専業主婦から渋谷109のアパレル店員、居酒屋経営...と異色の経歴を持つドムドムフードサービス社長の藤﨑忍氏。斬新な商品で度々話題となるドムドムハンバーガーだが、そのユニークな商品開発の秘訣は、藤崎氏の「部下への接し方」にあるという。社員の発想を広げるコミュニケーションについて話を聞いた。
※本稿は、『THE21』2023年11月号特集「話が深い人 vs. 話が浅い人」より、内容を一部抜粋・編集したものです。
――社員の皆さんの才能や長所を引き出すうえで、他に心がけていることはありますか?
【藤﨑】任せること、信じることですね。人は信頼されることで責任感を持ちます。そして、自ら考え、アイデアを出すようになる。
ですから社員からの提案には、たいてい「いいよ」と言うんです。もちろん詳細を聞いて意見も述べますが、第一声は必ず「いいよ!」「いいんじゃない」と。そうすると、どんどんその人の発想が広がっていくんです。
――「いいんじゃない」から始まった商品や企画にはどんなものが?
【藤﨑】たくさんありますが、例えば2019年に発売した『丸ごと!! カニバーガー』です。アイデアを最初に聞いた段階から私はもうノリノリで「いいじゃん」と後押ししていたんですが、その一方、取締役会では「高い」「見た目が悪い」とネガティブな反応が続出。
すると、それに奮起したのか、開発者の側が「じゃあかわいくしましょう」と、お子様ランチのような旗を自作してカニに持たせてきたんです。結果としてその案が採用され、商品自体も大ヒット。あれは嬉しかったですね。
思えば、ドムドムのブランドキャラクター『どむぞうくん』のぬいぐるみをつくったときも似た展開でした。私は「かわいい!」と二つ返事でGOを出したのですが、社内では「似てない」「まだ早い」と後ろ向きな意見も。でも、いざ販売を開始すると、これまた非常に好評でした。
――逆に、失敗したときにはどうフォローされるのですか?
【藤﨑】それがですね、実は私、それで失敗した記憶がなくて。
――なんと。社員の方々誰もが超人的手腕をお持ちなのですね......。
【藤﨑】いえ全然(笑)。失敗はしているのでしょうが、私の中に失敗という概念がないんです。失敗ではなく、成功までの通過点、ブラッシュアップの機会と捉えるので。社員も皆、同じ思いでいると思います。
――素晴らしい考え方! ではその際には、担当者の方とどのようなお話をされるのでしょう。
【藤﨑】まず「どうすればうまくいったんだろう?」と聞きますね。例えば新商品の発売日、ある店舗での売上が目標の8割程度だったとしたら「どうすれば目標に到達できたか」を聞く。
こうすることで「ポスターの枚数を増やす」「事前告知を強化する」などのアイデアが生まれます。「そもそも商品がお客様のニーズとずれていた」などの意見も大歓迎です。
――将来に向けて、社員の方々に「こうなってほしい」というイメージはありますか?
【藤﨑】自分のやりたいことに楽しく取り組み、責任を持ってくれれば、それで良いと思っています。あとは人をよく見て、思いやりある言葉をかけること。もっとも、社内でそれが徹底できていない場合、それは私の力不足であり、正すべきは私なのですが......。
――ご自身のことはきちんと律されるのに対し、社員の皆さんに寄せる思いは、とても自由度が高いですね。
【藤﨑】部下に対して、あまり「こうあってほしい」といった期待を押しつけるような物言いはどうかと思っているんです。本人の未来は本人のもので、そこに立ち入るのは僭越だろう、と。
私の仕事は彼らが働きやすい環境をつくることで、その先でどうキャリアを構築していくかは彼らの領域であり、自己責任......というと、なんだか冷たい人間みたいでしょうか(笑)。
――いえいえ。期待を押しつけるのはNG、ということですね。
【藤﨑】はい。私が口にするのは期待ではなく「応援」です。自由に楽しく、力まずに、そのつど自分の行動の結果を受け止めて成長していってもらう――そんなようなコミュニケーションを、今後もしていきたいですね。
更新:11月22日 00:05