2018年05月30日 公開
2018年06月04日 更新
「数字に強い人が成功する」「ビジネスマンは数字力を磨くべき」などとよく言われるが、そもそも「数に強い」とはどういうことなのか。東大、JAXAを経て人気数学塾塾長を務める永野裕之氏は、数字の中にあるストーリーを見つけ出し、行動につなげることこそが「数に強い人」だと主張する。詳しくうかがった。
キヤノンの御手洗冨士夫会長の言葉を引用させてください。これはある雑誌のインタビューで語られた言葉です。
「目標を数字で表現すると、その数字の実現に何をどうすればいいのか、誰がどのような筋書きでどのような仕事をし、それにはどんな場面が必要なのか、方法論としての物語が浮かび上がってくる。……数字なき物語も、物語なき数字も意味はなく、実行も達成もできないでしょう。数字とその実現を約束する物語を示すことで、経営計画の信憑性を高め、市場や株主からの信頼性を確保する。数字力が言葉に信の力を与える」
ここには定量化することの意義が見事にまとめられています。数字は物語を伴って初めて意味を持つのです。そして定量化による「物語」はいつも、比較や変化を表す数字から始まります。
朝、猫がキャットフードを食べたという事実を「午前8時に体重4㎏の猫が50gのキャットフード食べた」と定量化できたとしても、これだけではほとんど何の意味もありません。
午前8時という時刻がいつもと同じなのかどうか、あるいは40gのキャットフードを何分ぐらいで食べきったのかという比較や変化がわかってはじめて、「いつもより1時間遅く朝ご飯をあげたところ、わずか1分で食べ切ってしまった…」というような物語が始まるのです。そしてそこから「とてもお腹を空かせていたのだろう」という仮説が立ち、「お腹を壊すといけないからご飯はできるだけ決まった時間にあげることにしよう」というアクションにも繋がります。
そうです。定量化の真の目的は仮説を組み立て、さらにアクションにまで繋げていくことなのです。比較や変化を示す数字が物語の幕開きなら、アクションこそが物語のエンディングです。
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更新:12月10日 00:05