このように、脳の使い方を意識することは、老化を防ぐための重要なポイントです。そもそも脳は、使い方次第で一生成長し続けることが科学的に明らかになっています。
50代になると「記憶力が落ちた」「新しい仕事をなかなか覚えられない」などと感じる人が増えますが、これは加齢による脳の老化が原因ではありません。教科書の内容を丸暗記できた学生時代と、年齢を重ねて大人になってからでは、脳の働き方が変化しただけです。
むしろ問題解決やコミュニケーションといった、より複雑な情報処理を担う脳の高次機能は、中年以降に成熟します。
脳の中で記憶や理解を担う「超側頭野」は30代で、目や耳から入ってきた情報をもとに分析・理解する「超頭頂野」は40代で、実行力や判断力を司る「超前頭野」は50代でピークを迎えます。つまり脳のピークは30代から50代。中でも40代半ばから50代は脳の最盛期といえます。
しかも正しいアプローチで脳を使えば、60代以降も脳は成長を続けていきます。 確かに、脳の神経細胞の数は1歳前頃から減少します。しかし脳の働きを高めるのに必要なのは、神経細胞の多さではなく、脳の細胞同士をつなぐネットワークです。このネットワークを広げて連携を強化すれば、脳の機能を後天的に伸ばせます。
ところが実際は、社会人経験が長くなるほど使う脳番地が固定されていきます。営業職は伝達系、研究職は理解系、秘書は記憶系といったように、職業ごとに仕事でよく使う脳番地が決まってくるからです。よって50代以降も若々しくいたければ、仕事で使う機会が少ない脳番地を意識的に働かせることが重要です。
特に運動系・視覚系・聴覚系を意識的に働かせましょう。運動系は人間の脳の中で最も早く成長を始める集団であり、ここがしっかり働くと、すべての脳番地がパワーアップします。まさに「すべての脳番地のエネルギー源」と言っていいでしょう。
50代になると社内でのポジションが上がり、現場から離れて1日中会議ばかりという人も多くなります。しかし活動量が減ると運動系の働きが弱り、行動範囲が狭くなると視覚系や聴覚系が働く機会も減ります。これらの脳番地が働かないと、新しい情報や良い情報も入ってこないので、思考系や理解系の働きも低下します。
ですから頭がボーッとしたり、良いアイデアが浮かばないときは、まず身体を動かしましょう。私のお勧めはウォーキングです。デスクワーク中心の人は1日に計60分、より活発に脳を働かせたいなら、計80分から90分を目安に歩くといいでしょう。
ちなみに私は毎朝1時間歩くことを習慣にしています。脳にとって良い習慣を継続するには、自分なりの指標を設定することが大事です。私の場合、1日に歩く距離が4km以下になると夜ぐっすり眠れなくなり、睡眠不足で昼間も脳が働きにくくなるので、「1日に4km以上のウォーキング」を指標の一つにしています。
皆さんも「1日に3回は自分より年齢が若い人と仕事以外の話をする」といった自分なりの指標を決めると、習慣を継続しやすくなるでしょう。
50代の脳はまさに今が旬であり、高いポテンシャルを秘めています。「最近老け込んだな」と感じたら、ぜひ脳の使い方を変える習慣を取り入れてください。何歳からでも脳を成長させて、若々しさを保てるはずです。
更新:12月27日 00:05