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今さら聞けない「フェルミ推定」。本当の意味とは?

2018年06月12日 公開
2023年03月14日 更新

永野裕之(永野数学塾塾長)

匙を投げる前に「だいたい」を探る

勘違いしないように注意して頂きたいのですが、ここでの目的は正確な値(本当の人数)を出すことではありません。

シカゴのピアノ調律師の人数を正確に把握したいのならシカゴピアノ調律師協会(という組織があるかどうかは知りませんが…)的なところに問い合わせて確認すれば済むことです。

大切なのは、このような問題に対して「わかるわけがない」と匙(さじ)を投げるのではなく、少ない知識と推定量を使って論理的に「だいたいの値」が求められるかどうかです。

 

「人の細胞の総数」をフェルミ推定で出してみる

シカゴの調律師の人数を見積もるフェルミ推定については、拙書『初歩からわかる数学的ロジカルシンキング』(SCC)等に書きましたし、ネットで検索すればすぐにいくつかの解答例を見つけられると思いますので、ここでは

「人の細胞の総数はいくつか?」

という問題を考えてみたいと思います。

1 仮説
「人の体は細胞で埋め尽くされていて、人の体の体積=細胞1個の平均体積×細胞の総数」であるという仮説を立てます。

2 問題の分解
この問題を考えるために必要な数値は「人の体の体積」と「細胞1個あたりの平均体積」ですが、それぞれを
・人の体積=人の体重÷密度
・細胞1個の平均体積=細胞の直径の平均の3乗
と考えましょう。

3 データ
成人男性と考えて
・人の体重:70kg
ということにします。

次のページ
最終的に「ケタ違い」でなければよい >

著者紹介

永野裕之(ながの・ひろゆき)

「永野数学塾」塾長

1974年、東京生まれ。暁星高等学校を経て東京大学理学部地球惑星物理学科卒。同大学院宇宙科学研究所(現JAXA)中退。レストラン経営、ウィーン国立音大への留学を経て、現在は個別指導塾・永野数学塾(大人の数学塾)の塾長を務める。これまでにNHK、日本経済新聞、プレジデント、プレジデントファミリー他、テレビ・ビジネス誌などから多数の取材を受け、週刊東洋経済では「数学に強い塾」として全国3校掲載の1つに選ばれた。プロの指揮者でもある(元東邦音楽大学講師)。著書に『東大教授の父が教えてくれた頭がよくなる勉強法』『数に強くなる本』(PHPエディターズ・グループ)、『大人のための数学勉強法』(ダイヤモンド社)など多数。

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