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「1メートル」が今の長さになった理由とは?

2018年06月03日 公開
2023年03月14日 更新

永野裕之(永野数学塾塾長)

紆余曲折あった「長さの単位」の歴史

我々が当たり前のように使っている「メートル」という単位。だが、それが世の中に根付くまでにはさまざまな紆余曲折があったという。そもそも、人類はどのように「長さ」を測ってきたのか。本記事では、東大、JAXAを経て人気数学塾塾長を務める永野裕之氏がその歴史を紐解いていく。きっと、身の回りの「単位」を見る目が変わってくるはず。

 

地球1周の長さがちょうど4万キロなのは偶然ではない?

私は小学校3年生か4年生の時に、「この世で最も速いもの」は光であることを知りました。光は1秒間に地球を7周半出来るのだと聞いて驚いたのをよく覚えています。

では地球の1周は何キロかご存知でしょうか? 地球はもちろん丸いのですが、完全な球形ではありません。ちょうどみかんのような形をしています。横方向(赤道)の長さは40075kmで、子午線=北極点と南極点を通る大円(方角を十二支で表すと子(ネズミ)は北の方角、午(うま)は南の方角を指すことからこの名前がつきました)の長さは40009 kmです。いずれにしても端数を無視すれば

地球の1周:約4万km

と言えます。実は地球1周の長さが4万kmと切りのよい数字になっているのは偶然ではありません。これについては後で詳しくお話します。

 

2300年前に地球の大きさを正確に測定した人物がいた!

地球1周の距離を人類で初めて計算したのは紀元前3世紀頃の古代ギリシャで活躍したエラトステネスでした。当時のギリシャではスタディオンという長さの単位が使われていました。

1スタディオンは、地平線に太陽が昇り始めた時に歩き出し、太陽が完全に地平線の上に表れるまでに進んだ距離を指します。1スタディオンをメートルに換算すると約180mです。

エラトステネスは、図書館で学ぶうちにエジプトのナイル川上流にあるシエネという町では夏至の日に太陽の光が井戸の底にまで届く(太陽が真上に来る=南中高度が90度になる)ことを知りました。

同じ夏至の日、エラトステネスがいたギリシャのアレクサンドリアでは太陽は真上方向より7.2度傾いた方向に見えます。

シエネからアレクサンドリアまでの距離を5000スタディア(スタディオンの複数形)と見積もったエラトステネスは、これらから地球1周の長さは25万スタディアであると結論しました。25万スタディアは約4万5千kmですから、今から2300年前の計算としては驚くべき精度だと言えるでしょう。

余談ですが、競技場のことを「スタジアム」というのは、古代オリンピックの競技の中心が長さ1スタディオン(約180m)のトラックを走る競争だったからだと言われています。

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4000年前より使われてきた「キュービット」 >

著者紹介

永野裕之(ながの・ひろゆき)

「永野数学塾」塾長

1974年、東京生まれ。暁星高等学校を経て東京大学理学部地球惑星物理学科卒。同大学院宇宙科学研究所(現JAXA)中退。レストラン経営、ウィーン国立音大への留学を経て、現在は個別指導塾・永野数学塾(大人の数学塾)の塾長を務める。これまでにNHK、日本経済新聞、プレジデント、プレジデントファミリー他、テレビ・ビジネス誌などから多数の取材を受け、週刊東洋経済では「数学に強い塾」として全国3校掲載の1つに選ばれた。プロの指揮者でもある(元東邦音楽大学講師)。著書に『東大教授の父が教えてくれた頭がよくなる勉強法』『数に強くなる本』(PHPエディターズ・グループ)、『大人のための数学勉強法』(ダイヤモンド社)など多数。

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