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アサヒグループ食品社長が考える「運が良くなる」一つの心がけ

2023年12月05日 公開

川原浩(アサヒグループ食品(株)代表取締役社長)

川原浩

50代で金融業界から食品業界へ転身した、アサヒグループ食品社長の川原浩氏。4回の転職を経験の後、社長に就任したという。そんな川原氏が良い人間関係を築くために意識していることとは?(取材・構成:林加愛、写真:まるやゆういち)

※本稿は、『THE21』2024年1月号総力特集『なぜか「いいこと」が起こる人の小さな習慣』より、内容を一部抜粋・再編集したものです。

 

選択の第一基準は「腹落ち」するかどうか

川原浩

――川原さんはここまでに数々の会社を経てこられました。4回の転職は、それぞれ「いいこと」と言えるご経験でしたか?

【川原】そう思います。僕は行動する際に「腹落ちするか否か」を最も重視しますが、とりわけ転職は頭で考えてはいけないと思ってきました。その会社の方とお話しして「ここだ」と思えたら、会社の規模や条件などにとらわれず、常に即決でした。

――それは、いつ頃からお持ちの信条ですか?

【川原】はるか昔、最初に就職した日本長期信用銀行が経営破綻し、外資系の投資銀行に移った頃からです。外資系は、採用した社員を「生涯雇用する」という考え方を一切しないんですね。

そこで思ったのは、自分のフィールドが「会社」から「社会全体」になったということ。広い社会で自分がどう行動し、どう選択するか、すべて一人で決めなくてはいけないと認識しました。その際に有効なのは、客観的な事実の検討より、「自分自身の腹落ち」だ、とも。

――川原社長のおっしゃる「腹落ち」とは、直感のようなものですか?

【川原】いいえ、第六感的なものではなく、「自分自身に照らし合せてどう感じるか」に近いですね。相手が語る内容や仕事観が、自身の価値観としっくりくるか。自分らしくいられて、それが評価や活躍につながる場所かどうか。その一点に基づいて、選択し続けてきました。

――金融の世界から離れて、事業会社に移られるという選択をされたときも、そうだったのですか?

【川原】はい。実は金融にいた頃から、事業会社への尊敬はずっとありました。金融があくまで事業会社をサポートする産業であるのに対し、事業会社は、自らの存在をかけて、商品やサービスを世に問うている。すごいな、と思ってきました。

その尊敬の念が、徐々に「自分もそこに加わりたい」に変化したんです。特に50歳を超え、キャリアもあと10年だと感じてからは、「実行するなら今だ」という気持ちが強くなりました。その矢先にこの会社と出会えたのは非常な幸運であり、同時に、成るべくして成ったご縁だとも思います。

 

運は、使えば使うほど強くなるもの

川原浩

――仕事での幸運は「引き寄せる」もの、とお考えの川原社長。ご自身は、そのためにどんな心がけをお持ちですか?

【川原】明るく楽しい人であること、これが最重要です。幸運の神様は恥ずかしがり屋で、なかなか向こうからは寄ってきてはくれない。でも明るくて楽しい人のそばになら「行ってみようかな」と思ってくれるんですね。

......と言うといささかメルヘン調ですが、説明のつく理由もあります。明るく楽しい人物とはすなわち、自分の世界を広げにいく人物。その先で、良い出会いや、つながりが発生しやすいのです。

――ご自身もそうして世界を広げられてきたのですね。良い出会いのための習慣などはありますか?

【川原】あります。ズバリ、「社長のナンパ」です(笑)。会合などで初対面の経営者の方々と会話していて、「この人ともっと話したい」と感じたら、即「今度、オフィスに遊びにいっていいですか?」と聞きます。

――なんと大胆な......!

【川原】もちろん、やんわり断られることもあります。でもナンパである以上「断られる前提」なので、気にしません。その調子でお声かけしていると、5人に1人くらいの確率で、OKしていただけます。

――勝率高めですね! オフィス訪問では、どんなお話を?

【川原】今悩んでいること、決めかねていることなど、色々です。例えば、「流通とのつき合い方、どうされていますか?」「サステナビリティは大事ですが、利益とのバランスが悩ましいですね」など。共感し合ったり、お知恵をいただけたり、得るものは多々。そして間違いなく、そこからおつき合いが始まり、続いていきます。

――この習慣があると、親しい方がどんどん増えますね。

【川原】はい。その方々に対して、いつも誠実であることも大事です。そうしたおつき合いが増えていくと、いつか、僕のことを知っている方同士が出会ったり、「川原さんって面白いよ」などと言ってくださったりして、新しいご縁ができたりするのです。

つまるところ、人間関係を大切にすることを明るく楽しく行なっていれば、いいことが起きるんですね。

――まさに、自ら引き寄せる幸運ですね。

【川原】でしょう? あともう一つ、強くお伝えしておきたいことがあります。世の中には「運は使うと減る」と考える方がいますね。「今日のぶんの運を使っちゃった」なんて言い回しもそうです。

でも、実は逆です。運は、使えば使うほど強くなるものなんです。今の話からもおわかりですね。良い出会いは、その先にさらなる出会いを生みます。自ら運を引き寄せる行動の先には、さらなる強運が待っているのです。

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