会社員としての「成功」の形も様々になり、昇進を素直に喜べない人も増えている。しかし、『99%の人がしていないたった1%のリーダーのコツ』などの著作がある河野英太郎氏によれば、昇進しなければ得られない喜びも多々あるという。その喜びを余すことなく享受するコツはどこにあるのか、詳しい話をうかがった。(取材・構成:林加愛)
※本稿は『THE21』2022年4月号特集「リーダーになったら必ずやるべきこと 絶対やってはいけないこと」より抜粋・編集したものです。
近年、「リーダーは重荷」「なりたくない」と考える人が増えている、と聞いています。
その理由を紐解くと、主に2つ挙げられるようです。1つは、選択肢が増えたこと。ひと昔前ならば、昇進、出世というコースに皆が乗っていましたが、今は管理職にならず専門性を極めていく道もあります。そういった「選択肢」が視野に入るぶん、迷いも生じやすくなっているのでしょう。
もう1つの理由は、「管理職は損」というイメージです。残業代が出なくなることに加え、上司と部下との間で板挟みになるストレスなどから「しんどいだけ」と語る人は確かに少なくありません。
ここでまずおさえておきたいのは、「管理職」つまりマネジャー(兼チームリーダー)の地位は、就任を辞退することもできるし、なった後に降りてもOKということ。疲弊してメンタルダウンを起こすより、そのほうがずっと建設的です。
先ほど述べた通り、昨今は様々な選択肢があります。専門分野を極めるもよし、副業を始めるもよし。1度マネジャーを退いても、その後でまた戻ることも可能です。
今の時代、まっとうな組織であれば一時的にコースを外れることは決してマイナスではありません。「昇進したらもうこの道しか」ではなく、視野を広くとり、気持ちの余裕を持つことが大切です。それができて初めて、マネジャーの業務に喜びを感じる準備が整います。
一方、そこまで強い忌避感はないものの、「マネジャーになって以来、なんだかうまくいかないな」という人も多いでしょう。その代表例が、プレイヤー時代のように自分自身で自由に動けないストレス。プレイヤー時代に優秀だった人ほど、この悩みを抱きがちです。
しかし、マネジャーを続けるのなら、どうにか未練を断ち切るしかありません。
このときのコツは、自分の視点を「自分」から「自分以外」に思い切り広げてみることです。
プレイヤー時代は、自分がいかに成果を出すかに関心が向くものですが、マネジャーになったら、見るべきはチームであり、個々の部下です。
ここで参考になるのが、「パス・ゴール理論」。提唱者のロバート・ハウスは、目標の達成のために必要な道筋を示すこと、つまりメンバーをゴールに導くパスを出すことこそが、リーダーの役割であるとしています。
習熟度の低い新人には事細かに指示し、フォローする一方、ハイパフォーマーには方向性だけを示して任せるのが適切と言えます。
自分自身がやりたいことは一度脇に置き、チームや部下のパフォーマンス向上に注力する姿勢を手に入れましょう。
それではつまらない、と思うかもしれませんが、これは「目の前の仕事の遂行」から「組織の目的達成」という、より高い視座へのステップアップでもあるのです。その何倍にも広がった視野に慣れてくれば、きっとこれまでよりも壮大で意義深い「やりたいこと」が見えてくることでしょう。
マネジャーになったからこそ、これまでよりもずっと高くから物事を見つめ、遥かに大きな野望を持つことができるのです。
更新:11月24日 00:05