2020年12月25日 公開
2023年10月31日 更新
――なぜ開発期間を短くできているのでしょうか?
【野呂】システムの開発には、アジャイル型とウォーターフォール型の2つの手法があって、当社はアジャイル型だからです。
ウォーターフォール型というのは、要件を事前にしっかりと詰めてから設計し、それから開発をして、テストをして、リリース、という手順を踏んでいく手法です。大手SIerは今でもウォーターフォール型の開発が中心ではないでしょうか。
ウォーターフォール型は、要件やニーズにあまりブレがないような、金融機関などの基幹システムの開発には適しているのですが、要件を詰めるだけで半年や1年かかるので、その間に世の中のニーズが変わったり、競合に追い抜かれたりする可能性があるのがデメリットです。
一方、アジャイル型は、必要最小限の要件をまず固めてリリースし、それから徐々にユーザーのフィードバックをもとに改修する手法です。ユーザーのニーズを柔軟に取り入れる必要があるような顧客接点系のフロントシステムの開発には、こちらのほうが向いていると考えます。
――アジャイル型の開発手法を取り入れるには、クライアント側の理解も必要ではないでしょうか?
【野呂】アジャイル開発の成否はクライアントとITベンダーの信頼関係に尽きると思います。その醸成を丁寧に進めることが成功の秘訣だと考えています。
また、重厚な開発を主とする大手金融機関などのシステムに対する意識も変わってきていると思います。例えば、データを集約するサーバーも、以前は自前のデータセンターにオンプレミス(自社運用)で設置するのが当たり前でしたが、今は金融機関でもAWS(Amazon Web Services)などのパブリッククラウドを活用して情報系システムを構築しています。
こういった事例から、大手金融機関を中心に、従来のシステム開発手法に囚われないチャレンジが進んでいることを実感しますし、当社としてはこの流れに乗り、アジャイル開発という手法でクライアントと並走していきたいと考えています。
――そうなると、今はウォーターフォール型のSIerもアジャイル型に変えるのでは?
【野呂】その動きはあるにはあるものの、本格的ではありません。ほとんどPoC(概念実証)の段階に留まっていると感じています。
アジャイル型開発をするには、要件が固まっていない状態で走りながらクライアントとやり取りをするノウハウが必要です。これができないと、結果的に要件の認識齟齬が頻発し、瑕疵担保責任を問われるようなことにもなりかねません。大手SIerにとっては非常にリスクのある手法でもあるのです。
そのリスクのある開発手法をいかに実現するかは、クライアントとITベンダーのコミュニケーションの取り方に尽きると思います。
一例を挙げると、通常、エンジニアはクライアント側の担当者と直接やり取りをしないのですが、当社のエンジニアには、クライアントと直接話をして、クライアントが提示するビジネス要件を咀嚼し、逆提案までできるスキルセットがある人材を揃えています。受託開発における常識では、これはPM(プロジェクトマネージャー)が担う役割ですから、もはやPM兼エンジニアという存在でしょうか。
これができる人材は稀ですが、当社では現時点で40人規模の精鋭のエンジニアを揃えることができています。
企業の中には、DXが必要なことはわかっていても、時間もコストもかかるからと諦めているところが少なくありません。その常識を変えることで、日本のDXを推し進めていきたいと思っています。
更新:11月23日 00:05