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カリスマ性より等身大? 米国巨大IT企業の迷走にみる「これからのリーダー像」

2023年04月12日 公開

名和高司(一橋大学ビジネススクール客員教授)

 

京都の名経営者二人が大事にしていること

名和高司 盛守経営

最後に紹介したいのは、京セラの稲盛和夫さんと、日本電産の永守重信さんの2人である。

京セラとKDDIを立ち上げ、そしてJALを再生させた、まさに昭和・平成を代表する経営者である稲盛さん。日本電産を瞬く間に2兆円企業に成長させ、さらには10兆円企業を目指す永守さん。

両社は同じ京都の企業であり、本社も非常に近いのだが、実はこの2人の経営観にも多くの共通点がある。

私は『稲盛と永守』(日本経済新聞出版)という本の中でその比較を行っているのだが、使っている言葉こそ違えど、重視しているポイントは同じだ。それを「盛守経営」という言葉遊びのようなネーミングでまとめたものが、図2になる。

まずは、「志す」こと。そして「実践する」こと。そして「発信する」ことだ。

最初の「志す」とは、ありたい姿やあるべき姿を描くこと。

まさに「パーパス」そのものだ。稲盛さんは「大義」という言葉をよく使い、永守さんはもう少し平易な「ドリーム」という言葉を使うことが多いが、2人とも口をそろえて、まず「志す」ことが重要だと述べている。

稲盛さんは夢を追求する時には、「カラーで見えなければならない」というユニークな表現をしている。つまり、そのくらいリアルなイメージを描くことが大事だということだ。

そのうえで「実践する」。当然のことながら、志を持つだけでは不十分で、それを必死になって実践し、結果を出さなくてはならない。そして、それをしっかり伝えなくてはならない。

この3つは「掛け算」であることが重要だ。だからこそ、志が間違っていると、すべてが台無しになる。これも稲盛さん流に表現すると、パーパスはマイナス10からプラス10まである。

マイナス10のパーパスをいかに努力しても、マイナスが広がるだけだ。

 

ニューノーマルから「ノーノーマル」の時代へ

使っている言葉は違えど、松下幸之助さんを筆頭に、これら日本の名経営者たちには多くの共通点があり、それは「志本主義」時代に求められるリーダーの条件に他ならない。

自信を失っている日本の中堅リーダーに、再び自信を持ってもらいたい。その思いで本連載を執筆してきた。そのモデルは意外と身近なところにある。そのことを再び強調しておきたい。

日本に変革が必要とされているのは、まさにその通り。それも、今後はニューノーマルではなく、ノーノーマルの時代になる。つまり「ノーマルがないことがノーマルになる」。

変わり続けるのは大変だ。しかし、パーパスを起点とすると、変わるのがどんどん楽しくなり、自らどんどん変革を起こしたくなる。そんなワクワクするような仕事をぜひ、読者の皆さんにも味わってほしいと思う。

【名和高司(なわ・たかし)】
1980年、東京大学法学部卒業、三菱商事入社。90年ハーバード・ビジネススクールにてMBA取得(ベーカー・スカラー)。その後、約20年間、マッキンゼーのディレクターとしてコンサルティングに従事。2011〜16年、ボストンコンサルティンググループのシニアアドバイザー。14年より30社近くの次世代リーダーを交えたCSVフォーラムを主宰。10年より一橋大学大学院国際企業戦略研究科特任教授、18年より現職。多くの著名企業の社外取締役やシニアアドバイザーを兼務。

 

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