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名選手は名監督になり得るか?優秀な人材をつぶさない「育成の早期化」

2021年12月15日 公開
2023年02月21日 更新

山下貴宏(R-Square&Company社長/共同創業者)

 

バディプログラムで他部署の若手と組むことで見えてくることとは?

最初は「知ること」を課題に、マネジメントに必要なスキルの習得やコーチングのトレーニングに励みます。商談の際に必要なマネージャーの観点や部下育成のポイント、部下との関わり方などを押さえながら、マネジメントスキルの土台を作っていき、「実践」につなげます。

実践では、日々の商談で次期マネージャー候補生が指導役となって、彼らの下についたバディ相手の案件に同行。若手は指揮命令系統(レポートライン)を外したメンバーから選びます。レポートラインの関係では、すでに信頼関係や共有事項もある、相手のスキルも把握した状態なので、指導上の気づきが得にくいためです。

逆に、情報共有できていない他チームの若手なら、指導の仕方、コミュニケーションの取り方など、積極的にマネージャーとしての行動を促されます。この状況はマネージャーになるとよく起こることなので、後々非常に役立ちます。

同行後にはフィードバックも行います。この時、重要なのは「顧客視点」でコーチングをすること。トレーニングで学んだ内容を、実際の商談ベースで実践していきます。

例えば、バディの部下が商談で悩みを抱えていたら、コーチングで"顧客視点"で問いかける意識を共有します。商談の受注に関して、自社視点で「今月の商談は受注できそうか?」などと聞いてしまうと、相手は「はい」か「いいえ」でしか答えられません。

顧客視点で、「顧客の意思決定者が今月発注したい理由は何かな?」などと問いかけることで、バディが次にとるべきアクションが見えたり、気づきが得られたりするわけです。

こういった経験を通して、次期マネージャー候補生自身も成果につながる営業アプローチができるようになるでしょう。今までは「受ける側」だったフィードバックを「する側」になることで、自身も学びを得る相乗効果があるからです。

また、他の次期マネージャー候補生のやり方を知ることも財産になります。月に1回ほど集まって、進捗や悩みを共有するのも手です。この時に、バディに対してマネージャー視点で育成の体系化や言語化ができているか、相手の理解はどうなのかも学び合えるでしょう。

 

「力のあるマネージャーが多い」は企業の武器になる!

こうした「実践」を続けながら、「振り返り」にも目を向けます。「振り返り」では、周囲からのフィードバックを受けてマネジメントのやり方を改善したり、営業や育成の成果を発表したりします。

例えば、プログラム期間中に会社側がサーベイを取る。バディに「次期マネージャー候補生のAさんはどうですか?」など、同行時のアドバイスやフィードバックの有効性について、ヒアリングします。プログラムの最後は、次期マネージャー候補生が上長に対して育成成果のプレゼンを行って、プログラムを終えます。

このプログラムに取り組んでいけば、継続的に組織をアップデートできます。仮に天才やまぐれ型ハイパフォーマーであっても、"運や偶然に依存しない"マネジメント力を身につけることができ、安定した組織作りが可能となるのではないでしょうか。

「名選手は、名監督になりうるか?」。その答えは、お伝えした通り、若いうちからの育成がキーとなります。企業の営業人材育成の取り組み方次第で、どんな企業でも早期に「名選手を名監督にする」確率を高められるのです。

正しい人材育成を経て、教える側も教わる側もブレることなく、組織全体で顧客視点の営業アプローチを一気通貫で行うことができれば、それを「武器」に、どんな不確実性の時代になろうとも、ビジネスをサバイブしていけるでしょう。

 

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