「メルマガ、毎日発行18年」「YouTube、毎日更新10年」と驚異的なアウトプットを継続している精神科医の樺沢紫苑氏。「日本一アウトプットする精神科医」として活躍する同氏に、時間と心の余裕を保ちながら、圧倒的なパフォーマンスを維持するコツをうかがった。(取材・構成:林加愛)
※本稿は、『THE21』2023年7月号特集「『時間がない!』から抜け出せない本当の理由」より、内容を一部抜粋・編集したものです。
時短効率化のツールは年々進化しているのに、相変わらず「時間がない」と感じている方は、きっと多いと思います。そこには「パーキンソンの法則」=仕事量は与えられた時間の分だけ膨張する、という現象が働いていると思われます。
仕事の期限が1週間延びたのに、結局直前までかかってしまった経験はありませんか? それは無意識のうちに、できた時間の分、作業を「希釈(薄める)」したせいです。特に会社勤めの方は、1日の労働時間を濃く働いても薄く働いても報酬が同じなので、希釈グセがつきがちです。
「いやいや、自分は毎日頑張っている!」「それでも時間が足りなくて、こんなに疲れている!」と思われたでしょうか。実はその考え方、順番が逆です。
長時間働かざるを得ないから疲れてしまうのではありません。疲れによってパフォーマンスが低下しているから、時間内に仕事が終わらないのです。
この状態は、いわば悪循環です。仕事が終わらないから、睡眠を削って仕事をし、さらに疲弊し、ますます仕事のスピードが落ち、時間がなくなるのです。
この悪循環を、反転させましょう。つまり、正しいセルフケアによって集中力を高め、仕事のスピードを上げるのです。現時点でお疲れの方ほど、伸びしろは大。2倍速、3倍速で仕事ができれば、所要時間は2分の1、3分の1に縮むでしょう。
その最も簡単で有効な方法は、睡眠時間を増やすことです。「睡眠を1時間削ると、2時間残業が増える」と心得て、睡眠不足の沼から脱出しましょう。
日本人の平均睡眠時間は、約7時間半。世界の平均より1時間短いのが現状。とりわけ働き盛りの40歳以下の年代は、6時間以下が50%を占めます。
6時間睡眠を2週間続けると、2晩徹夜したのと同レベルの認知能力になるそうです。これは、日本酒を一合飲んだのと同じ状態。つまり皆さんは、酩酊状態の脳で仕事をしているのです。日本の生産性が低いのも、おそらくはこのせいでしょう。
ですから、毎日最低でも7時間は眠りましょう。「眠りが浅くて、7時間も寝られない」という方も、横になるだけで体の疲れは取れますから、とにかく布団に入りましょう。
「それでも、やり残した仕事が気になって眠れない」という方もいるでしょう。しかしその気がかりは、集中力について正しい知識を得れば解消できます。
集中力は、朝に高く、夜に低くなります。朝一番のまっさらな脳と、1日働いて疲れた脳の性能が違うのは当然ですね。そう考えると、夜に頑張って仕事を続けるのは非効率。きちんと眠って脳を回復させ、翌朝一気に進めるほうが合理的です。
更新:10月14日 00:05