロワー数や肩書、著名人とのつながりなどが重要なことのように思えてしまうのです。

入手した情報や知識を、意味あるものにするためには、それぞれの情報や知識を精査し、関連性や背景を熟考する必要があります。

もう二度と、表面的な知識や、数字、肩書を背景にした「不確かな情報」や「あおり」に振り回されないようにしましょう。

 

「みんなやっている」の「みんな」は思い込み

日常で得られる承認には、大きく分けて2種類あります。

一つは、努力や研鑽を積み重ねた上で生み出される成果や、ほかに類を見ない希少性が認められて得られる承認です。もう一つは、場の空気などを敏感に察知して期待に応える言動を取ったり、その場で浮かないように振る舞ったりすることで得られる承認です。

前者の承認は、その人自身の要素によるところが大きいですが、後者の承認は、その人ではなく、その人のまわりを取り巻く人々が要素となります。つまり、価値の判断基準が「外」にある承認なわけですが、この承認は前者と異なり、誰かを犠牲にすることがあります。

たとえば、まるでお笑いタレントかのように、知人をネタにする(いじりネタ)、あるいは自らをネタにして(自虐ネタ)笑いを取るなどの方法です。自虐ネタはともあれ、いじりネタは自らの周辺を気持ちよくし、承認を得られるかもしれませんが、必ずほかの誰かを犠牲にします。

これは、いわゆる同調圧力による笑いの強制であり、同調圧力による被害者への受忍要求です。とりあえず「笑いを取る」という結果を得て、承認欲求は満たされるでしょうが、本質的な正解ではないかもしれません。

このような関係性がまかり通るのは「みんなが求めてるから」とか「みんなやってるから」という、思い込みの上での正解なのです。

「バンドワゴン効果」という言葉をご存じでしょうか?

これは、多数が選択する結果が正解と判断し、追随してしまう現象を言います。まさに、判断基準が「外」にあることに起因して生じる現象ですが、この「多数の選択」が本質的には正解とは言い切れません。

そもそも、自身が見聞きした「多数」すら、ただの思い込みの場合もあるのです。このように判断基準を「外」に置いた場合の「承認」は、人を誤った方向に導き、本質的な正解に近づく情報収集を阻害することがあります。

 

もしかして「自分は大丈夫」とか思ってます?

2024年1月1日に発生した能登半島地震の際に、多数のデマが拡散されました。Ⅹ(旧Twitter)上で「建物が倒壊し挟まれて動けないから、救援お願いします。住所は○○○」とか「津波到達になった瞬間NHKのアナウンサーがすごい怒鳴ってる! 能登半島の方、逃げてください」といったデマの数々です。

これも典型的なバンドワゴン効果で、本質的な正解ではない行動を多くの人が取ったと言えます。デマを仕掛けた側は、先に述べたインプレッション稼ぎが目的だったわけですが、これを拡散した人々に悪意はまったくありません。むしろ善意でおこなっているのですが、その行為が社会的には悪影響を与えてしまったわけです。

悪影響に加担するくらいであれば、デマを見抜けない人は「疑わしい投稿はシェアしない」と決めればいいわけです。

ところが、実際には何万もの拡散がおこなわれました。これは「自分は大丈夫」と思っている人が思った以上に多く、しかも大丈夫と思っている人が大量に騙されているということです。地震という非日常な状況であり「冷静な判断ができなかった」という見解もあるでしょうが、これに関しては「正常性バイアス」というものもあります。

正常性バイアスとは、人間が非常事態に出くわした際に、多大な不安や恐怖のストレスから、身を守るために無意識で平静さを保とうとしている働きです。ですから、悪いことばかりではありません。過度に取り乱したりしないので、二次被害、三次被害にあうことを回避するメリットもあります。

一方で、事態を過小評価するデメリットにもつながります。東日本大震災のときに「自分は大丈夫だろう」と誤った判断をして、二次災害にあってしまった人が大勢いたことを覚えている方も多いでしょう。ですから、日ごろから「自分は大丈夫」と思っても「実際には大丈夫ではない可能性がある」と認識を持つことが大切です。

 

むしろ「自分は大丈夫」と思っている人ほど要注意

「ダニング=クルーガー効果」という、デイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーの2人がおこなった実験結果から導かれた法則があります。

この実験では、238人の学生のうち、124人にいくつか試験をおこない、解答直後にその成績を自身で評価してもらいます。自分の試験結果がどれくらいだったのかを予測してもらい、自己認識と実際の試験結果の差分がどのように現れるかを計る目的がありました。

その結果、試験の出来が悪い人ほど自身の成績を過大評価しており、試験の出来がいい人は成績を過小評価する傾向にあることがわかりました。もちろん「自分は大丈夫」と思っている人が必ずしも、過大評価だと言うつもりはありませんが、自分がこれまでしてきた経験や直観が絶対的なものではないことの教訓として注意は必要です。「自分は大丈夫」と思うこと自体がズレた先入観かもしれないのです。

自己評価がアテにならないということは、言い換えれば商材の提供者や商品・サービスの良し悪しも、自分の評価だけで考えてもアテにならないということです。

自分以外のものを評価しようとしても、それは必ず自身の評価を絶対として考えているからです。そこには多かれ少なかれ、ダニング=クルーガー効果が生じるでしょう。それを認識していなければ、自分はあたかもあらゆるものを客観的に評価できると勘違いしているかもしれません。

仮に、そういった自覚がなければ、しっかり自分で考えたり、思考を深めたりするということも不十分になっている可能性があります。このことから、つねに裏取りをする習慣をつけておくことが重要と言えるのです。

 

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発売日:2024年11月06日
価格(税込):780円

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