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50代で準備しないと後悔? 「定年後に充実する人・孤独になる人」の違い

2022年11月04日 公開
2024年12月16日 更新

金澤美冬(プロティアン(株) 代表取締役)

 

定年後を待つのではなく現役のうちに「お試し」を

共通点の3つ目は「影響される力」があることです。他人に影響を「与えたい」と思う人は多いのですが、そんな人ほど影響「される」ことがありません。

他人がやっていることに興味を持ち、影響されて自分もやってみる。ベテランの方々には、これこそが大事なのです。新たなことに興味を持てないと、どこまでも会社員時代のまま。定年後の新しい道が拓けてきません。

多くの人から「影響されよう」と思うことで、興味関心の幅が大きく広がります。

最後の4つ目は「とにかくやってみる」こと。会社では、成功への道筋が見えなければ挑戦しない、という判断が正しいのかもしれません。しかし、定年後を見据えてなら話は別。勝算などなくても、結果が読めなくても、とにかくやってみる、試してみることが大切です。

例えば、退職後は陶芸を、と夢見ていたCさん。しかし退職後にいざやってみると、想像以上に水は冷たく、土は重い。窯は寝ずの番が必要で、あまりの大変さに「老後に一からやるものじゃない」と実感し、陶芸の道を諦めたそうです。

このように、退職後にいきなり挑戦を始めると、大きな失敗をすることが多々あります。楽しみにしているほど精神的ショックは大きく、やり方によっては金銭的ダメージも甚大です。

こうした失敗を避けるためにも、定年を待つことなく、できることから、とにかくやってみる。自分に合わないと思えば、別のやりたいことに挑戦すればいいだけなのですから。

 

定年前に実験を繰り返す「パラレルキャリア」

金澤美冬

定年後にやってみたいことがある人は、それをSNSなどで発信すると、始めるきっかけをつかめるかもしれません。それを見た友人から「一緒にやろうよ」「こんなことをやっているから、手伝ってみない?」などと誘われるケースもあります。

また、「副業」としてやりたいことを試してみる方法も有効です。例えば、定年後にコンサルティングをしたいなら、スキルシェアサービスに登録し、スポットコンサルティングを請け負ってみる、などといったことですね。

副業禁止の勤め先でも、ボランティアやプロボノとして活動する方法があります。副業やボランティアの場を、定年後にやりたいことの実験場にするのです。すると、社会が何を求めているのか、自分に何ができるのか、どういう人たちと一緒にやりたいのか、といったことがわかってきます。

色々な実験をしながら、小さな失敗を繰り返しつつ、少しずつ軌道修正していく。これが定年後に本当にやりたいことをやる王道なのではないかと、私は考えています。

また、定年後に何もやりたいことがないという人は、まずその「やりたいことがない」ことを自覚し、見つけようと動き出すのが最優先です。そういった方には、入社時から現在までの経験を棚卸しする「ライフキャリアシート」を書いてみるのをお勧めしています。

自分には「特別なスキル」などない、と思っている人も、書き出してみると必ずあるもの。これを通じて自己評価や自己肯定感が上がったという人も、思いのほか多くいます。

定年になってから「もっと色々やっておけば良かった」と後悔しないためにも、早くやりたいことを見つけ、その準備のために限られた時間を有効に活用してください。

【金澤美冬(かなざわ・みふゆ)】
プロティアン(株)代表取締役。早稲田大学政治経済学部を卒業後、三菱倉庫(株)などを経て転職エージェントとして独立。50~60代からの相談が多い中、なかなか良い求人を紹介できない状況に一念発起し、「おじさん」向けキャリア支援への特化を決意。現在、キャリア支援の他に、「おじさんLCC(ライフキャリアコミュニティ)」なども運営している。著書に『おじさんの定年前の準備、定年後のスタート』(総合法令出版)がある。『令和おじさん進化論』を時事通信社で連載中。

(『THE21』2022年12月号特集「50歳から必ずやっておくべきこと」より)

 

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