今の40、50代は、「会社が職業人生のすべて」で働いてきた人が多い世代。自分のキャリアを考える機会は少なかっただろう。そんな中、注目を集めているのが、国家資格の「キャリアコンサルタント」だ。日本マンパワーのキャリアコンサルタント養成講座の人気講師・山内雅惠氏は、ミドルの学び直しに最適だと語る。その魅力と活かし方を教えてもらった。
(取材・構成:林加愛)
※本稿は、『THE21』2022年7月号特集「40代・50代で必ずやっておくべき『学び直し』」より、内容を一部抜粋・編集したものです。
ミドル世代にとって「これからのキャリア」は重要で、時に悩ましいテーマです。「人生100年時代」にあって、今後も長く働き続ける必要性が増しているにもかかわらず、気がかりな要素も多々あるからです。
終身雇用システムが崩れつつある中、いつまでも会社にいられるとは限りません。事実、企業が40~50代社員のキャリア研修を行なう際には「自律的キャリア構築」、すなわち自分で自分の働き方を考え、実践するよう促すケースが増えています。
しかし、現在40、50代の方々は、「会社のため」を最優先にひたすら走ってきた世代です。それだけに多くの方が、「自分でキャリアを考える」方法がわからず、戸惑いを覚えています。
そうした中で、現在注目を集めているのが「キャリアコンサルタント」という資格です。もともとは「キャリアカウンセラー」という名称でしたが、2016年に国家資格となったのを機にこの名称となりました。
キャリアコンサルタントは、ひと言でいうと「自分らしい働き方」を支援する仕事です。相談者と対話を重ね、今できることは何か、したいことは何か、そこに必要なスキルは何かを共に考え、その人が「なりたい自分」になるお手伝いをします。
キャリアコンサルタントの存在意義は年々増しています。2022年には「職業能力開発促進法」が改正され、事業主によるキャリアコンサルティングの機会の確保(労働者の求めに応じて環境を整備)が明確化されました。
キャリアコンサルタントを育成する「キャリアコンサルタント養成講座」は、厚生労働大臣が指定する『専門実践教育訓練給付制度』の対象です。受講者は一定の条件を満たせば、受講費用の一部が支給されます。こうしたサポート体制も、キャリア構築を支える人材を積極的に育てる、国の方針の表れと言えるでしょう。
私は2007年より日本マンパワーで講師を務めていますが、近年は企業のマネジメント層、特に人材育成にかかわる受講者が増えました。そうした方の多くがミドル世代であり、社員の育成のみならず「自身のキャリアを見直したい」という思いも持っています。この講座での学びは、その双方を可能にします。
講座では、厚生労働省が定める150時間のカリキュラムに基づき、多様な知識やスキルを学びます。カウンセリングおよびキャリアカウンセリングの理論、労働法規等の知識、そしてロールプレイ。受講生がそれぞれコンサルタントと相談者の役になり、事例を体験します。それは支援者になる訓練であると同時に、自分の悩みや迷いに答えを見つける過程になります。
良い支援者となるには、過去の経験やキャリアの中で作られた自分の価値観。時には偏りも含まれたモノの見方に、まず気づくことが大事。キャリアコンサルタントの学びは、自らのキャリアの棚卸しをしながら、自己理解を深めることでもあるのです。
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更新:11月23日 00:05