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難解な本は最初に 「あとがき」から読もう

2018年10月29日 公開
2023年03月14日 更新

鎌田浩毅(京都大学教授)

本の内容を「ひと言」で説明してみよう

 難解な文章は、言葉の意味が難しいだけでなく、「文の構造」が複雑であることも少なくありません。重文と複文、修飾語などが入り乱れているからです。

 例えば、「私は、私が検討する難問の一つひとつを、できるだけ多くの、しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分割する」という一文。

 こうした文章は、主語と述語と目的語に注目して読むだけで、シンプルな構造になります。

 主語は「私は」、述語は「分割する」、目的語は「難問の一つひとつを」です。つなげると、「私は難問の一つひとつを分解する」という一文になります。

 難しい文章に出合ったら、いったん「要素」に分解してできるだけシンプルにする。文の構造に注目すれば、本当に伝えたいメッセージが見えてきます。

 こうした読み方を身につけると、各項目、節、章で「何が言いたいのか」をひと言で表現できるようになります。すると、本全体についても、ひと言で説明できるようになるのです。

 例えば、「『方法序説』は、それまで一緒くたにされていた精神(神)と物質(自然現象)を分けて考えることで、真理を探求する新しい方法を提案した本である」と説明できます。

 全体をひと言で表現する訓練を積むと、言葉の意味が「腹落ち」するので、本を読んだときの理解度がまったく違ってきます。「なるほど」「わかった!」という読書体験が、さらに難しい本を読むモチベーションになるので、ぜひ実践してください。

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著者紹介

鎌田浩毅(かまた・ひろき)

京都大学教授

1955年生まれ。東京大学理学部卒業。通産省を経て97年より京都大学教授。専門は地球科学。テレビや講演会で科学を解説する「科学の伝道師」。京大の講義は毎年数百人を集める人気。著書に『地震と火山の日本を生きのびる和恵』(メディアファクトリー)、『火山と地震の国に暮らす』(岩波書店)、『火山噴火』(岩波新書)『もし富士山が噴火したら』『座右の古典』『一生モノの勉強法』(以上、東洋経済新報社)など。

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