怒りのデメリットは「心を疲れさせ、パフォーマンスを低下させること」だと名越氏は指摘する。しかし、怒りの発生源が、上司や同僚、部下など自分以外の人の場合は、どう対処していけば良いのだろうか。
「まず〝怒られやすい人〟を思い浮かべてもらうと、わかりやすいかもしれません。怒られやすい人の傾向の一つとして、基準がいつも『自分』にあることが挙げられます。
例えば、礼を重んじる上司なのに挨拶をしない、お礼を言わない。本人には悪気はないのです。自分は挨拶やお礼を言われなくても気にしないタイプだから、上司もそうだろうと思い込んでいるフシがある。少し勘のいい人なら『上司は挨拶にうるさいタイプだから、ここで言っておこう』と先読みして行動しているのです」
つい私たちは「自分だったらどう考えるだろうか」と考えてしまいがちだが、自分の価値観で相手を類推しすぎないことが大人の人間関係を築くうえで大切だと、名越氏は説く。
相手がどんな性格なのか、どんな価値観や行動規範を持つかを見抜くのに役立つのは、「類人猿分類」による性格分類だ。
㈱エブリイホーミイホールディングスの岡崎和江氏と名越氏で考案したもので、同社はこの性格分類を人材教育に取り入れてから、社内の人間関係が改善されて業績を伸ばした。エイチ・アイ・エスやサマンサタバサ、全国各地の学校、病院などでも導入されている。
「『感情を表に出すか、出さないか』『革新志向か、安定志向か』の二つの軸から、四つの性格タイプに分類する手法です。自分と相手を判定すると、ある程度、相手の思考軸を理解できるようになります。
例えば、同じ革新志向であっても、感情を表出するチンパンジーと、感情を出さないオランウータンは怒りのパターンが正反対です。チンパンジーは『俺は怒ってるんだぞ!』という感情的なアピールを周囲に撒き散らします。一方、オランウータンは怒れば怒るほど冷静沈着になってしまい、怒りがまわりから見えません。
その結果、とても冷たい人、バッサリと人を切る人という印象を与えたり、いざ表出するときは、些細なことがきっかけになることも多いので、周囲には『なぜここで?』という印象を与えてしまいます。
チンパンジーは、普段は冷静なオランウータンからすると、『なんであの人はあんなに感情丸出しで怒るんだろう』と理解不能。一方、チンパンジーから見れば、オランウータンは『怒りのポイントがわからない。突然、キレる』と内心、怖がられているのです」
自分が「理不尽だ」と感じる相手の怒りは、実はこうした性格の「すれ違い」から生じていることがあるのだ。類人猿分類で、自分と相手のタイプを知り、お互いのすれ違いポイントを把握できれば、うまく怒りを回避できる可能性がある。
そこで、四つの類人猿の性格タイプと対処法を知っておこう。
更新:11月23日 00:05