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スマートスピーカーが「ペット」になる日が来る!?

2018年06月23日 公開
2023年07月31日 更新

【連載】「AI失業」前夜(第5回)鈴木貴博(経営戦略コンサルタント)

短命だった最初のデジタルカメラ「マビカ」

最後の三つめのポイントだが「イノベーションにおける30年の法則」の中で、今回のaiboはどの時期の商品なのかという論点がある。

画期的なイノベーションが世の中を変えていく際に、「30年の法則」と言われるものがある。ペニシリンでも、自動車でも、パソコンでも、世の中を変える画期的な発明品は、登場してからそれが世界をすっかり変えてしまうまでには30年の時間がかかるというものだ。

最近の例でいえば、デジカメが世の中を変えるまでにはちょうど30年かかった。デジカメが最初に世の中に登場して人々を驚かせたのは1981年のことだ。プロトタイプ的な商品としてソニーから発表された「マビカ」である。ビデオと同じように写真をアナログ情報として読み込んで、フロッピーディスクに記録する。

このマビカが発表された当時、写真の世界が変わると激震が走った。しかしほどなくして、マビカは世界の話題から消えていく。周辺技術がまだ追いつかず、実用化できなかったのだ。

 

「30年の法則」が大企業を崩壊させた

実用的な商用デジカメが市場に登場し始めるのは、それから15年くらい後のことである。デジタルカメラの画像センサーの性能が向上し、記録用のフラッシュメモリの記憶容量が実用レベルに達し、ウィンドウズパソコンやインターネットが普及してデジタル画像の活用の場ができてようやく、デジタルカメラは商用化された。

それでも、発売直後のデジカメに対する世間の評価は冷たかった。「あんなのはおもちゃだよ」と。画素数38万のデジタルカメラは確かに、銀塩フィルムの写真の画質と比べられるほどの画質を生み出せていなかった。

ところが、ここで問題にしていただきたいのは、それからの進化の速度の早さだ。デジカメはその後、あっという間に性能を上げていく。2000年代に入ると画素数は400万を超え、やがて一眼レフのデジカメは銀塩カメラを性能で追いつき、その後、工程の画像処理やプリントの利便性ではフィルムを追い越すことになる。

そしてマビカが発表されてから約30年後、世界最大のフィルムメーカーだったイーストマン・コダックは経営が立ち行かなくなり破産申請を行なった。

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「おもちゃ」がおもちゃではなくなる日 >

著者紹介

鈴木貴博(すずき・たかひろ)

経営戦略コンサルタント

東京大学工学部卒。ボストンコンサルティンググループ等を経て2003年に独立。過去20年にわたり大手人材企業のコンサルティングプロジェクトに従事。人工知能がもたらす「仕事消滅」の問題と関わるようになる。著書に『仕事消滅』(講談社)、『戦略思考トレーニング』シリーズ(日本経済新聞出版社)他があり、後者は累計20万部超のベストセラー。経済評論家としてメディアなど多方面で活動している。

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