2021年04月06日 公開
2023年10月31日 更新
カケハシ代表取締役社長・中尾豊氏
「今、薬局は変革期にある」と、〔株〕カケハシ代表取締役社長の中尾豊氏は話す。
「薬局で処方薬を買うとき、現役世代の場合だと、自己負担は3割です。残りは国が税金から出していて、その金額は年間約1.9兆円に上ります。それだけ国民のお金を使っていながら、薬局の薬剤師は、患者を待たせないように早く薬を出すだけでいいのか。
また、薬局の数は約6万店にまで増えており、コンビニエンスストアよりも多くなっています。
社会的に見ても、経営の面から見ても、より高い付加価値を患者に提供することが、薬局には求められているのです。国も、薬剤師の対人業務を推進する方向性を打ち出しています」(中尾氏)
しかし、薬局で働く薬剤師は業務が忙しく、せっかくの専門知識を活かした患者へのサービスが十分に提供できないという課題があった。
「薬剤師の既存の業務には、薬局内での業務と、在宅の患者を訪問する薬局外での業務とがあります。既存の業務を効率化し、そこに薬剤師がかける労力を軽減したうえで、新たな付加価値を生む業務に取り組んでいただくことが必要です」(中尾氏)
薬剤師が薬局内で行なう既存の業務とは、薬を調剤し、間違いがないか確認して、患者に服薬指導をし、薬歴を記録する、というものだ。カケハシが提供するサービス「Musubi」を利用すると、服薬指導をしながら、同時に薬歴を記録できるので、その効率化が図れる。
また、Musubiは、在宅の患者を訪問する業務の効率化にも役立つ。クラウドサービスなので、重い紙の記録を持ち歩かなくても訪問先で薬歴を見られたり、その場で医師への報告もできたりするのだ。
そのうえで、「Pocket Musubi」というサービスとMusubiを連携させて、個々の患者へのサービスを充実させることができる。
「例えば、抗生物質を飲むと、それによって病原菌だけでなく腸内細菌まで死んでしまい、下痢などを起こすことがあります。そのために服用を止めてしまう方がいるのですが、すると、病原菌がなくならないだけでなく、耐性菌に変化してしまうこともあります。
投薬した患者に連絡を取って、状況を確認し、必要なアドバイスを行なうことは、患者にとって価値があるわけです。
しかし、すべての患者に薬剤師が連絡を取ることは難しい。そこで、投薬した患者のLINEに、その薬の種類や患者の状態などに応じたメッセージを、自動的に送ります。それに対する返信によって、薬剤師が連絡を取るべき患者をスクリーニングすることで、必要な方に、薬剤師が適切なアドバイスをすることができます」(中尾氏)
薬剤師と患者とのやり取りは自動的にMusubiに反映され、医師による診断にも活かすことができる。
目薬を投薬した患者に、点眼に失敗しないための方法を伝える、というようなことも行なっている。丁寧なフォローをすることは、薬局に固定客をつけることにもつながる。
現在、カケハシのサービスを導入している薬局は、個店から数百店舗を持つ薬局まで、全国に数百法人あり、毎月新たに導入する店舗が拡大しているということだが、2017年8月のサービス開始から1年間ほどは、10店舗以下の小規模な法人が中心だったという。
「規模の大きい法人に導入していただけるようになったきっかけは、薬局の経営指標を毎日自動的にグラフ化する『Musibi Insight』のサービスを始めたことです。規模が大きいと、各店舗の薬剤師一人ひとりの仕事ぶりが本部からは見えにくくなるのですが、Musubi Insightを使えばそれも可視化されるので、人事評価などに役立てていただけます」(中尾氏)
更新:11月25日 00:05